第三十七話 幕間の物語〜魔人の創世神話〜
今回は魔人の国に突入するにあたり、彼らがどのような歴史を刻んできたのか、その基礎をみなさまにお伝えしていきたいと思います
人間が住まう西の大陸。その最北端にあるゲートから移動できる北の大陸。
そこは魔法を操る種族、魔人の生活圏だ。
戦闘系の魔法から、生活系の魔法まで。彼らは一族ごとにそれぞれの能力を持っている。
少年の「知の力」による発明によって異世界のような発展を遂げた王都ラズリと違い、北の大陸は独自の文明を築き上げていた。
その最大の特徴は、街や都を地下で繁栄させていることだ。
北の大陸は四大陸の中で最も太陽の恩恵を受けづらい。太陽は東から西に移動するため、一日の日照時間が極端に短いのだ。
全種族共通の神話では、世界の唯一絶対神が各種族に各大陸を与えた目的が伝えられている。
『発展』の種族能力を保有する人間は、明けの明星から革新的な発明を。
『魔法』の種族能力を保有する魔人は、日の届かぬ大地から無限の可能性を。
『武闘』の種族能力を保有する戦人は、風そよぐ草海から生命の強靭さを。
『進化』の種族能力を保有する獣人は、逢魔ヶ刻から久遠の幻想を。
これらの言葉を、それぞれの種族の始祖たちは神から直接聞き届けた。
魔人初代王族は大地に種を植え草木を育てることを諦め、その偉大なる力を使って地下に国家を形成した。
後に『中心都市 べリア』と名付けられるその場所で、原初の魔人たちは他の種族値は根本的に違う生活を始める。
人間はもちろん、戦人も獣人も、太陽の恩恵を当然のように受けることができ、日光を中心とした生活体系を築いた。
だが、北の大陸の大地に花は芽吹かず、土の質自体も植物の育成には向いていなかった。
ゆえに魔人たちが作り出した文明は、特殊な力を持つ鉱物を掘り出し、加工し、生活の様々な場所に埋め込むことでその石の恩恵を受けるというものだった。
その鉱物の名前は「蒼穹石」。
唯一北の大陸での大量に掘り出される蒼穹石は、埋める場所によって違う効果を発揮し適切な利益を与えるものだった。まさに、蒼穹の無限の可能性を秘めた石と言って良いものだ。
太陽の恩恵を得ることが出来ない大地に神がもたらした産物だと言われ、掘っても掘ってもその石は尽きることがない。
ランプの中に入れれば、青い石から暖色系の暖かい明かりを発光させ、家の壁に埋め込めば石の効果が続く限りその家は安泰を得ることが出来る。
生きることで必要となる食べ物は配給制となっていて、初期から続いているとある一族が保有する「グルメ魔法」によって飲食物は作られていた。
蒼穹石の効果の持続時間は1年。これが切れた状態で使い続けると怠惰なものだと認識され、それまでの恩恵を全て無に帰すような不幸が訪れる。
お金、というものがない魔人たちの生活は蒼穹石によって支えられ、その特殊さから時々彼らの国に訪れる別大陸の者の中にはこう評価する者もいる。
「質素かつ原始的で哀れな種族」「石に頼ることしか出来ない軟弱な者の集まり」「太陽に見放された枯れた大地」と。
だが、魔人たちは決して自分たちの生活を卑下するようなことは無い。
例え石に頼ることしか出来なくても、草木が芽吹かない大地の下でひっそり生きようと、魔人たちは幸せだと感じている。
愛する人を照らす灯りの何と優しいことか。
民を守る序列一族たちの何と頼もしいことか。
ここは安寧の大地だ。
ここは平穏な場所だ。
誰がなんと言い、どう嗤おうと、幸せならそれでいいのだ。
どうかこの閉ざされた平穏がいつまでも続くようにと、それだけを魔人は乞い、願い、祈り、望むのだ。
次回からリーシェのお話に戻っていきます。応援よろしくお願いします!





