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第101話 やっぱり普通じゃなかった

「お父さん、お母さん。私、ジュン様の下へ行きます」


「ああ、しっかりお仕えするんだぞ」


「いつでも帰って来ていいのよ」


二泊三日の旅行が終わり、城に帰る前。

シャクティさんとご両親が、そんなやり取りをしている。

メイドとして来てもらうのだが、なんだか嫁に行くようだ。

いや、彼らからすればその通りなのか…


ダルムダット一行とフレムリーラ一行は既に送ってあるので、シャクティさんが家族との挨拶を終えた後、城に戻る。


「はわわ!ここが魔王様の御城ですか!想像よりもずっと凄いです!」


そう言えばシャクティさんは島から出た事もない、箱入り娘ならぬ島入り娘だった。

とりあえず今日は城を案内して、王都の案内は明日にするか。


「じゃあ城を案内しますよ、シャクティさん。王都は明日案内しましょう」


「はい、お願いします。それからジュン様、私の事は呼び捨てでお願いします。丁寧な言葉も必要ありません」


「あ、うん。わかったよ、シャクティ。じゃ、行こう」


「はい」


「荷物は一旦、ボクの魔法の袋に入れておこう」


「魔法の袋、ですか?」


シャクティさんの前では使ってなかったかな?


「これだよ。これには空間魔法で袋の中を拡張してるんだ。だから見た目よりずっと沢山の物が入る。生物は入れる事は出来ないけどね」


「はわわ~。都会には凄い物があるんですねえ」


都会だからあるってわけでもないんだけどね。

まぁそこはいいか。


「じゃあ、案内しようか。まずはどこから案内するのがいいかな」


「城門からがいいんじゃない?わかりやすいでしょ」


「そうするか。あ、ノエラ、リリー。シャクティの部屋の用意を頼むよ」


「畏まりました、ジュン様」


「はいですぅ」


ユウとアイも連れて転移魔法で城門まで転移する。

普段は歩くんだけど、道中も説明が必要になるしね。


「ここが城門だ。あの人達は城門を守る兵士。あそこは城門を守る兵士の詰め所。挨拶しとこうか」


「はい」


詰め所の扉をノックしてから入る。


「失礼するよ」


「こ、これはジュン様!ユウ様にアイ様まで!何かございましたか!」


「いや。まずは御仕事御苦労様。今日は新人のメイドが入ったから案内してるんだ」


「シャクティです。よろしくお願いします」


「はあ。ジュン様が直々にメイドの案内、ですか?」


「あ~うん、まあね。ちょっと事情があってね。じゃ」


「失礼します」


「はい…」


やっぱり新人メイドの案内を魔王子がするのって変かな。

しかし、今更案内を変わるのも何だしな。


「じゃあ、次だ。城門を抜けて、この門から城に入るわけだけど、その前に左の建物を見て」


「はい」


「あれは騎士達の宿舎。その隣は魔法兵の宿舎。で、反対側の右の建物が親衛隊の宿舎だよ」


「宿舎もおっきいですね。どれくらいの人が住んでるんですか?」


「一つの宿舎に三千人以上は住んでる」


「千人ですか!凄いですね。私、そんな沢山の人が集まってるとこ見た事ないです」


そりゃあそうだろうな。あの島から出ずに育ったんだもの。


「ちなみに王都で暮らしてる兵士や騎士もいるから、この宿舎や城に住んでる者も全て集めると二万人を超えるよ」


「二万人ですか!どのくらい凄いのか想像もつきません!」


まあ、ボクも二万人の騎士や兵士が集まったとこなんて、見た事ないんだけどね。

緊急時に常時招集できる兵力がどれくらいあるか把握してるだけで。


「それだけの人の数の名前を覚えるの、大変そうですねえ」


「ハハハ、そうだね。ボクも無理だよ」


ていうか、二万人全ての兵の名前を覚える事が出来る人なんて、存在するのだろうか。

瞬間記憶能力を持ってる人ならできるだろうけど、普通の人にはできないんじゃないかな。


