もっと強く
キリヤやゼキアがなぜ、タタラという男を重要視するのか。
その理由を、この数分でリーシェは身をもって知った。
人をまとめる統率力が一番の理由と言われているが、それだけで終わらない重要性をタタラは兼ね備えていた。
常人が振るには大き過ぎる大太刀を豪快に扱うタタラの一撃は途方もなく重い。
タタラとの戦闘を開始して数秒しか経っていない頃、彼の振り下ろしを氷の剣で受け止めたことがあった。
そのあまりの衝撃に腕が痺れるどころか骨が軋む嫌な音が聞こえ、瞬時に避ける道を選んだ。
もしあの時回避せず受け止め続ける選択をしたら今頃リーシェは真っ二つだっただろう。
タタラとの戦いにおいて正面から向かっては行けないことをこの数分でリーシェは覚えていた。
故にリーシェが選んだ戦闘方法は遠距離からの砲撃。
と言っても、相手は大太刀で攻撃範囲は中距離なのでかなり離れないと、タタラ攻撃範囲に入ってしまう。
そして離れれば離れるほど、砲撃に晒す対象を絞りづらくなって迂闊に攻撃できなくなった。
一言で言ってしまえば劣勢だった。
魔人族との一連の戦いやダンジョンでの戦いでそれなりに強くなったと思っていたが、自分はまだまだ弱いことをリーシェは痛感した。
「まだ……足りない」
迫り来る鬼神のような男を見ながら歯を食い締める。
「こんなんじゃ、神を殺すなんて夢のまた夢」
強くならなければ、神は新たな伝説の存在を生み出してしまう。
この世界が滅んでしまう。
「こんな所で負ける訳にはいかないんですっ!」
眦を吊り上げて右手に焔を、左手に氷を纏わせる。
両手を開いた貝のように合わせて、前方へ一気に放出した。
焔と氷が互いに絡み合いながらタタラへ向かっていく。
唸りを上げながら向かってくる焔氷の砲撃を、男は迷うことなく正面から受け止める。
大太刀を地面に刺すように刃を下に向け、胸を張って立つ。
青と赤の砲撃は大太刀と激突し、タタラ避けるように2つに分かれた。
「うそ……」
全力で放った砲撃を簡単に防がれてリーシェは絶句した。
その隙をタタラが見逃すはずもなく、一瞬で大太刀の凶悪な刃がリーシェの首に迫る。
反応できなかったリーシェの首の皮を傷つける寸前で銀の刀身は止まった。
「話にならないな」
一言。そのたった一言がリーシェを打ちのめした。
悔しさと申し訳なさと、自分への苛立ちが少女の肩を震わせた。
悲嘆に暮れるリーシェにタタラは続けて言った。
「だが、伸び代はある。頑張れば俺なんか足元に及ばんくらい強くなるだろ」
弾かれたように俯けた顔を上げれば、ずっと強面だったタタラが人の良さそうな笑顔を浮かべていた。
「お前さんはまだ若い。急がなくてもいい。今は自分を信じて進め」
大きな手に頭を撫でられる。
暖かい手に父の手を思い出して、リーシェは静かに落涙した。
結局、タタラとの戦いで良いところを見せることが出来なかったリーシェだが、タタラは満足そうに革命に力を貸してくれることになった。
☆*☆*☆*
革命決行まで、あと4日。





