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第100話 思い出の品

「何だ、先に見ちまったのか」


「知ってたんですか?あの場所の事」


あの扉のある洞窟の事を聞く為、父アスラッドと今は二人きりで話している。

となると、あの場所の事は別に秘密ではないのか?

誰にも知られてはいけない場所なら、最初に言うだろうし、もっと見つかりにくくなってるはずだ。

元々の場所が見つかりにくい場所ではあったが。


「ああ。あの場所は初代魔王様とその時代の勇者が作った場所とされている。何故作ったのか、あの扉の先に何があるのかは伝わっていない。この館の使用人も、あのシードラゴンもあの場所を守るのが本当の使命だ。あの場所を知ったからって、ティナ達をどうこうするつもりは無いが、口外しないようによく言い含めておけよ」


「はい、わかりました。それで、あの場所について他に何か情報はないのですか?」


「ん~…無いな。あの場所は代々エルムバーン魔王家に伝わっているが、知っているのはそれだけだ。他には何も知らん。調べようも無いしな」


「調べようが無い?」


「あの場所については口伝のみだ。資料も何もない。更に言うなら扉を破壊するのも洞窟を壊すのも無理だ。何らかの力があの洞窟全体に作用してるみたいでな。正規の手段…つまり三つ紋章を全てあの場に揃えるしか、あの扉の向こうに何があるのか調べる術はない」


なるほど。

つまり現状ではあの場所に関して出来る事は何もない。

そしていつか、あの子と行く事になるのだろう。


「わかりました。それじゃ、海で獲って来た貝を一緒に食べます?」


「ああ。頂くか」


丁度食事の用意が出来た頃だろう。

食堂に行くとしよう。


「あ、来た来た」


「どうだった?お兄ちゃん」


「うん、後で話すよ」


食堂には昼食の用意が出来ていた。

昼食にはボク達が獲って来た貝類。

それから今日は朝から釣りをしていたらしいお祖父ちゃんやガウル様達が釣った魚。

南の海の魚ってカラフルなイメージがあったのだけど、カラフルな魚は並んでいない。

普通に美味しそうだ。


「あれ?ボクが獲って来た貝で一番沢山獲れたやつがない?」


「ああ、あの貝ですか」


給仕をしてたシャクティさんが、教えてくれる。


「あの貝は食用には向いて無くて…あまり美味しくないんです。食べれない事はないんですが」


「何てこったい…」


普通の貝に見えたし普通に食べれると思ったが、甘かった。

一番沢山獲れたのにな。


「まぁまぁ。ウチとユウで十分な量は確保してあるから」


「そうそう。一杯あるから大丈夫だよ、お兄ちゃん」


アイとユウの成果は中々で、サザエやアワビなんかもある。

現代地球の沖縄でもサザエやアワビが獲れたのかな。


魚介類を使った昼食は好評のようだ。

皆、美味しそうに食べている。


「午後からどうする?泳ぐか?」


「そうね~普通に泳ぐのも飽きてきたし、飛込みとか出来るとこないかな」


「ある?シャクティさん」


「飛込みが出来るところですか…ん~ないですねえ」


「じゃあ、空へ飛んでそこから落ちれば?飛行魔法で飛べるんだし」


「そだね。ちょっと味気ない気がするけど、それしかないかなあ」


「そうだ、ジュン様。前から聞きたかった事があるんだけどな」


「何?セバスト」


「ジュン様はどうして、飛行魔法で飛ぶんだ?ジュン様だけじゃなくてユウ様にアイ様もだけどよ」


「「「う」」」


「ジュン様とアイ様は堕天使、ユウ様はサキュバス。翼があるんだから魔法を使わなくても飛べるだろう?でもいっつも魔法で飛んでるよな?なんでだ?」


「そう言えばそうですね。兄さんの言う通り、いつも飛行魔法で飛んでおられます」


「確かにそうですぅ」


どうしよう。なんて言い訳しようか。

確かにボク達には翼がある。

どういう肉体構造してれば出せるのかわからない出し入れ自由な翼が。

でも、前世で普通の人間だったボク達。

感覚的には人間の体に翼がついたってだけに過ぎない。

でも人間の体に翼がついたからって空を飛べるだろうか?

