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choice02~球体の楽園~  作者: 陽芹 孝介
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最終話 青と白の接触

……某所……


赤塚はある所で目を覚ました。

それはもちろん東應医大ではなく、別の場所だ。


目覚めた赤塚に一人の男性が声をかけた。

「目覚めたか…。今回もなかなか、面白い物を見せてもらったよ…」


赤塚は目覚のせいか、少し気だるそうに答えた。

「楽しんで頂けて幸いです…」


男性は言った。

「しかし、あの月島葵という男は、君の揺さぶりに全く動じないな…」


赤塚は笑って言った。

「フフフ…自信があるのですよ…」


「自信?」


「ええ…そうです、自信です…」


男性は腑に落ちない様子で言った。

「自信…あの若さでか?…」


赤塚は言った。

「若さは関係ありませんよ…。彼は自分の頭の良さと、腕っぷしにそうとう自信があるのですよ…。だから、決してブレない…」


男性は言った。

「君がそこまで言うほどか?」


「彼の精神力には…敬服しますよ…」


男性は話を変えた。

「話は変わるが、一つ気になる事があってな」


赤塚は言った。

「あの、『マリア』とか言う女性の事ですか?」


「やはり気づいていたか…」


「ええ…記憶喪失になる事が、おかしいですから…」


「そうだ、あの女性は転送予定になかった人間だ」


赤塚は指で眼鏡を上げた。

「予定していた人間の横入りをして…、システムトラブルを起こし…自身の記憶を失った…」


「現状、その可能性が一番高い…」


赤塚は笑った。

「フフフ…我々を探る何処かの犬ですか…」


笑っている赤塚とは対照的に、男性の表情は険しい。

「笑っている場合ではないぞ…」


赤塚は言った。

「これは失礼…。ただ相手が誰であろうとも…我々はもう止まりませんよ…」


「フフフ…この星を天に還す時がきました…」



……市街地…喫茶店……


ある日の昼、葵はとある喫茶店にいた。

いつものように好物のアイスカフェラテをすする。


「うむ…やはり、ここのアイスカフェラテは美味しい…」


葵が満足そうにアイスカフェラテをすすっていると、男性が一人、葵席に来た。


「待たせたな…」


声をかけてきたのは藤崎宗吾だった。


葵は宗吾を見て言った。

「こんにちは…警部殿…」


宗吾は葵の向かい側に座った。


席についた宗吾に気付いたウエイトレスは、ちゅうもんを取りに来た。


「いらっしゃいませ…ご注文をお伺い致します」


礼儀正しい定員に、宗吾は言った。

「ホットコーヒーを一つ…」


注文を受けたウエイトレスは、お辞儀をして去っていった。


葵は言った。

「それで、どうしました?…」


宗吾は言った。

「変死事件が発生してな…」


「変死事件?」


宗吾は続けた。

「ああ…、5人の人間が急死した…」


葵が言った。

「警部殿が、事件と言ったところからして、何か引っ掛かる事が?」


「ただの突然死なら、事件にするのは難しいが…そうじゃないんだ」


宗吾が話している最中に、頼んでいたホットコーヒーが来た。


「お待たせしました、ホットコーヒーになります」


宗吾はウエイトレスからホットコーヒーを受け取った。


ウエイトレスは笑顔で言った。

「ごゆっくりどうぞ」


ウエイトレスが去ったのを、確認して宗吾は話を続けた。

「どこまで話したかな?…ええっと…、あっ、そうそう…死因は急性心不全なんだが…、おかしな事があってな…」


「おかしな事?…」


宗吾は言った。

「ああ…5人とも同じ死因で、同じ場所と時間に死んだんだ…」


葵は髪をクルクルさせた。

「確かに妙です…。薬物などは?」


「5人とも検出されていない…」


葵は聞いた。

「もちろん、目立った外傷も…無いですよね…」


「ああ…無い。妙だろ?」


「妙ですが…、興味深い…」


宗吾は葵の興味津々な表情を見て、ニンマリして言った。

「だろっ!そう言うと思ってさ…資料持ってきた…」


宗吾は鞄から封筒を取りだし、それを葵に渡した。


封筒を受けとり、葵は言った。

「準備がよろしくて…」


葵がそう言うと、宗吾は立ち上がった。

「うんじゃあ、俺は行くわ…」


葵が言った。

「まだ来たばかりですよ?」


