表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/207

第四十八話 作戦開始です!

「ふざけるな」


 青年はそれだけ言うと、止める間もなく部屋を出ていってしまった。

 一人取り残されたリーシェは椅子の背にダラりと寄りかかり脱力する。


 交渉は決裂してしまった。

 リーシェは、力が最小限に抑えられた状態で攻撃系の魔法を使う兵士及び序列一族たちと交戦しなければならない。

 魔境谷であれだけ追い詰められたのだ。勝算は限りなく低かった。


 目的のゲートは、王城と向かい合うように都市の外れにある。「ゲートの間」と名付けられているその場所に行くには、王城から居住区·序列一族居住区·配給備蓄区を抜けなければならない。


 都市を縦断する中央通りを行く手段もあるが、格好の的になるだけだ。中央通り以外の大きな道は無いので、3つの区画の路地裏を上手く活用するのが最適解だ。


 王城は王家代々のみ知る秘密の抜け道があるので脱出自体は簡単だろう。問題はゲートに行くには序列一族が住まう区域を通らなければならないことだ。


「ゲートの間」に一切の騒ぎなく辿り着けるはずもなく、彼らとは必ず対峙することになる。

 戦争の時とは違い、今回は序列一族全員が対抗するに違いない。


 だからこそ、拘束を解くことが大切だった。

 しかしその交渉はつい先程、失敗に終わってしまった。


 唯一の協力者であるレイラが手伝えることも多い訳では無い。

 ゲートの解放、兵士の足止めくらいだろう。


 戦力は絶望的。成功する確率も低い。

 しかし、決行日は最も警備が手薄になるのだ。


 やるしかなかった。


 青年の説得は諦めよう。幸いにもアズリカは拘束を強めることはしなかった。

 リーシェは一週間後の決行に向けて、力が最小限でも強い能力が使えるように特訓を始めた。


 ☆*☆*☆*


 息を潜める。気配を断ち、一切の足音を立てず目的の場所へ急ぐ。

 やがて到着した約束の場所に女王の姿を見つけて、少女は思わず笑みを浮かべた。 一週間前に見た時と全く変わらない穏やかな表情を見て、緊張していた心が解れていく。


 レイラが背景にしていた壁を向くと、装飾の一部を指で押し込んだ。

 場所が決まっているようだが、彼女は迷うことなく弄っていく。

 やがて鈍い音と共に、壁が動いた。


 石臼を引きずるような音が鳴り止むと、狭い通路が出現している。

 これが秘密の抜け道だろう。


「この道を真っ直ぐ進めば、一般魔人の居住区に出るわ」


「本当にありがとうございます。このご恩は決して忘れません。女王陛下……いえ。おばあ様、どうかお元気で」


「そう呼んでくれるのね、ありがとう。急ぎなさい。場内の兵士は全て押さえ込んでいてあげるから」


 つまり、街で騒ぎが起きても、城に配備されている優秀な兵士たちは駆けつけることが出来ない。

 それだけで十分心が軽くなった。


「さぁ、お行き。どうか強く立派に生きるのよ。ディアナにもよろしくね」


 母が亡くなったことをなぜかレイラは既に知っていた。魔人は一族のお互いの生死をすぐに感じることができるらしい。


 優しい祖母の手に背中を押されて少女は走り出す。

 邪魔なドレスの裾を破り捨てて、全力で足を動かした。


 暗く湿った道を炎で照らして走り続けると、あっという間に居住区へ出た。第一難関である城からの脱出はクリアだ。


 居住区の路地裏を走り抜け、ほんの少し整えられた無名の道へ出た。

 そして男性と目が合う。


「その服、雰囲気、その髪色。……まさかっ!」


 運悪く、男性は兵士だった。

「リーシェ姫殿下!!」と叫ぼうとした彼の口に氷を詰め込んで逃げ出す。


 だが、居住区の近くに兵士宿舎があるせいか次々と兵士に出くわした。

 何とか騒ぎにならないように対応していたが、ついに緊急事態を示す笛の音が鳴る。

 ピーーーーーーッ!と甲高く鳴った音に反応して、真面目な兵士たちは直ぐに集まってきた。


 そして……。


 道の角からあの男が姿を現す。


「グレイス……叔父様」


 二ヶ月ぶりに相対した赤髪の男性の早すぎる登場にリーシェは歯を食いしばる。

「ゲートの間」まで、まだ十何キロもある。


 序列一族たちとの戦いは出来ればゲート前で、と思っていたのにその願いは打ち砕かれた。


 初めて会った時と同じように、グレイスが剣を抜く。


 計画が早々狂いかけていることを自覚しながら、少女は汗を一筋垂らした。

ベリアの地図、今夜Twitterにあげる予定です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