とある少女の記憶
更新遅くなってしまいすみません。
実は就職試験やら何やらで色々余裕がありませんでした。無事合格しましたので、今後も更新を頑張っていきます!
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「どれほど昔のことじゃったか……。あれはわしがまだ物心ついて間もない頃のことじゃった」
最強の王の威厳はそのままに、しかし寂しげな表情でシュウナは話し始めた。
物心ついた頃には既に両親が他界し、路地裏で死んだように生きていたらしい。
本来は世界を調停するために使う伝説の力は、その時ばかりの延命にのみ用いられていた。
「『技の力』は寒暖から身を守るために。『知の力』は危険を効率よく避けるために酷使しておった」
だが、当時はまだ4歳であり体力にも限界があった。
極度の栄養失調で死にかけていたところを、ある少年に助けられたという。
「どこから持ってきたのか、おにぎりを差し出されての。夢中でかぶりついたのをよく覚えておる」
途中、喉に詰まらせそうになったシュウナの背中を優しく叩いてくれたそうだ。
今の時代よりさらに荒れていた国で、聞いたことないほど穏やかな声をしていたらしい。
「中具も何も無い実に質素な握りじゃった。しかし、あれほど食べ物を美味しいと感じたのは初めてじゃった」
少年はゼキアと名乗り己を6歳だと紹介した。
「裕福な家庭の生まれだったようでの。わしはその後ゼキアの家に保護された」
少年の父親はかなり腕が立ったようで、毎日のように現れる襲撃者を難なく撃退していたそうだ。
幼いシュウナは保護された後、暖かく出迎えられ不自由なく育てられたという。
しかしなぜか養子に入ることは嫌がり、ゼキアとは友人という形で落ち着いた。
シュウナが8歳になるころには伝説の力を自由自在に扱うことができるようになった。
その力でゼキアたちを助けることも多くあったらしい。
お互いを助け合い笑いが絶えない家庭。
そこはこの戦いの国では考えられないほど、平和で満ち足りていた。
だが、16歳の頃事件が起きる。
伝説の存在であるシュウナが神として祭り上げられ、王へ召し上げられたのだ。
その方法は誘拐と何も変わらなかったと、無表情のシュウナは語った。
「皆で夕食を囲んでいた時に突然賊が侵入しての。随分荒々しい扱いでわしは国の心臓部へ監禁された」
失っていた意識を取り戻しすぐに心臓部から脱出すると、そこには信じたくもない光景が広がっていた。
焼失した暖かな家。
辛うじて残る門の前に晒された3人の死体。
強くあれとシュウナに教えた養父が。
穏やかであれとシュウナを導いた養母が。
絶望から救いあげ、生きることを教えてくれた親友が。
焼け焦げ、頭もない状態で十字架に打ち付けられていた。
乱雑に釘で打たれ固定されたその姿は、シュウナの心を歪ませるには十分だっただろう。
まだ何色にも染まっていなかった伝説の力は、この時から暴虐の証として闇色に染まった。
「リーシェ。お前にもいずれ訪れるじゃろう。誰かを失い、誰かを殺した全てを滅したいと強く思う時が」
友と養父母を惨殺されたシュウナは、幸福を手垢で汚した者たちを焔で焼き払ったという。
国全体を焔で覆い、無関係な国民だけを残して悪を焼き殺していった。
「全てを終えたあと、わしは王の座に座った。伝説の力を解放したのをきっかけとしたのかは知らぬが、この身が不老不死となったのもその時からじゃ」
一息ついてからシュウナは呆然としているゼキアを見つめた。
「お前には記憶がないのじゃろう?じゃが、お前はわしが知っているゼキアじゃ」
記憶が無いのに過去にそっくり存在していた。この事象にリーシェは身に覚えがあった。
「転生……」
心内で呟いたつもりが声に出てしまったようだ。
驚くように目を見張ったシュウナが、リーシェを問い質した。
「転生?お前、何故それを知っている?」
「え、それは……」
「ちょっと待てよ」
自分も転生者だからだと続けようとした言葉は、ゼキアによって制止された。
「テメェの覚醒劇とか、大昔の俺そっくりな奴の話とか、マジでどうでもいいわ」
鞘で自分の刀を叩きながら、ゼキアは言った。
「大事なのは、テメェはこの国を変える気があるのかどうかだろうが」
確かにその通りだとリーシェはシュウナを見る。
シュウナが幼い頃、栄養失調で死にかけていたのなら今の状況に危機感を持っているのが普通ではないか。
しかしシュウナは、どこで誰が死のうとどうでもいいと言った。
シュウナは絶対に倒せないことは、先程までの戦闘で痛いほど分かっている。
彼女の考え次第で革命の行動は大きく変わるだろう。
シュウナはしばらく俯かせていた顔をゆっくりと上げると、大きな酷薄な笑みを浮かべた。





