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choice02~球体の楽園~  作者: 陽芹 孝介
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この世とは…

赤塚はうすら笑みを浮かべている。

まるで葵を挑発するかのように…。


ただいま葵は動じず言った。

「世界について?…いきなりですね…」


赤塚は言った。

「まぁ、そう言わずに…。君とはゆっくり話したいと思っていたのですよ…」


葵は思った。もしかしたら、全てではないがアマツカの目的を少しでも掴めるかも知れない…。


そう思った葵はあえて、のってみた。

「まぁ、僕もあなたとは話したいと思ってました…、聞きましょう…」


世界は言った。

「では、問います…、月島君、この世界…現実世界を、あなたはどう思いますか?」


「漠然とした質問ですね…、僕は思想家ではありません…。ただ、一大学生として答えるなら…光でもあり、闇でもある…。まぁこれは世界と言うよりは、人類の事と言えますが…」


赤塚は笑いながら言った。

「フフフ、抽象的な答えですが…、悪くない…」


葵は逆に問いた。

「では、あなたはどう思うのです?」


赤塚は言った。

「一言で言えば……、この世界は病んでいます」


「病んでいる?」


「ええそうです、病んでいます…、無能な一部の人間が私利私欲の為に、争いを繰り広げ…命を奪い合う…。実に愚かで、見苦しい…」


葵は赤塚の熱弁を黙って聞いている。葵だけでなく、有紀や五月も赤塚の言葉を聞いてるようだった。


赤塚は続けた。

「それらが我々の知らないところで日々起きている…。考えられますか?無垢な子供たちが銃を手に戦っているのを…、恵まれたあなたたちに想像できますか?…」


以前歩の言った言葉を思い出さす…。歩は言っていた…、それは地獄のようだと…。


赤塚は続けた。

「あなた方の住んでいる国も例外ではありませんよ…形は違えど、醜い行為が繰り返されている…、大人も、子供も…自分より劣った者を探し…それを見つけ、暴力や精神的に追い込み…それを追い詰め、優越感に浸る…醜く、そして滑稽だ…」


話を聞いていた五月は表情を落とした。


赤塚は吐き捨てるように言った。

「この世は我々が生きていくには相応しくない…。何せ、国を…世界を良くする為の各国の政治家共は、自らの保身しか考えていないのですから…、それに賛同する民衆も愚かだ…」


そこでようやく葵が口を開いた。

「それで、このシステムを使い…世界を浄化しようと?…」


赤塚は言った。

「ほぉ…気づいていましたか…」


「なんとなくは…あなたが思想家である事はなんとなく感じていました…」


「やはり君は面白い…敵にしておくには勿体ない…」


葵は言った。

「このシステムをウィルス化し、そして世界に発信する…。途方もない計画ですが…、そんな事をしても何も変わりませんよ」


赤塚は広角を上げた。

「それはどうでしょ?…あなたは何故、人が争うかわかりますか?」


葵は言った。

「人はそれぞれ価値観が違います…。民族間や宗教間と、それぞれですが…」


赤塚は言った。

「私も基本はそう思いますが…、要は…土地と資源の取り合いです…。しかし、それは建前に過ぎません…」


「では、何だと?…」


赤塚は言った。

「人間は他の人間よりも、上でいたい…ただ、それだけです…。浅はかであり愚かです…」


葵は言った。

「それが人の本質だと?」


「それ以上の事がありますか?…」


葵は赤塚の言葉を聞いて少し黙った。


確かに人類の歴史を見ても、争いの無かった時代は無かったのかもしれない。


葵は言った。

「僕はあなたほど人類に失望はしていませんよ」


赤塚の表情は変わった。


葵は続けた。

「確かにあなたの言う通り、人類は争いを繰り返しています…現在も…。しかし、その反面…競い合うことにより、文明は発展してきました…。そして何より人には知恵がある…」


赤塚は言った。

「知恵があるからこそ人は闇に堕ちる」


葵は否定した。

「知恵があるからこそ…人は輝けるのです」


赤塚と葵は真っ向から意見がぶつかる。


人の本質は光りと主張する葵と、人の本質は闇だと主張する赤塚…。


赤塚が言った。

「残念です…君とはわかり合えると思いましたが…」


葵は言った。

「冗談を…人の尊厳を軽んじるあなたとは…わかり合えませんよ…」


赤塚が言った。

「酷い言われようです…。これはただの実験ですよ」


葵は言った。

「実験?人の心を弄ぶのがですか?…。確かにあなたは誰も殺してはいませんが…やろうとしている事はテロリストと、なんら代わらないですよ…」


赤塚は苦笑いした。

「フフフ、テロリストですか…。まさか、私がこの世で最も意味嫌うものと、同列にされるとは…心外です」


葵は言った。

「さぁ…これ以上、あなたの思想に付き合う暇はありません…。今後の計画内容を教えてもらいましょうか…。アマツカとは何です?」


赤塚は言った。

「それを私が簡単に説明すると?」


そう言うと赤塚は拳銃を取り出した。


五月を言った。

「拳銃…本物?」


五月は拳銃を目の当たりにして驚いている。


赤塚は言った。

「これが偽物で無い事はわかるでしょ…」


葵は身構え、有紀は五月の前に立った。


赤塚は拳銃をかまえ少しづつ近付いてくる。


その時だった。

教会の入り口のから声がした。


「動くなっ!」


赤塚と同じように拳銃を持った人物か教会に入ってきた。


葵も、勿論赤塚も予想してなかった出来事に、皆が入口をみた。


入ってきた人物は……。








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