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スティおばさんは一体何者ですか?

「もういいのか?」


 心配になったのか、村の中央部まで来ていたアズリカが、おばさんの家から戻ったリーシェに声をかけた。


 リーシェは何も答えないで青年とすれ違う。

 アズリカは何かを言うわけでもなく静かに後ろを歩いた。


 先程のスティの顔が妙に頭に焼き付いて、何かが引っかかる。

 まるで、何か嫌なことを企んでいるような……。


「リーシェさん?」


 考え込んでいると横から声をかけられた。しばらく気づかずにアズリカに肩を叩かれてようやく我に返る。


「はい!?」


 素っ頓狂な声を上げて横を見ると、うっすら見覚えのある女性がいた。

 後ろめたさそうに及び腰で、小皺のある顔を泣きそうなほど歪めている。


 アズリカがリーシェを庇うように腕で隠しながら、女性に声をかけた。


「何か用か?」


「……スティのことで、は……話があるの」


「おばさんのこと?」


 アズリカの背中から身を乗り出すと女性はリーシェたちを自分の家の中へ招いた。

 おばさんの家と比べると遥かに綺麗で、1から建て直したのか優しい木の香りが鼻腔をくすぐった。


「どうぞ」


 少しだけ様子が落ち着いた女性にお茶を出されて、椅子に座ってからありがたく頂く。

 しばらくしてから女性は声を潜めて話し始めた。


「スティはね、ある日突然ビーグリッドに来たの」


「突然……?」


 アズリカが反芻すると頷きながら女性は続ける。


「いつから居たのか。いつまでいるのか。誰も知らない。だけど突然、2キロ離れたところに住んでいた」


「私を連れて……?」


「ええ。小さなあなたを連れてね。獣道で拾ったと言っていたけれど、そのくせに幼いあなたを酷く扱っていた。まるで、事故に見せかけて殺そうとしているように」


 その言葉にリーシェもアズリカも息を飲む。


「正直、あなたが逃げてくれてみんな安心した。小さなあなたが毎日頑張っていたことも、日に日に新しい傷が増えていることも知っていたけど、私たちはどうすることも出来なかった。だから、村を代表して謝らせて。助けてあげられなくて、ごめんなさい」


 深く頭を下げられた。

 やめてくれと止めるリーシェを青年が止める。


 リーシェは彼女からの謝罪を求めている訳では無い。

 リーシェを虐げていたのはスティでこの人は何も関係ない。

 それなのに、なぜおばさんよりも深く謝るのだ。


 非難を込めた眼差しでアズリカを見ると、彼はじっと女性を見つめるだけで何も言ってくれなかった。


 彼女は今、リーシェを助けることが出来なかった罪悪感に押し潰されようとしている。その贖罪の場を奪うなと、青年はそう伝えたいのだろう。


 10数秒後にやっと顔を上げた女性は心なしかスッキリとした顔をしていた。


「ごめんなさい。私に謝られても困るだけよね。でも、受け入れてくれてありがとう」


 湯呑みを持つ手に力を込めながら女性は笑顔を浮かべる。


「生きていてくれて、ありがとう」


 スティと話してもモヤモヤとしていた心が、この瞬間ようやく洗われた気がした。


 だが、スティは一体何者なのか。

 その疑問は強く残った。


おばさんは何者で、何を企んでいるのか。

それが次のトラブルへ繋がっていきます

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