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おまけのつづきのつづき



「え、?」


エリーナの疑問にマリアとナナリーが便乗して私に詰め寄ったのです。


「確かに、学園では男女で受ける授業内容が違うから、関わるきっかけもほぼなかったわ」

「それにメアリーは私達と一緒に行動していたから隠れて逢引していた可能性もないわ」

「となると、学園を卒業してから?」

「でも、婚約発表は卒業してすぐだったわよ」

「もしかして政略?」

「公爵家の子息が男爵令嬢に?」

「私は政略はないと思うわ。だってジャニエルの話ではメアリーの危機を察して仕事を放り出したって聞いたもの」

「え、じゃあデルオ様は元からメアリーが好きだったって事よね?

でも接点がない相手を好きになるかしら?

確かにメアリーは儚げな見た目をしているけれど、意外とやる時はやる女で、か弱い女性を守りたいからとかいう意味がわからない幻想を抱いている男性には向かないわ」

「……あの、それ本人の目の前でいう言葉ではないわよ」


思わず三人の会話に口を挟むと「じゃあ、教えてくれる?」と目を輝かせてお願いされました。

私は思わず目を逸らしました。

すると私の表情から「これは確実に知っている顔ね!」と察したエリーナが更に詰め寄ります。


こんなときソファだから正面の二人からは逃れても、隣に座っているエリーナからは逃れられない事を悟ります。

しかもエリーナは貴族令嬢から平民になったためか、学生時代から遠慮というのもがなくなっている気がしました。

どうして私はエリーナの隣に座ってしまったのでしょう。

いえ、誰の隣でも同じだったかもしれませんが。


「そ、そんなこと聞いてどうするのよっ」

「勿論、今後メアリーになにかあったとき、誰に頼ればいいのかの参考にするのよ」

「今回私達が誤解したのは、デルオ様について知らなかったからだと思っているの。

デルオ様がメアリーのことを愛していて、そしてメアリーのことをちゃあんと考えてくれることを知っていたのなら、私達も対応を変えていたわ」

「そうそう。責める対象はデルオ様じゃなくてあの元公爵夫人だって気付けていたのなら、もっと早く貴方を助けられたかもしれないでしょ?」

「だから友人として、ちゃあんと知っておきたいと思ったの」

「そう!友人として!」


そう口でいいながらも目は三日月形をしている三人に私は絶対言わないアピールとして、両手で口を覆いました。


すると、流石私の友人。

こうなった私は絶対に口を割らないことを知っていて、「あーあ、教えて欲しかったなー」と私から離れて元の場所に戻ってくれました。


私はほっと安堵しました。

絶対に教えたくなかったわけではありません。

アルが気にしないのならば、伝えても構いませんでした。


ですが今は私だけが知っておきたいと思ったのも事実です。


婚約時代、騎士団へとアルに会いに行った私はアルに聞いたことがあります。

どうして、私に婚約を申し出たのか、と。


アルは汗を拭う動作をしながら、私から目を背けてこういいました。


『花壇に咲いている花に水を撒く令嬢は少なからずいる。

だけど、花壇に生えている雑草を、貴族の令嬢が自らの手を汚してまで抜くところは見たことが無かった。

“気持ちよく育ってほしいから”と友人にいっていた姿を見て、結婚するなら君がいいと、あの時思ったんだ』


なんでもないように装って、でも耳を真っ赤にさせながら話してくれた私だけのアルの姿を、今だけでいいので私だけの思い出に留めておきたくなったのです。


それにあの言葉があったから、私はアルに好かれているのだと、仕事の関係で私との時間が取れないことをアルが一番悔しく思っていると信じることが出来たのです。



まぁ…こんなことを考えて友人にも内緒にしていましたが、アルは私がいると表情が崩れやすいのか、夫婦として共に参加したパーティーの中、私だけのアルの姿が大勢の人に見られることとなったのはすぐ後のことでした。







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