「呼び出しといてなんだけど、捜査中に抜けて来たんだよ…」


葵は言った。

「それは早く戻った方が良いですね…」


「そうするわ…。葵、このあと美夢と会うんだろ?」


「ええ…、買い物に付き合えと…」


宗吾は苦笑いした。

「いつも悪いな…。美夢に晩飯代渡してるから、何か食って帰れよ…」


「いつもすみません…」


「気にすんな…捜査協力してもらってるし、それに…お前は弟みたいなもんだ…。じゃ、美夢の事頼むわ…」


そう言うと宗吾は伝票を持って行ってしまった。


ここの代金も支払ってくれるようだ。


宗吾の言うように、葵は幼い頃から宗吾に面倒を見てもらっていた。


妹の美夢と幼馴染みの葵は、宗吾に気付いたとっては、弟のような感じなのだろう。


葵は宗吾に奢ってもらったアイスカフェラテを、飲み干し立ち上がった。


「僕も…行くか…」



……同日…夕方……


買い物を終えた美夢はご機嫌だった。


「いっぱい買っちゃったっ!葵も何か買ったらよかったのに…」


葵の両手は美夢の買ったもので、塞がっていた。


葵は言った。

「僕は無駄遣いはしない…」


美夢はむっとして言った。

「無駄遣いじゃないよっ!みんなちゃんと着るのっ!」


「だといいがな…」


二人は人混みの多い市街地を歩いて行く。


美夢が言った。

「ねぇ…何食べに行く?」


葵は少し考えた。

「そうだな…警部殿の奢りだからな…」


美夢はニヤニヤしながら言った。

「けっこう貰ってるから…贅沢しちゃう?」


「お前な…少しは遠慮しろ…」


美夢は気にする事なく言った。

「いいのっ!お兄ちゃん、けっこう溜め込んでるから…」


そんな話をしながら向かった先は、いつもの居酒屋だった。


居酒屋の入り口付近に付いた時だった…。葵の耳に女性の声が届いた。


「やっと会えた…。月島君…」


人混みの中から、確かに葵を呼ぶ声がした。


葵は振り向いたが……。誰もいない…。


美夢が言った。

「どうしたの?葵…」


葵は美夢に言った。

「美夢…悪いけど、先に店に入っていてくれ…。知り合いを見付けた…」


美夢は不思議そうな表情をしたが、すぐに納得してくれた。

「うん、わかった。でも、すぐ戻ってきてよ…」


「ああ…わかった…」


そう言うと葵は声のした方へ向かった。


「女性の声だったな…あの声は確か…」


まだそう遠くには行っていない。

葵は人混みの中から声の主を探す。


ただ、この人混みの中を探すには無理がある。


「くそっ!人が多い…見つからないか…」


葵が諦めかけた時、その人物はいた。


人混みの流れを逆らうように、葵の方を向いて立っている。


葵はその女性の方に向かった。


葵は言った。

「やっと会えましたね…」


女性は言った。

「そうね…」


葵は言った。

「マリアさんと言った方がいいですか?」


その女性はマリアだった。


マリアは言った。

「ふふ…、マリアはやめて…。私は、白嶺ゆり(しらみねゆり)…」


葵は言った。

「あなたは…何者です?」


百合は言った。

「いずれ…わかるわ…」


そう言うと百合は人混みの中へと消えた…。

葵はそれを呆然と見つめていた。


すぐに後を追うこともできたが…葵はそれを、しなかった。

何故だかわからないが、追わなかった…、いや、追えない空気を百合が出していたのかもしれない…。


葵は呟いた。

「やれやれ…また、興味深い人が現れたようだ…」


葵と百合…、この二人の接触が後々、深い意味をもたらす事を本人たちはまだ知るよしもなかった。



next…choice03





御閲覧頂きましてありがとうございました。


更新頻度が遅くて、もやもやした方もおられたと思います。

申し訳ございませんでした。


choiceシリーズも一応、自作で完結を予定しています。

しかし、あくまで予定なので、執筆の過程上choice04も、もしかしたら書くかも(笑)


choice03の執筆前に、choice0S-1を先に、掲載予定しております。


choice0S-1は、choice01のサイドストーリーです。キャラごとのストーリーになっていますので、興味のある方はそちらの方も、よろしくお願い致します。


それでは、次回作でお会いしましょう。


陽芹 孝介。


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