番外編2
《お兄ちゃんの心情編》
妹が結婚する。兄として、立派に成長し良い伴侶を見つけたことには安堵している。相手は俺も一度会って話しただけだが、しっかりしているし妹を大事にしてくれるのが分かっているから認めてもいる。
きっと俺と妻のように仲睦まじい夫婦になることだろう。俺の妹だし。
だが、一つだけ許せないことがある。それは――――――――
両親が結婚を認めるのが早すぎる!!
妹たちを玄関で迎え、さぞ彼は緊張しているんだろうと顔を見てみれば、憎らしいほど以前と変わらぬ表情。…あれだな、きっと俺と会った時も彼女の身内に会ったから緊張してたんだな。だから前と同じなんだな、と苦しいながらも推測した。
その後リビングに通された二人と、初対面となる両親を、ダイニングテーブルに座って高みの見物といきたかったのだが…。
ちょっと父さん?!話を持っていくの早いから!そりゃ年頃の娘がスーツなんか着ちゃった彼氏連れてきたらそういう流れなのはわかるけど!!
まだこいつが来てたったの十分だぞ!しかも結婚の承諾もしちゃった?!
おいおいこの前「『娘はやらん!』とか言ってみたいなー」って言ってなかったっけ?何なの?こいつが予想以上に好青年っぽいから釣られたのか?!そりゃないよー。
がっくりと肩を落として自分の結婚までの道のり(崖あり落とし穴あり波乱万丈)を思い返していても、妻に「ちょっと一人でじめじめしないでよ。おめでたい席なんだから。」とか言われる始末。ああ、誰も俺に同情なんかしてくれないんだ。
~お兄ちゃんの回想(読み飛ばし可)~
あれは桜舞散る入学式の日だった。新しい環境に胸躍らせ、緊張しつつも教室に足を踏み入れた俺。出席番号一番の俺は、廊下側一番前の席に座り―――――――
隣の「あかしかおり」に一目惚れしたのだった。
それからは積極的に香織に話しかけ親切にし、五月の連休明けには可愛らしいカップルが誕生していたというわけだ。子供らしいファーストキス、お約束の「結婚しようね」という言質も取り、俺の将来は香織がいれば前途洋洋だと疑いもしなかったあの頃の俺。
甘い、甘すぎる。敵は彼女の身近なところに潜んでいたというのに。
たぶんここまで読んでくれた人ならもう分かるだろう…そう、彼女の父親だ。
初めて香織の家へ遊びに行った夏休みのある日。そこで俺は義父と対面を果たした。まだ俺も若かったからな、彼女の父親への対策が十分ではなかったのは仕方ない。
「おじさん、僕が大きくなったらかおりちゃんをおよめさんにください!」と、多少可愛らしくお願いしてみたんだ。なのに…義父ときたら。
「お前に…?無理言うな。うちの可愛い香織をそんじょそこらのくそ餓鬼になんぞやれるか!」と大激怒。そして、ここから俺と義父の二十年に及ぶバトルが始まった…。
ああ長かったな。愛する彼女との結婚をやっと認められたときは、恥ずかしくも大号泣してしまった(ちなみに義父も)。今ではまだ見ぬ愛娘・愛孫娘を肴に飲み交わす、良い関係を築いているが。
~お兄ちゃんの回想終わり~
というわけで納得がいかない。なぜ俺が二十数年かけてもぎ取った結婚の許しを、こいつはたったの十分で得ているのか。少なくとも一年、いや一ヶ月でもいい!彼女の父親に認めてもらえず、焦れ焦れする思いを味わえばいいんだ!
と、内心煮えくりかえる想いを抱えつつ、宴会に和やかに参加する俺。大人だからな。妹のめでたい話だしな。両親も喜んでるし。俺、空気読める子だから。
今決めた。もし娘が生まれたら、その子が連れてくる男には目一杯反対してやろうと。
とにかく何が言いたかったのかというと、妹には幸せになって欲しい、その一言だ。
結婚の挨拶をお兄ちゃん視点で。
緊張していた相田君も、人から見ればいつも通りな感じだったようです。
番外編ではもっと相田君を上げたり落としたりするつもりが…なかなか難しいです\(-o-)/
ちょこっと宣伝。
こっそりファンタジー連載はじめました(^_^)v




