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作戦を説明します

 イチカを無事に連れ帰り、荒らされていた家を綺麗に片付けた頃にはすっかり日が沈んでいた。


 まだ暗闇が怖いイチカのためにロウソクに火をつけて灯りを得ると、キリヤはようやく一息つく。


 刀を振るうのとは別の筋肉を使う家の掃除に、腰を摩って床に座った。

 煎餅のように平くなった座布団だが辛うじてその役割を果たしている。


 天井を見上げて息を吐いたキリヤの隣で、ずっと何もしないで寝転がっていたゼキアが笑った。


「やっと終わったのかよ。おっせぇな」


「そう言うならゼキアも手伝ってよ」


「俺、動くの嫌いなんだわ」


「戦う時は誰よりも暴れるくせによく言うね」


「掃除と戦いは別モンだろぉが」


「主婦にとって掃除は戦いだって西の大陸で聞いたけど」


「そーゆー事じゃねぇからな」


 淡い光に顔を照らしたゼキアはピクリと眉を動かした。

 隣室の扉をじっと見つめてぽつりと言う。


「イチカ。やっと寝たな」


 呼吸の気配が自然になったとか言ってから彼はよっこらしょと立ち上がった。

 イチカが1度寝たらなかなか起きないのを知っているので、一切も容赦なく立て付けの悪い扉をこじ開けた。


 雑な扱いに悲鳴を上げつつ口を開いた扉の向こう側には、驚いた顔のリーシェが立っていた。


「開けようとしたら扉が外れたので驚きました」


 翡翠の瞳を瞬かせて安心したように笑う。

 穏やかに笑うその姿は彼女を、普通の少女のように思わせた。


 イチカを誘拐した6人を一瞬で昏倒させた姿とは大違いで、そのギャップになぜだか心が暖かくなる。


「リーシェ様。どうぞ、こちらにお座り下さい」


 キリヤが自分の隣の座布団を進めるとリーシェが短くお礼を言って静かに座る。

 さっきまでゼキアが丸めて枕にしていたので形が不格好になっている。


 枕を取られたゼキアが舌打ちをしながら床に胡座をかいたのを確認すると、キリヤは話し始めた。


「イチカも無事に救助が出来ました。リーシェ様のおかげで、妹を助けることが出来ました。まずは感謝させてください。ありがとうございます」


 頭を下げれば少女は慌てたように両手を振る。


「いえ!今日のようなことを無くすために私は来たのです。本当に気にしないでください」


「俺の出番奪いやがって」


「え?」


「ゼキアの小言はお気になさらず。今晩は、大陸革命の大まかな手順を説明します」


 国を改革する。

 言うのは簡単でも実際にやるとなるとかなり難しい。


 まず始めに、中央に成り立ちから説明する。


「強さが正義のこの国の『中央』とは、大陸中の強者が集う場所のことです。強さと聡明さを兼ね備えた者は選抜試験で選抜され、政治に関わるようになります」


 簡単に言ってしまえば、南の大陸のトップは国で1番強く頭も良いということになる。

 ゼキアも強い部類に入るが、残念なことに頭が足りないので「中央」には招かれなかった。何よりゼキア自身も下町を離れることを望んでいなかった。


 最初の草原で会った黒髪の女性、レリヤは「中央」に与する者で、その中でもかなり政治の心臓部に関わっている。


 レリヤが最上部の者にリーシェのことを報告していれば、「中央」は既に気づいているだろう。


 神にも等しい伝説の存在が入国していることを。そして、国を根っこから変えるために動き出していることを。


 暗殺を目論むか、引き入れようと策を練るか。いずれにせよ今後何らかの行動を起こしてくるはずだ。


「よって、これからしばらくは襲撃の迎撃と革命の仲間集めが主な活動になります」


 今のところ革命計画を知っているのは発案者であるキリヤとゼキア、妹のイチカ、鍵となるリーシェ。そして、下町のどこかを放浪しているはずのある男だけだ。


 革命をするにはあまりに少ない戦力だ。

 革命決行はまだ先だが、リーシェの存在を知った人が名乗りを上げてくれる可能性も高い。


 完全に準備が整う前にリーシェを連れてきたのは、作戦に信憑性を持たせるためだ。


「リーシェ様には僕かゼキアのどちらかと行動を共にしていただきます。お力を誇示することをしててでも味方集めに尽力してください」


「焔や氷を見せるだけで良いのですか?」


「はい。何も無いところからそれらを生成できるのは、未知のダンジョンを除けば『技の力』の保有者であるリーシェ様だけですから」


 絶大な力を見せれば、伝説の存在が実際に革命に参加していることも知ってもらえるだろう。希望がゼロでは無いことを知り、多くの人が武装蜂起してくれるはずだ。


「特に仲間に加えておきたい人たちは紙に書いているので、当分の目標は彼らを探し、見つけ次第引き入れることです」


 予め作っていたリストをリーシェに渡す。


 真向かいでゼキアが眠そうに欠伸をしたのを見て、説明に少し時間がかかったことを悟った。

 慣れない環境で疲れたのであろう少女も、どこか眠そうだ。


 今夜はここでお開きにしようとキリヤは口を開いた。


「リーシェ様の布団はイチカの部屋に用意してありますので、今夜はゆっくり休んで下さい。明日はゼキアと行動を一緒にするようにお願いします」


「ありがとうございます。実は少し眠かったので、早めに休ませてもらいますね」


 いつもと変わらない笑顔を浮かべてから少女は、妹が眠っている部屋へ消えていった。

 イチカはリーシェに懐いてくれたので、朝起きて泣き出すということもないだろう。


「ゼキアは寝ないの?」


 眠そうな親友に問いかける。

 彼は質問には答えず、若干拗ねたように呟いた。


「アイツ、俺の出番奪いやがった」


「どんだけ根に持つんだよ!」


 暴れる場面を一瞬で奪われたゼキアに思わず突っ込んでしまったキリヤだった。



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