鳥は教えてもらわなくても本能で空を飛べる。

虫だってそうだ。

でも、ボク達にはその本能が無かった。

練習してある程度は飛べるようになったが魔法で飛ぶほうがよっぽど速いのだ。


「魔法を自在に使う訓練の一つよ」


「出来るだけ魔法を使って鍛えないとね。それにもう魔法で飛ぶほうが速度が出るもの」


「まあ、そんなとこだね」


ナイスな言い訳だ!二人とも!


「なるほどな」


よかった。納得してくれたようだ。

三人とも自分の翼で飛べないとなると、怪しまれるかもしれない。

バレたら説明しても理解できないだろう事まで、説明しなきゃならなくなるだろうから。


「ジュン様とアイ様は堕天使族だったのですか。確かとても珍しい種族ですよね」


「え?ああ、そうらしいですね。シャクティさんは悪魔族で?」


ここは少し話を逸らしておこう。

 

「はい、私はサキュバスです」


「ほう、サキュバス、ですか」


ノエラの眼がキラリと光った気がする。

なんかボクの周りサキュバスの女性多いな。


「サキュバスの力の使い方はどなたかに習ったのですか?」


「はい、お祖母ちゃんから。お祖母ちゃんもサキュバスなんです」


お祖母ちゃんという事は、ホフマンさんの奥さんか。

館のメイドの一人が会釈してる。

あの人がシャクティさんのお祖母ちゃんなんだろう。


昼食も終わり。

食後の御茶を頂いていると、シャクティさんがボクが獲って来た貝を持ってくる。


「ジュン様、この貝はどうされます?」


「ん~、どうしようか…」


食べないならリリースすべきかな、やはり。


「コクチョウ貝か。ダルムダットの海にもいるが、美味くはないんだよな」


「コクチョウ貝?ですか」


「ああ。黒蝶貝だ。開いたら黒い蝶みたいに見えるから、そんな名前が付いたんだ」


それって、どこかで聞いたような。

確か日本ではクロチョウ貝って名前の貝で…

黒真珠の獲れる貝だったはず。


「もしかすると、もしかするかも…」


「何がだ?」


貝を開いて調べていく。

予想がはずれだったとしても、責任もって食べるとしよう。


「何してるの?お兄ちゃん」


「この貝、結局食べる気なの?美味しくないって話なのに」


「いや、予想が外れてたら、違うな、運が悪ければ、貝は食べるしかないけど…運がよければ…」


もしかしたら、今回のいい思い出の品になるかもしれない。

そしてボクは運がよかったらしい。

獲って来たコクチョウ貝の三分の一を調べた所でそれは出た。


「あ、あった。黒真珠だ」


「「「えー!」」」


この世界でコクチョウ貝と呼ばれている貝は日本ではクロチョウ貝と呼ばれいた物と同じで間違いないようだ。

天然の真珠は一万の貝から一個見つかればいいほうだとか、聞いた事がある。

今回は相当運が良かったのだろう。


「これ、本当に真珠!?」


「間違いないわ、鑑定の結果でも黒真珠って出てる」


「おいおいおい。この貝からも真珠が獲れるのかよ」


「知らなかったんですか?ガウル様」


「ああ。むしろなんでお前が知ってるんだよ」


うっ。

しまった。前世の知識とは言えないし、誤魔化すしかないか。


「貝から真珠が獲れる事は知ってましたから。もしかしたらと思っただけですよ」


「そうなのか?しかし、運がいいな、こんな大粒の真珠。おい、残りも調べてみようぜ」


誤魔化せたかな?

しかし、真珠についてはあまり知られていないのだろうか?

海に魔獣が出るせいで、天然の真珠が見つかる機会が少ないせいだと思うけど。


それから残りのコクチョウ貝を調べた結果。

二個目の真珠は見つからなかった。流石にそこまで簡単に見つかる物じゃないか。

でも、いい思い出の品ができたな。

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