表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
choice02~球体の楽園~  作者: 陽芹 孝介
14/29

疑心

湖のほとりで皆はただ呆然とした。

しかし、その中で葵と有紀は動いた。


「とにかく検死だ…葵…」


「はい、とりかかりましょう」


葵は陸の遺体を仰向けにした。

瞳孔を開いた陸が皆を見る…。亜美は貧血を起こして倒れそうになった。


すかさず九条が亜美を支えた。

「愛さん、亜美ちゃんを…それに皆も一度屋敷に戻ろう…」


五月は顔を青くして言った。

「私はここに……カメラを…」


歩は五月の様子を察して言った。

「五月ちゃんは戻った方がいい…。カメラなら俺が撮るよ…。俺、プロのカメラマンだから…」


歩は五月からカメラを受けとると、九条に言った。

「九条、皆を頼む…。検死が終わりしだい、俺達もすぐに戻る…」


「わかった…。ただ、警戒は怠るなよ…」


九条はそう言うと、葵、歩、有紀を残して屋敷に向かった。


歩は玄蕃をカメラで撮りながら言った。

「やられたね…」


葵は体が硬直してるか確認している。

「やられましたね…、ただこれでアマツカがここに来ているのはわかりました。

上半身の硬直はまだないです」


有紀が言った。

「何故アマツカがいると?…。

下半身もまだだな…」


葵が言った。

「タイミングが良すぎます…。脱出の糸口を見つけたとたんです…、僕の動きを把握しないと、このタイミングで殺人は出来ません…」


歩が言った。

「なるほどね……。で、死因はその刺傷かい?…」


有紀が言った。

「腹部と右胸部に刺傷がある…。それにこの出血量…。死因は出血多量だな…」


葵が言った。

「遺体の状態からして…死んで間もないですね…。まぁあまり関係ないですが…」


歩が言った。

「関係ないって?…」


「時間です…、今は12時40分…。死体が発見されたのは、12時20分…。ここのルールだと、正午にリセットされます」


有紀が言った。

「そうか12時前に死んでいたら、死体は正午に消える…。つまり正午でを過ぎてから新だことになる」


葵は言った。

「つまり、僕たちに『死体を発見させたかった』とも、とれます」


有紀が言った。

「こんな事を考え付くのは…」


歩が言った。

「アマツカ………」


葵が言った。

「とにかく遺体をこのままに、しておくには…」


歩が言った。

「そうだな、何かに入れて安置しよう…このままだと可哀想だ…」


歩は一人で屋敷に戻った。おそらく何か遺体を包む物を探しに行ったのだろう。


葵が言った。

「凶器は無いので、自殺では無いですね…」


「そうだな…、しかし、いったい誰が?…。またアマツカが操っているのか?」


「僕はそう思います…、先程も言いましたが、タイミングが良すぎます」


「確かに…。では、誰がアマツカなんだ?」


「それはまだわかりませんが…一つ忘れている事が…」


「なんだ?」


「客室が一つ空いてます…」


「12人目か…。それがアマツカだと?…」


葵は髪をクルクルしながら言った。

「可能性の話です…」


有紀は表情を険しくした。

「とにかく12人目の事は警戒しなければ…」


二人が話していると、歩が走って来た。

歩の手にはビニールシートがある。


歩が言った。

「このビニールシートで遺体を包もう…」


歩はビニールシートを広げた。遺体を包むには十分な大きさだった。


3人で陸の遺体をを包み、それをそのまま湖のほとりに置いた。


有紀が言った。

「屋敷に戻ろう…」


3人は屋敷に戻り、食堂に行った。

食堂に入ると、皆が何か揉めていた。


「だから、危険なんだ…団体行動をしないと…」

九条が皆に説明している。


それに亜美は反論している。

「でも…この中に、陸を殺した殺人犯がいるかもしれないじゃないですかっ!」


亜美はかなり興奮している。


すると葵たちに気付いた九条が、助けを求めた。

「君たちからも言ってくれ…、単独行動は危険だと…」


どうやら、単独行動か団体行動のどちらにするかで、揉めていたようだ。


愛が言った。

「自殺したとかは…、自殺の可能性はないんですか?」


亜美が愛に噛み付いた。

「陸は…、陸は自殺なんかしないっ!…。ここにこれてよかったって言っていたのに……、自殺なんてっ!」


亜美は泣き出してしまった。


九条が葵に聞いた。

「検死の結果は…どうだったんだい?」


葵はためらう事なく言った。

「はっきり言います…。これは殺人事件です」


食堂にいた全員の視線が葵に集中した。


葵は続けた。

「まず凶器がありません、胸と腹を刺して、凶器を処分することは出来ません。それに刃物で自殺をする場合は、ためらい傷がつくはずですが…それも無かったので…」


九条は暗い表情で言った。

「総合的に考えて…他殺か…」


祥子が言った。

「決まりね…、団体行動は危険だわ…、寝首を狩られるかもしれないもの…」


葵が反論した。

「そうとも言い切れませんよ…。団体行動は互いを見張る効果もあります…」


祥子は険しい表情で言った。

「疑ってるの?」


「お互い様でしょ…」


二人の間にしばし不穏な空気が流れる。


歩が沈黙を破る。

「まぁまぁ、葵君もはっきり言い過ぎ…。祥子ちゃんの言い分もわかる…、とにかく身の安全を最優先にしよう」


祥子が言った。

「いつ、身の安全が確保できるの?犯人が誰だかわからないのに…、仮に12人目がいたとして、どうなさるおつもり?…屋敷で籠城でも決め込むつもり?…」


歩は言葉に詰まった。

「そ、それは…」


すると葵が言った。

「ここから脱出すればいいのですよ…」


脱出…。葵のその言葉に皆は様々な反応を示した。


期待する表情や、乗り気でない表情など様々だ。


葵がそれらの反応を見て言った。

「どうも脱出に消極的な人たちがいるようですね…。人が一人死んでいるにも関わらず…」


祥子が言った。

「確かに…、脱出は最善の手段よ…。ただしできればの話だけど」


葵が言った。

「祥子さんの言うことも…ごもっともですが、皆で協力すれば可能です」


「皆を信用していない私が、協力するとでも?…」


「してもらわなければ…困ります…」


「ふふ…平行線ね…」

祥子は先程より表情を緩めたが、目は笑って無かった。


すると愛が言った。

「とりあえず、夕食の時間まで待機しませんか?…頭の整理もしたいので…」


有紀が賛同した。

「そうだな…皆、少し興奮気味や、消沈気味だ…。一度部屋に戻り、少し休むべきだ」


九条が言った。

「それじゃあ、一度解散しよう…。そうだな5時に食堂に集合はどうだろう?」


有紀と九条の提案に、反対する者はいなかった。


祥子、亜美、赤塚、マリアは食堂を出て部屋に戻り、愛は食堂の片付けを始めた。


愛は呟いた。

「皆…昼食とる気分じゃないか…」


歩が立ち上がり愛の片付けを手伝う。

「そうだね…昼食の事、忘れてたよ…」


歩の言葉を聞き、愛は泣き出した。

「うっ…、ど、どうして?…どうしてこんな事に……」


静かになった食堂に、愛の泣き声がただ響いていた。







ご閲覧ありがとうございます。


毎度の事ながら、展開が遅くてすみません。


ようやく折り返しにさしかかりました。

ここまで書いてこれたのも、読んでくださっている皆様のおかげです。


アクセルが増えるたびに、頑張ろうって、気持ちになります。


私の文章力は絶望的ですが、ストーリーを楽しんで頂ければ幸です。


頑張って執筆していきますので、最後まで付き合ってやって下さい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