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ハーバリウムを作りましょう!

 何やかんやあって、結局ラピスはリーシェの家に住むことを決めてしまった。


 乗ってきた梟を伝書鳩のように使って、セルタに滞在する旨を書いた文書を王都に送ってた少年は、何故かほくほく顔で客間に戻ってくる。


「もう!何やってるんですか!?ラピス様、王子さまなのに政務投げ出すようなことして良いんですか!?」


「リーシェ」


 早速ソファにもたれ掛かるラピスは、グータラした体勢のまま表情をキリッと引き締めた。

 まるでとても重要な会議に出向く前のような顔つきに、不覚にも真面目に聞こうとしてしまった。


「な、なんですか?」


「働くってな、大変なんだよ」


「知ってますけど!?」


「ドロドロな人間関係。薄皮一松捲ったところにある醜悪な欲。陰謀渦巻く会議。俺はこの年齢で頭皮が心配になった……」


「頭皮より健康を気にしてください!」


「なぁリーシェ。確認してくれないか?禿げてないか。流石に14歳で髪を失いたくないから」


 リーシェが渋々確認しようとするより先に一歩踏み出したのはアズリカだ。

 白い革のソファの上にあるラピスの頭を覗き込んで、至極真剣な顔でボソリと言った。


「残念ながら手遅れだ。円形脱毛している。頭皮を気にするのも今更だから、さっさと王都に帰ったらどうだ?」


 その言葉にリーシェはもちろんラピスもギョッと目を剥いた。

 特にラピスの驚き様は凄かった。


 ダラダラしていた姿勢から素早く起き上がると、先程少年の顔を写した鏡で毛根を確認しようとするが上手く見えずまごついていた。


「おい!それは本当か!?」


「アズリカ?本当ですか!?」


 リーシェも一緒になって慌てて少年の髪の毛をチェックする。

 どこを触ってもフサフサなのに、本当に剥げているのだろうか?


 なぜか少女も少年の頭皮の危機に青ざめていると、アズリカはあっけからんと言った。


「ま、嘘だけどな。憎たらしいくらいフッサフサしやがって」


「「……」」


 なんだか口が悪い。

 ラピスを帰す口実がなくて不機嫌なようだ。


 青年が悪戯っぽく笑いながら客間を退室していく。

 その背中にリーシェの安堵のため息と重なって、ラピスの怒声がぶつけられた。


「タチの悪い冗談はやめろ〜!待て、逃げるな!!」


 セルタで初めての冬は賑やかになりそうだと、リーシェはこっそり笑うのだった。


 ☆*☆*☆*


 ラピスの頭皮事件の翌日。

 リーシェはラピスとアズリカをリビングに集めた。


 その両手には先日、少女の自室の机に置かれていた小さな花や小瓶が抱えられていた。


「リーシェ。それはなんだ?」


 見たことのないものにアズリカが首を曲げる。

 ラピスは少し考えて悟ったようで、今からワクワクと肩を揺らしていた。こういうところは妙に子供っぽいのは少年の愛嬌だろう。


「これからハーバリウムを作るんです!」


「ハーバリウム?」


「こういうドライフラワーや造花、ビーズを小瓶の中に自由に入れて、最後にこの特殊な油で中を固定して部屋に飾るんですよ!」


 油にもいろいろな色があって、青っぽいものや黄色っぽいもの、赤っぽいものまで、様々な色が用意されていた。

 材料もボルの店で大量に仕入れてきているので困ることは無いだろう。


「ラピス様は作ったことはありますか?」


 勝手知ったる風な少年に質問すると、作ったことは無いが見たことはあると言った。

 以前、城を抜け出した際に都民の家の窓際に飾ってあるのを見たそうだ。


「ではみんな作るのは初めてですね。テーブルの上に材料を置くので、自由に使ってハーバリウムを作りましょう」


 そこからは集中して作業するので、当然みんな無言になった。

 心地よい静寂の中で時折、ビーズを瓶に入れる音や、なかなか上手くいかなくて鳴る舌打ちの音が響く。ちなみに舌打ちはアズリカのものがほとんどだ。


 リーシェが手に取ったのは紫陽花のドライフラワーだ。手先が器用なボル特製のドライフラワーなので、とても綺麗な形を保たれている。


 色は紫もあったがリーシェが想像する完成品には合わない気がしたので、花弁の中心部分が黄緑で外側は白色のものを使用した。


 壊れないように丁寧に小瓶に入れていき、油を入れた時に浮かないように茎どうしを綺麗に絡めていく。


 そこに1粒1粒が非常に細かいまるで砂のようなビーズを底面に敷いていき、ビーズが浮かないように上に貝殻や白亜の大粒ビーズを入れていく。


 緑色のモールを1本湾曲させて設置し、そこに慎重に真っ青な油を流し込んでいった。


 出来上がったのは、美しい花が揺れる海底だ。

 瓶の外側から差し込む光が湾曲して、海中に差し込む日光のようになっている。油は透明で、気まぐれに出来た気泡が、海の泡そのもののようだった。


 貝殻の近くに転がした白亜の大粒ビーズは真珠のように煌めきを放ち、砂のように細かいビーズはキラキラと輝く海底だ。


 緑のモールは海藻をイメージして入れた。


 思いのほか上手くできた処女作品に、リーシェは1人で自慢気に鼻を高くしていた。


「できたぞ」


「俺もだ」


 アズリカとラピスもどうやら出来上がったらしい。


 目を向けた先にあった2つの作品に、リーシェは思わず言葉を失ってしまった。

ラピスとアズリカのハーバリウムは次回で紹介させてください!

リーシェの作品については後日絵にしたいと思ってますが、しないかもしれません。

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