「じゃあ、城の中に入って、一階から案内しよう」


「はい」


「一階には練兵場や兵達の食堂、待機室、城で暮らす者の部屋もある」


「練兵場ですか。私も使っていいんでしょうか?」


「ん?まあ、ボクも訓練で使う事あるし、かまわないよ。シャクティは戦闘技術も学んでるの?」


「はい!主となるジュン様を御守りする時の為に技術は磨いてきました!」


「へ~、そうなんだ。じゃあ、ちょっとウチと手合わせしようよ」


「はい!いいですよ!」


「アイ、今じゃなくてもいいだろ?」


「大丈夫、ちょっとだけよ、ちょっとだけ。五分くらい」


何が大丈夫なのやら。

まあ、シャクティの実力はボクもちょっと興味がある。

今は丁度誰も練兵場にいないようだし、問題ないだろう。


練兵場の中央で向き合う二人。

手合わせにしては二人ともかなり真剣に見える。


「じゃあ、いくよ」


「はい、どうぞ」


まずはアイから仕掛けるようだ。

対するシャクティはアイと同じく素手。いや、皮手袋を着けている。

シャクティも体術がメインか。


「ふっ!」「ハッ!」「てい!」「フッ!」


なんと、体術でアイと渡り合ってる。

いや、アイが若干押してるが、アイを相手に体術であそこまで渡り合えれば大したモノだ。

それにシャクティは何か狙っているような気がする。


「捕らえた!」


なんと、シャクティは糸使いだったのか。

極細の糸でアイを捕らえようとする。

かなり細いが丈夫そうな糸だ。それに見えにくい。

これが並の相手だったら、初見ではまず躱せないだろう。

だがアイは並ではない。それに先見の紋章もある。


「躱された!?」


「そう簡単に捕まらないよ!」


必殺の糸を躱され懐に入られたシャクティはアイの攻撃を防げず、地面に倒される。

宣言通り五分以内で終わらせたな。


「参りました。流石、御強いですねアイ様」


「シャクティも中々だったよ。正直あの糸はかなり驚いたし」


ボクも驚いた。

ボクだったら初見では躱せなかったかもしれない。

少なくとも素手では厳しかっただろう。


「ところで二人とも」


「何?」「はい、何でしょうか」


「今、二人はスカートなの忘れてないかい?」


「「……」」


沈黙する二人。

あ、忘れてたなこれ。


「「きゃー!」」


今更叫んでも遅いがな。


「見た?」「見えましたか!?」


「バッチリ。アイは赤だったね」


「言わなくていい!ってまあ、ジュンなら別に見てもいいけどね。他に人もいないし、いっか」


まあ、アイはいいんだアイは。

問題は…


「シャクティ…その…何で?」


「う…その…昔から何となく苦手で…こっちの方が落ち着くといいますか…」


「大胆な子ね…」


「あ、ユウにも見えてた?」


「うん。そりゃあ、あんなに派手に動けばね」


「何?どしたの」


「アイには見えなかったのか?」


「シャクティの下着?うん、近かったし。接近戦でそんなとこ注視しないよ」


そうか。見えなかったか。


「ユウ、どうぞ」


「私が言うの!?う~、もう。アイ、シャクティはね、履いてないのよ」


「ん?」


「ノーパンだったのよ」


「えー…」


うん。反応に困るよね。

ボクもすっごい困ってる。


「ううううう~」


顔を真っ赤にして俯くシャクティ。

恥ずかしいならちゃんと下着着なさい。

この子はまともな子だと思ってたのに、危険な趣味…いや主義?を持ってるなあ。

ダメだろ、十二歳でそんなの。


それから真っ赤な顔のままのシャクティを連れて城の案内を続けたけど、ちゃんと聞けてたかな。

無理っぽいなあ。


翌日。

その予想は当たり、再び城内を案内する事になるのだった。

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