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火の用心

ここから先は番外編となります。

第一部最終話を迎えましたが、話の都合上書ききれなかった内容を、番外編でお届け出来たらと思っています。

最終話まで読んでくれた方はもちろん、途中まで読んでくれている方でも楽しんで頂ける内容も含んでいます。

平穏に暮らしたい少女。お伝えしきれなかったリーシェの日常や冒険を作者と一緒に楽しんでもらえたら嬉しいです。


前書きの最後に、ではありますが作者から魂の叫びを一つ。


『第二部も読んでくれたら嬉しいです!!!あと是非遠慮せず感想といいねを投げてください!!!』


それでは番外編第一話をどうぞ。


「……一大事です。これは大変な事態です」


 張り詰めたリーシェの声が響いたのは、自宅のリビングだった。

 森から切り出した木を使った木目が美しい机に両肘を着いて、真剣な顔は下半分が指を組んだ手の奥に隠れている。

 今にも敵が襲来するのかと身構えるアズリカに向かってリーシェは切り出した。


「雨が少なすぎます。この季節は特に火事が増えるというのに、今年は湿気が無さすぎます」


 窓の外でそよそよと風に揺れる草は、少しずつ色化粧を始めている。

 水に鱗を反射させる魚も変わり、木々は紅くなって秋の訪れを歌っていた。


 新緑だった地面を黄金色に変えつつある草原を視界の端で認識しながら、リーシェはセルタの住人たちから聞いた情報を話す。


「セルタは一年を通して比較的晴れた日が多いそうです。しかし、どんなに気温が上がっても十日に一回は必ず雨が降るんだとか。湧き水が豊富とはいえ、降水量が少なければ不足が生じるでしょう。水は生きるのに必要な資源です。それなのにここ二週間半、雨どころか曇りにもならない。お天道様はずっとご機嫌です」


「秋の青空って高くて好きだぞ、俺は」


 本気になると次々と言葉が飛び出てくるリーシェを止めたくて、アズリカはわざと的外れなことを口にする。

 空は元々高いのに、秋になるとさらに高くなり澄む。青い絨毯を背景にして落ち葉やトンボが舞う様は、地下世界から出てきたばかりのアズリカにとって新鮮なものだった。故に事の深刻さがよく分かっていない部分がある。


 リーシェもそれは十分承知していて、秋空が好きだという言葉に同意しながら指を組み直した。


「雨が降らず空も青いままであれば、当然空気は乾燥して火が悪戯をしやすくなります。小さな火事程度であれば心配はいらないでしょうが、乾燥していればいるほど火は大きく燃え上がるものです。その時に消火するための水がなければ、草木の多い町はあっという間に業火に包まれてしまいます」


「それは不味いな。セルタの建物は公共の施設以外ほとんどが木造だ。家同士の距離も近いから逃げる間もなく焼かれるぞ」


「ええ。火を使わないわけにもいかず、用心するにも限界があります。いくら気をつけていても、火事は起こる時は起きます。ついでに最近は山火事も増えてきました。今は何とか事なきを得ていますが、強風が吹いて飛び火する可能性も十分に有り得るでしょう」


 組まれていたしなやかな指が解かれ、リーシェは音もなく椅子から立ち上がった。

 まだ出番のない暖炉を素通りして、窓の向こう側に視線を飛ばした。王都『ラズリ』がある方角だ。

 アズリカがこの家に住み始めて以降(絶対に不本意だろうが)王都に縛り付けられているラピスは、しばらく来れそうにないだろう。

 あの無駄に知識が詰まった頭があれば、水不足の解決策も思い浮かびそうなものだが肝心な時にいない。


 ヘッとこの場にいない少年に馬鹿にした笑みを浮かべつつ、なにか良案は無いかと不慣れながらも頭も捻る。


 リーシェの『氷刻』から生成した氷を空に浮かばせる案。これはリーシェの負担はもちろん、発する冷気による食物の成長不良や、陽の光を遮ることで気温が下がるなどの問題点から速攻却下。

 川の水を堰き止めて溜める案。これは、川の水はセルタだけのものではないこと。堰き止めたことで魚が下流にいけないことなどの理由で却下。


 小一時間ほどウンウン唸って結局良い案は出なかった。

 時間が経てば妙案に出会う可能性もあるので、ひとまずは町の見回りや声掛けを強化しようということで一旦話は落ち着くことになった。


 ……そんな悠長にはしていられなかったのだと、後に二人は後悔することになる。

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