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番外編3

只今目の前には大きな扉が。そして隣にはモーニング姿の父。そしてウェディングドレスを着た私。

そうです。結婚式です。


**********


あの日、私の両親へ結婚の承諾を貰ってからの彼の行動の早かったこと…。

式場の見学会、結納式、入籍、引っ越しと、あれよあれよと気付けば新居で隣にはお揃いの結婚指輪を嵌めた彼が笑っておりましたとさ。まとめるとこれだけなんだけど…結婚てものすごいバイタリティのいるものだと実感しました。

本当は入籍は結婚式と同じでいいかとも思ったんですけど、彼の「できるだけ早くしたい」というお願い(お願いにしては必死すぎた)があったので。

そして新居は義両親の「家族みんなで暮らしたいなー」という意見を総無視した「新婚だから」という彼の一言で同居はなしに。彼の実家と会社の中間あたりのマンションでの生活がスタートしました。

でも今となっては先に入籍しておいて良かったかもしれない…結婚式って本当に決めることが多くて、すぐに聞ける距離にいるのがこれほど有難いものだとは。


兎にも角にも本日めでたい日を無事迎えることができました。

昨日は家族水入らずで式場のホテルに泊まり、お約束の「今まで育ててくださって…」をしたところ父と兄が号泣したりだとか、義姉のお腹の赤ちゃん(六か月!)にも興奮が伝わったのか暴れて皆でおろおろしたりだとか、なんていうか…いい家族に恵まれたなあ、と。

私もこんな風に温かい家庭を彼と築いていけたらと思いました。



そして今、父と腕を組んで出番を待っているわけですが。隣の父は目が真っ赤ですが。

なんだか改めてこうしていると恥ずかしさもあり、そして圧倒的な淋しさを感じます。


「まどか、うちの娘でいてくれてありがとうな。これからは佑輔君と一緒に頑張りなさい。」


ううっ。泣いちゃいけない泣いちゃいけない。お父さん、今そんなこと言われたらお化粧全部落ちちゃうよ。


「そのドレスも似合ってるよ。…こうやってまどかの隣を歩けて幸せだ。」


うん、このドレス、彼の一押しだったんです。そしてお父さん。私も幸せですよ。



ゆっくりと扉が開き、真っ直ぐ前を向いて一歩踏み出す。真っ赤な道の向こうには、今日も固い顔の彼がいます。

うん、大丈夫。彼と出会えて良かった。好きになって好きになってくれて良かった。

そして、あの日彼がお弁当をくれて本当に良かった。


父の手から彼の手を取る瞬間、「頼むよ」と小さく呟く父の声が聞こえました。それに小さく彼が頷きます。

お父さん、彼なら大丈夫だよ。そんな想いをこめて私も微笑みます。


二人で頑張ろうね、佑輔くん。



**********


「-----------さん、相田さん!!」

「もう少し、頑張ってねー。」


いけない、少し意識が飛んでいたみたい。隣の彼が心配そうな顔で手をぎゅっと握ってきます。

まだ平気だよ、と笑って痛みに耐えます。もうほんと、早く出てきて!


「よし、子宮口だいぶ開いたから、いきんで!!」


助産師さんの声と痛みの波に合わせて息を吐きます。痛いー!!

「頑張れ。もう少しだ。」こんな時ばかりは夫が憎い!誰のせいでこんな思いしてると思ってんだ!!


「はい頭半分出たよ!あと少し!」

最後の気力を振り絞って息を吐けば、「出た!」という彼の声と小さな泣き声。やっと生まれたー!!陣痛辛かったー!


「おめでとうございます。女の子ですよ。」


まだところどころ赤い我が子との初対面。よしよし、よく生まれてきたねーとそっと触れてみる。

隣の夫も目を潤ませて「良かった。ありがとう。」と言ってくれました。


「ちょっときれいにしてきますからねー」と看護士さんに連れて行かれた娘を目で追っていると、彼がぐすぐすと泣いている模様。

「感動した?」と聞けば、「それもある。無事に生まれてきてくれて本当に良かった。でもあの子もいつか嫁に行くかと思うと…。」

ここにもいたよ、娘バカが。


ごめんね娘よ、おじさん達の影響で、あなたのパパは相当の過保護になりそうです。

まだもう少しお付き合いください<m(__)m>

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