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第十六話 反撃開始です!

 「焔刻」


 紡ぐ。


「氷刻」


 紡ぐ。


「焔刻」


 紡ぐ。


 燃え盛る炎と凍てつく冷気を交互に放出すると霧が発生し、視界は瞬く間に狭まった。


 飛び散った火の粉が、散り散りになった隊員の一人のマントに燃え移り真っ赤な炎に包まれる。


「あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"っ"」


 耳を塞ぎたくなるほど痛々しい絶叫が迸り、逃げていた調査隊メンバーが顔を青ざめさせる。

 紅蓮の炎はあっという間に、肉を焼き骨を焦がし上等な鎧を炭に……することはなかった。


「あ"あ"あ"あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"……あ?」


 耳を塞ぎたくなる絶叫が、聞かなかったことにしたかった間抜けな声へ変わる。

 火に巻かれている隊員は炎の向こう側でニッカリ笑った。


「全然熱くないです」


 悪い視界のなかで彼らは互いに目を合わせ、一様にリーシェへ視線を送ってきた。

 こちらを監視している者たちの視界を塞いだことを確認すると、少女は勢いよく頭を下げた。


「ごめんなさい!!怖い思いをさせてしまって……!」


 いわゆる「土下座」をすると、隊員たちの中心からラピスが歩み出た。


「顔をあげてくれ。なにか事情があるんだろ?」


 青い瞳の青年に促されて立ち上がると、十日ぶりに黄金の目と視線を合わせた。

 そこには、侮蔑や嘲笑の光はない。

 ただ、連れ去られたリーシェの身を慮り無事を安堵している様子だった。


 彼らを死の恐怖に落としてしまった後ろめたさからすぐに俯いてしまったが、リーシェはポツポツと経緯を説明した。


 数分後。神妙な顔になったラピスが、顎に手を当てて解決策を講じる。

 考え込んでいる少年にリーシェは言葉を続けた。


「母は人質に取られ、キージスの思惑も未だ不明です。しかし、忘れていた記憶を思い出したことで伝説の力も取り戻しました」


「お前の母親はこの谷のどこかにいるのだろう?キージスが解放の条件にしたのが俺たちの殺害なら、達成しなければ人質を解放しないはずだ」


 確かにラピスたちが虫の息にならなければ、キージスは決して姿を見せないだろう。

 なら、少年たちが虫の息になればいいだけの事だ。


「簡単な話です。ラピス様。ここには『知の力』を保有する者と、『技の力』を保有する者がいます。つまり、伝説はここに成立しました」


 その言葉にラピスはハッと目を見開く。


「どちらかが死ななくても、力を合わせれば解決できる、ということか?」


「はい。そこで一つ妙案が浮かんだのですが、聞いてもらえますか?」


 リーシェは万が一キージスの手の者に聞かれないように、小声で思いついたの作戦を話していく。

 調査隊の面々もラピスもその内容に勝機を見出したようで、同時にニヤッと笑った。


 殺し合いはいらなくなった。二人で力を合わせれば伝説は完成すると言う結論に、リーシェたちは明るい笑顔を浮かべる。


「伝説同盟だ」


 ちょっとダサいネーミングセンスでラピスは名付けた。

 自慢気に言うものだから、もちろんリーシェも隊員たちもなにもいえない。

 若干微妙な空気が流れたことに、ラピスは気づいていなかったのは幸いだった。

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