ルナ·シュヴァリエと対面です
雪が溶けて穏やかだった日々はあっという間に過ぎ去った。
多くの楽しい思い出を作ったリーシェの家の前は、秋冬の間とは一変して物々しい騎士団が集まっている。
白い制服に、2つの三日月の刺繍がされた黒いマント。マントの刺繍と同じ装飾が施された青い柄の長剣を腰に帯びた騎士団こそ、『ルナ·シュヴァリエ』だ。
ラピスがリーシェを助けるためだけに結成し、少年がセルタに住み込む直前まで調整していた騎士団だ。
「ルナ·シュヴァリエ」のメンバーには、春の終わりに調査隊として町にやってきた人たちもいた。その中には数日前までラピスに仕事を押し付けられていたルブリスの姿もあった。
ラピスが集めた部下の人達がたくさん手伝ってくれたそうで顔色はそこまで悪くないし、もちろん髪も豊富に生えていた。
騎士団の人数はおよそ30人。
多い訳では無いものの、彼らが装備する鎧や剣には、「知の力」の持続効果を延長させる特殊な鉄鉱石が使われている。
一時的にだが、個々が1小隊分の強さを手に入れることが出来るので十分な数だろう。
家の中で何やらゴソゴソしていたラピスはリーシェより少し遅れて外に出てきた。
ずっと楽な格好の少年を見ていたので、騎士団と同じ正式な騎士装備を来ている姿に違和感を感じた。しかし同時に、王子であるラピスの本当の姿にしっくりともする。
不思議な感覚を抱いていると、リーシェの前で整列していた騎士団が一斉に騎士の礼をとった。
右手を左側の鎖骨に置き、左手は拳を握って地につける。
一糸乱れぬ動きで膝を着いて頭を下げた彼らをラピスは王族の雰囲気を纏って見下ろしていた。
そこにはアズリカに悪戯をされて騒いでいる少年の姿はなかった。
「遠いところをよく集まってくれた。すでに知らせた通りだが、我々はこれから『禁足地·魔境谷』、その最奥部にある神殿へ向かう。“ある"ということが分かっているだけで、その全貌は全くの未知だ。それを承知でお前たちに聞こう!」
黒っぽい刀身を抜いたラピスは勢いよく切っ先を地面に突き立てた。
14歳の少年ではなく、上に立つ者としての威厳を見せたラピスは雄々しく問いただす。
「未練はあるか!!」
「「「はい!!」」」
「命が惜しいか!!」
「「「はい!!」」」
「なら絶対に生き残れ!死ぬことを良しとするな!」
「「「はい!!」」」
「どんな理不尽が降り注ごうと!どんな絶望が飲み込もうと!必ず生に足掻き、未来に手を伸ばすと、ここで誓え!!」
「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」
士気が一気に上がる。
ラピスは真顔でその様子を見つめていた。
リーシェの隣でアズリカが感嘆の息を吐いた。
「曲がりなりにも王族だな。さすがのカリスマ性だ」
青年がラピスを認めるとは珍しいこともあるものだとリーシェは思った。
だが、認めざるを得ないというのが正直なところだ。
たったこれだけの言葉で30人全員の心を掴み、士気を大きく跳ね上げさせた。
誰にでもできることではないだろう。
闘志を漲らせる騎士団から視線を外し、ラピスリーシェに振り向いた。
ずっと足元に置いていた物を持ち上げると、それをリーシェに差し出す。
「リーシェ。これを着てくれないか?」
そこそこ大きな袋から出てきたのは、騎士団が纏っている装備を一回り小さくさせただけの同じ鎧だった。
「これは?」
「以前、魔境谷に行った時にある石碑を見つけた」
質問の内容から少しズレた言葉を静かに聞く。
「そこには、おそらく神殿についてだと思われる記述がされていた」
着いてくる予定のアズリカにも聞こえるようにラピスは告げる。
「神殿とは、神の住居に見せかけただけの『化け物の巣穴』だと」
「化け物の……巣穴?」
「あぁ。俺はそれを『ダンジョン』と呼ぶ」
聞きなれない単語。しかし不思議と胸を高鳴らせ、同時に恐怖を感じさせる言葉に、リーシェは表情を引きしめた。
ようやく、小説のタグにもある『ダンジョン』へたどり着きました!
頑張って書きます!





