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目が覚めたらお兄様になってしまった⁉ とある伯爵令嬢入れ替わり騒動記  作者: 武州青嵐(さくら青嵐)


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6話 幕間

♧♧♧♧


 目が開けられない。

 まぶたを動かすのに努力がいるとは思わなかった。


 ローゼリアンはいつもこんなにつらく、しんどい思いをしていたのだろうか。

 呼吸をするだけで体力を消耗するなんて。


 かたり、と。

 扉が開く音がした。


「いつもありがとう。ずっと眠っているのだけど……娘もきっと喜んでくれているわ」

「ローゼリアンとは友達でしたもの。これぐらいなんてことないですわ」


 誰が入室したのか確かめるすべはない。

 目が開かないのだから。

 ただ、会話のひとりは確実に母上だ。


「私は居間で待っているから。終わったら来てちょうだい」

「ありがとうございます。あとで伺いますわ」


 パタンと扉が閉まる。

 軽い足音。女か?


 空気が揺れた。

 天蓋からつるされた紗がめくられ、側近くに誰かが歩いてくる。


「しつこいわねぇ、あなた」

 吐息と、うんざりした声。


「そんなぶっさいくな姿になってまでまだ生きていたいの? 早く死ねばいいのに」


 女は。


 死ね死ね死ね死ね死ね死ね。

 ぶさいく、ぶさいく、ぶさいく、ぶさいく。


 枕元で執拗にそう繰り返した。


 やめろ、黙れよ。

 ぼくのローゼリアンになにを言うのか。


 そう言い返したいのに、それさえできない。


 ああ。

 不調の原因はこの女だ。


 何度もしつこく繰り返す「死ね」の言葉を聞きながら、意識は徐々に遠のいていった。


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