第二十六話 また新しいことが分かりました
ふと、誰かに呼ばれたような気がしてリーシェは目蓋を持ち上げた。
不思議な夢の名残に包まれながら、視界の中心にヌッと入ってきた少年の顔を凝視する。
声を出そうにも出ないことに気づくと強烈な喉の渇きを感じた。
すぐに差し出されたコップの水を煽って、ようやく一息つく。
「おはようございます。ラピス様」
「あぁ。おはよう。具合はどうだ?リーシェ」
具合と聞いて思い出すのは、眠る直前の記憶だ。
苦痛以外の全てを忘れてしまいそうな程の激痛に見舞われて、リーシェは昏倒したのだと理解する。
どうやら、ラピス様が助けてくれたようだ。
「今のところは落ち着いています。今回はご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ありませんでした」
「気にするな。それを解決するためにラズリに来たのだから、存分に俺を頼れ」
「……私は、このまま何もせずにいたらどうなるのですか?」
不安から飛び出た質問に、少年は深刻そうに言った。
「力が暴走して器……お前の体を物理的に破滅させるだろう。具体的には、血流の過度な速い流れによる心臓の損傷。脳の機能障害。身体機能の異常。臓器の非活性化などか」
次々と挙げられた終わりに自分の顔が青ざめるのを感じる。
言葉が出なくなって、少し細くなった自分の手を見つめた。
不治の病を宣告されたような気持ちになっていると、急にラピス様は口許に笑みを浮かべた。
「だが、これは解決策が何も見つからなかったらの話だ」
「?」
「喜べリーシェ。魔人の代表が力をコントロールする方法を教えてくれるそうだ」
ラピス様が部屋の隅で待機していた兵士に合図を送ると、兵士は部屋を出ていく。
しばらくすると、長く白い髭を口許に蓄えた老人を連れて戻ってきた。
兵士が退室するのを確認すると、ラピス様は老人の紹介をしてくれた。
「このお方は魔人族序列第三位のエグゼ・ユリアス・スレイヴァ様だ。今回、代表として王都に来てくださった」
ラピスの紹介を受けて老人……魔人代表のエグゼが一歩前に出た。
「ただいまご紹介いただきました、エグゼ・ユリアス・スレイヴァです。お初にお目にかかります、リーシェ様」
左足を半歩後ろに下げて浅く頭を下げる魔人の礼に、リーシェも寝台の上で頭を下げた。
「初めましてエグゼ様。すでにご存知のことと思いますが、私はリーシェと申します。この度は、私のような者のために時間をとってくださるということで、大変感謝しています」
貴族同士の礼儀とか作法などもちろん知らないリーシェは、それでも最大限丁寧な言葉を使いながら言葉を述べた。
しかしエグゼ様はどこか慌てたように腰を深く折る。
まるでリーシェより頭の位置を低くしようとしているかのような行動に首をかしげた。
だが次の瞬間、衝撃的な言葉を告げられる。
「あなた様は我ら魔人の国では尊き身分のお方です。ご自身より階級の低い者に頭を垂れてはなりません」
「え……?」
「それはどういうことか、詳しくお聞きしても?」
ラピス様が尋ねると、老人は少し考えたあとこう言った。
「リーシェ様のお母上は、魔人序列第一位である『王族』の一員であらせられるのです」
と。
この編はリーシェの全てを判明させるつもりで書くので、色々どんどん分かっていきます





