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第三十話 私は人殺しなのかもしれません

  リーシェが力を三つとも自覚できるようになったことで、胸の発作は完全に収まった。

  ひとまず、安心だろう。

 

  胸の発作を抑えるためだけに王都に来たはずが、母の身分やら自分の前世やら、ついでにラピスの前世やら色々知った気がする。

  少なくともラズリに来る前と比べたら、だいぶ知識は増えただろう。


  エグゼの心臓に埋め込まれていた謎の蟲は、ラピスの解析によってある程度正体が掴めていた。


  少年によると、エグゼより序列が上の魔人の一族が機密事項の流出を防ぐために、エグゼには気づけれないように埋め込んだのでは、ということだった。


  エグゼは魔人序列第3位で、それより上となると序列2位か1位ということだが、一位であるアクレガリアイン王家の魔法は「重力」だと既に判明している。

  よって序列二位の一族の仕業であると結論に至った。


  そして、倒れてから数時間で意識を取り戻したエグゼに確認を取ると、序列2位の魔法は「蟲魔法」だと明かしてくれた。


  体内に忍び込ませて禁止事項を設定すれば中から人体を食い荒らしていくという。

  蟲を潰されれば終わりなので「重力」とは相性が悪いが、エグゼの一族の魔法である「風魔法」とは相性はそこまで悪い訳では無いないらしい。


  数十分前に別れた貴賓室にいるエグゼは、もう魔人の国「イグラス」に戻ることは難しいだろうと言っていた。

 

  蟲が発動した時点で術者に禁止事項を破ったことが伝わる。

  よって、序列二位の者は王族に告げるのだろう。


  序列3位のエグゼが人間に機密情報を漏らした、と。


  リーシェのために彼は罪人となってしまったのだ。


  それについて謝ってから、なぜ自分にここまでしてくれたのか聞いた。

  するとエグゼはこう言ったのだ。


「私の一族はもう私しか残っていませぬ。この老いぼれは、一族というより個人で序列を守っておりました。とある理由がありましてな。それはさておき……」


  驚くことを宣った後、それはおまけとでも言うように彼は告げた。


「私はずっと王家にというより、女王陛下に忠誠を誓ってきました。女王陛下は貴方様のことをとても心配しておりました。そして、私が出発する直前、秘密裏に一つの命令をしてくださいました」


  それは、もし孫娘を見つけたら可能な限り力になってあげて欲しい、というものだった。


  女王陛下はリーシェの祖母にあたる人物だ。

  姿を見た事も声を聞いたこともないが、きっと母によく似た優しい人物なのだろう。


「リーシェ様を見つけた時に、私はあなたの願いを叶えて生涯を終えようと思っておりました。こうして運良く生きておりますが」


  エグゼは最初から全てを捨てるつもりでリーシェに協力してくれていた。

  命に別状はなかったものの、彼は大事をとって今はゆっくり休んでいる。


  リーシェも自分に与えられた部屋の窓から、満天の星空を見上げた。


  気まぐれで視界を通過していく流星に願い事をしるわけでもなく、自分はあの中にいたのかと漠然と思う。


  そして同時に、ラピスの言葉も引っかかていた。


  「あの時のコメットなんだな」とはどういう意味なのだろう。

  もしかして、彗星だったリーシェが衝突した物体の中に見えたあの黒髪の青年は、ラピスとなにか関係があったのだろうか。


  夜も深まり、ラピスも自室にて就寝しているので今は確かめる術がない。


  リーシェはモヤモヤと眠れない夜を過ごした。

 

エグゼ様、ひたすら良いおじいちゃんって覚えておいてください( ´灬` )

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