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9階層のボスとご対面だ

 9階層。

 そこには入り組んだ道もなく、凶暴なモンスターの群れもいなかった。


 これまでの階層から、壁をなくしたかのような空間があるのみだ。

 ずっと先に10階層へ続く階段があり、キリヤを先頭にアズリカたちは辺りを警戒しながら進んだ。


 しかしやはり化け物の影はなく、不気味なほどの静寂が階層を包んでいる。


「何もありませんね」


 キリヤの声がよく響いた。アズリカは相槌を打ちながら、こっそりリーシェの様子を確認した。


 いつもとどこか様子が違う少女は無表情でアズリカの斜め後ろを歩いていた。

 アズリカの視線に気づくとニコッと微笑んだが、やはりどこか取り繕っている感じが否めなかった。


 だが、6階層からそのことについて言及してきたが、キョトンとした顔で首を傾げられるだけだった。


 赤髪の少女から何があったのか聞くことを諦め、同じように怪訝な顔をしているラピスと目配せをする。


 リーシェにどんな変化があったかについては一旦保留とすることにした。


 内心、重い溜息を吐いているとキリヤが鋭く息を飲んだ。


「後ろに避けてください!」


 状況を頭が理解するより早く体が声に従って飛び退く。

 同時に後退したキリヤが一瞬前までいた場所に、巨大なモンスターが落下してきた。


 激しい土埃が舞い腕で顔を覆うと、雄叫びが空気を震わせた。


『ギャォォォォォォ!!』


 土色に染った視界の中央に落下してきたモンスターの姿た暴き出される。


 真紅の体。体躯を覆う硬質な鱗。アギトから覗く鋭利な牙と地面に食い込む凶悪な爪。

 そして、背中に生えた巨大な翼と、全身から溢れ出る煉獄の輝き。


「嘘だろ……。まだゴブリン、ハウンド、オークしか出てないのに、なんでお前が出てくるんだよ」


 離れたところでラピスが戦く。

 青ざめた顔に視線を投げてモンスターの名前を無言で問うと、少年はまるで仇の名前を呼ぶように言った。


「ドラゴン……。火に包まれてるのを見ると、火竜だな。ファイアドラゴンだ」


 力も速さも見ただけでこれまでの化け物たちより桁違いだと分かる。


 ゴブリンの場合は同士討ちを狙えたし、知能も低く、攻撃もまだ可愛いものだった。

 ハウンドは攻撃が爪か牙のどちらかだったので、しっかり警戒していれば何とか対処出来た。

 オークは腹は硬かったが、頭という弱点があったため、慣れてしまえは苦労せず倒すことが出来た。


(だったら、コイツはどうやって攻略する?)


 尾から顔まで覆う固い鱗。きっと剣は通らないし、鎖だって弾かれる。

 巨大な牙も爪も、受身を上手くとって受け流せるものでもない。

 背後に回ろうにも広い範囲を動く尻尾に薙払われるだろう。


 どうする、という言葉ばかりが頭を回り、ろくな案が出てこない。


 そうしているうちに、ドラゴンは再び雄叫びを上げると上空へ体を浮かせた。


 巨体が飛び回っても問題ないくらい、階層に障害物はなく広大だ。

 頭上をぐるぐると旋回していた火竜は、アギトを大きく開くと火球を生成した。


 真珠色の牙がオレンジ色に染まり、野性味溢れる眼光がアズリカに標的を定める。


「あ……」


 この状況では全く意味の無い呆けた声が、無意識のうちにこぼれる。

 火球が発射されたのは一瞬だった。


 セルタで見上げた美しい太陽が降ってくるような錯覚を覚え、次に圧倒的な熱の塊が陽炎を発生させる。


 熱気に包まれた風が吹き荒れ、アズリカは思わず目を背けてしまった。

 皮膚が焼けていく。ヒリヒリとした痛みがアズリカを責め苛んでいく。


(俺は……ここで脱落なのか)


 対処の仕様がない状況に漠然とそう思った時、うっすらと開けた瞼の先に少女の背中があるのが見えた。


 青年を背に庇うように、得体の知れない違和感だらけのリーシェが爆炎に向かって毅然と向かいあっていた。


「らしくないですね。諦めるのは、イグラスで終わりにしたんじゃありませんでしたか?」


「リーシェ……」


 ゆっくりと右手を炎へ伸ばす彼女の名前を呼ぶと、僅かに振り向いたリーシェはよく聞き取れない声でボソリと言った。


「まぁ私的にはどうでもいいんですけど、『心』が妙に騒いでうるさいので」


 唇を尖らせて何かを言っていたが内容を確認するより先に、少女は突き上げた右手を強く握った。


 するとこちらへ迫っていた火球が鈍い動きで元きた場所へ戻っていく。

 爆発音とともにドラゴンが放った炎はドラゴンの口の中で四散した。


 かなりのダメージを負ったはずだが、火竜はフラフラとしながらも飛翔を続けていた。

 相変わらず巨躯から溢れる火の粉が、竜の生命力の高さを物語っている。


 獰猛な唸り声を発するファイアドラゴンに伸ばしたままだった右手を、リーシェは勢いよく開いた。


 たったそれだけだった。握っていた手を開く、というそれだけの行為だった。


 しかし、それをきっかけとしてファイアドラゴンの体が爆散した。

 体内の炎が一斉に暴発したように、跡形もなく散っていった。


「フフ。汚い花火ですね」


 まさかのドラゴンの末路と、リーシェのセリフに対する3人の反応は様々だ。


 絶句し唖然としたアズリカ。

 気がかりそうに眉をひそめたキリヤ。

 何かに既視感(デジャブ)を感じたのか口を引き結ぶラピス。


 小さな違和感を確実なものにして、9階層の戦いは幕を閉じた。

 次はいよいよ、伝説の秘密を知っているというスティが待つ10階層である。


 そこでリーシェも変貌ぶりに手がかりが掴めればいい願いながら、下の階層への階段を目指した。



ベ○ータさん、セリフお借りしました(_ _*)

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― 新着の感想 ―
[一言] アイェェベ⚫ータ様!? (´ρ`*)コホンコホン ファンタジーの定番、ドラゴン!しかも王道ファイアードラゴン! 強キャラ感満載の登場なのに、汚い花火になってしまうとは… 火竜『解せぬ!』
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