おまけのつづき
◇
「それにしても広いわね…」
「ええ、私も初めて見た時びっくりしたわ。だって実家よりも大きいんですもん」
三人が客室の中を見渡しながら呟いた言葉に私も同意しました。
言葉通り、アルがまさか私の実家よりも大きな屋敷を建てるとは思っていなかった為、初めて見た時は本当に驚きました。
ですが、流石に半年以上過ごせば慣れてきますし、この広い屋敷を一人で掃除していた事を思い出すと誇らしくもなります。
『もう絶対させませんから!奥様がやるといっても旦那様に確認しますからね!』と口をそろえて使用人たちがいいますし、私としても今後する予定はありませんが。
部屋もこんなに多くて何に使うのかと最初思いましたが、使用人たちが住んでいますし、中には熱が出た兄妹や子の世話を…と心苦しくしながらも休暇を願う者もいた為、一部の空き部屋を託児所のように利用することにしました。
そして騎士団に所属しているアルが部下や同僚たちを招いたりするときもあるので、活用していない部屋は意外とありません。
ソファに座るとタイミングよくメイドによって、お茶が運ばれてきました。
先程渡しておいたばかりのエリーナからの土産の焼き菓子も、綺麗にお皿に盛りつけられています。
こういうところをみると、流石元公爵家の使用人として採用されただけあるわ、と手を合わせたくなるほど優秀です。
「このゼリーはもしかしてメアリーが作ったの?」
そして今日の為に私が作ったゼリーも、綺麗な器に乗せられてみんなの前にセッティングされていきました。
「ええ、味見をしたから大丈夫だと思うけど…」
「メアリーの手作りなら問題ないわよ。寧ろいくらでも食べられるわ」
「そうね、素人とは思えないくらい美味しいから」
お菓子作りはプロではありませんが、孤児院にも寄付しているため、それなりに自信があるのです。
元々平民だった私のお父様は、営んでいた商売で男爵の爵位を授かりました。
自然災害で被害を受けた町へと足を運び、復興に必要な物資や生活に必要な日常品を届け、安定させたことを評価されたのです。
そして今では商売だけではなく、流通に必要な環境や設備面にも着目し、改善していっているところです。
必要としている人に物を届けるために、をモットーとして行っていることではありますが、元が平民な事、そして商人だったことからあまりよく思われていないのも事実。
私はそんなお父様のイメージを少しでも良くするために、孤児院にささやかな寄付をしたりしてきました。
だからでしょう、お菓子作りはプロには負けますが、得意な方なのです。
「それにしてもこのゼリー、まるで海を見ているようだわ」
「ふふ。目で見ても楽しめるように頑張ってみたの」
「本当、海のような青をベースに、サンゴや貝、そしてお魚までいるわ。
いったいどうやって作ったの?」
「秘密よ。でも全部食べられるもので作ったから安心してね」
それからは皆の近況報告をお菓子を食べながら聞いたりと、とてもまったりとした時間を過ごしつつ、かと思えば私の話になって、手紙で伝えたことで怒られたり心配されたり、そんな時間を過ごしました。
そんな楽しい時間を過ごしていた時一つの疑問が場の雰囲気を変えました。
「そういえばデルオ様はいつメアリーのこと好きになったの?」




