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choice02~球体の楽園~  作者: 陽芹 孝介
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来客と異変

……二日目…午後十一時……


夕食を終えた皆は、各自で自由行動をしている。


有紀が葵に声を掛けてきた。

「葵、少し外に行かないか?…」


葵は有紀が言いたいことを察した。

「わかりました…11時ですからね…」


九条が二人に声を掛けた。

「僕も行こうかい?」


有紀が言った。

「いや、私と葵の二人でいい…。もし誰かいたとして、あまり人数をかけると、警戒される…二人がベストだ…」


九条が言った。

「そうか、そうだな…。だが、警戒は怠らないように…」


有紀が言った。

「心配するな、九条氏…。葵がついている…」


葵が言った。

「九条さんは、団体行動の件を皆に、一応話しておいて下さい…」


九条は苦笑いした。

「やれやれ、損な役回りだよ…」


そうして、葵と有紀は屋敷を出た。


二人は最初に、倒れていた付近へ向かおうとしたら、誰かが倒れているのを確認できた。


葵は言った。

「やはり…」


有紀が言った。

「しかし、二人しかいないぞ…」


葵はよく確認した。

有紀の言うように、二人しか倒れていない。


「予想が…外れましたか…」


有紀が言った。

「そうとは言い切れないぞ…二人より先に気が付き、何処かへ行ったのかもしれない…」


葵は髪をクルクルしながら言った。

「可能性はなくないですね…。とにかく二人の元へ…」


「ああ…そうだな、急ごう…」


葵と有紀は駆け足で二人が倒れている場所に行った。


そこには赤茶色の髪のメガネをかけた男性と、小柄で清楚な女性が倒れていた。


葵は男性に、有紀は女性に、それぞれ声を掛ける。


葵は男性の呼吸と脈、心音を確認した。

「脈拍、呼吸、心音それぞれ異常は無しです…。有紀さん…そちらは?」


「同じく異常は無い…そのうち目を覚ますだろう…」


すると、男声が目を覚ました。


「う~ん……、こ、ここは?…」


葵が優しく声をかけた。

「大丈夫ですか?…」


「あ、あなたは?…」


男性はかなり動揺している。

目の前の光景に混乱している…当然の反応だ。


葵は敵意がないのを強調した。

「心配しないで下さい…危害を加える事はしません…」


男性は辺りをキョロキョロしている。

「どこですか?ここは?…あなたは、誰ですか?」


葵は何とか落ち着かせようとした。

「話せば長くなりますが、とにかく一度深呼吸を…」


男性は葵に言われるまま、深呼吸をし…息を整える。


男性は状況を理解しようと、必死になっているのがわかる。


「少し外に落ち着きましたか?…」


葵がそう言うと男声が言った。

「はい、何とか…。しかし…」


葵が男性に言った。

「無理せず…とにかく、落ち着きましょう…。僕は月島葵…あなたの名前は?わかりますか?」


男性は目を閉じて、一息ついて答えた。

「僕は…赤塚貴文(せきづかたかふみ)…28歳…」


すると、有紀が葵を呼んだ。

「葵っ!こっちへ…」


葵は男性に言った。

「少し待っていて下さい…」


葵は有紀の元へ行った。

「どうしました?」


有紀は困り果てた表情で言った。

「厄介な事が…この娘、記憶が無い…」


葵は目を見開いて言った。

「それは……、確かですか?…」


「頭部外傷による一時的な記憶喪失ではない…。名前も年齢もわからないそうだ…」


葵は女性の方を見た。

女性は憔悴(しょうすい)して、ただ呆然としている。


葵は言った。

「こっちは、異常は無かったですが……、厄介な事になりそうですね…」


「ああ…1人少ないのも気になる…」


「ここにいても、仕方ありません…とにかく屋敷に戻りましょう…」


「そうだな、皆も心配するからな…」


葵と有紀は、新たに来た二人と屋敷に戻る事にした。


屋敷に戻り食堂で二人を紹介すると、皆は驚きを隠せない様子だ。


記憶喪失の女性……。


皆にとっては少なからずショッキングな出来事だった。


歩が葵に言った。

「葵君、考えられる可能性は…あるの?」


「どうでしょうか……。さすがに予想外ですから…ただ…」


九条が言った。

「ただ…なんだい?」


「この世界の重要なポイントは『脳』です…、この世界に転送する時にシステムトラブルが起こり…なんらかの作用を脳に与え、記憶喪失を起こした…それが、一つと…」


有紀が言った。

「来る前から、記憶喪失だった…」


「ですね…。ただ、来る前から記憶喪失だった場合は、有紀さんと最初に話した時に「私は記憶喪失です」と、答えると思うので…」


九条が言った。

「違うのかい?」


有紀が言った。

「ああ…、彼女は目を見開いて「私は誰?」「何もわからない」と言った…。

この答え方は記憶喪失になったばかりの、反応ともとれる…」


歩が呟いた。

「だとしたら、前者の可能性か……」


有紀が言った。

「とりあえず新人の二人を部屋に案内しないとな…。陸、亜美と愛…すまないが二人を頼む…」


陸が言った。

「いいっすよ…。んじゃ赤塚さん、行きましょう…」


赤塚はやっと落ち着きを取り戻したようで、素直に従った。

「はい、よろしくお願いします」


愛が言った。

「じゃあ私達も…亜美ちゃん行きましょう…」


亜美は女性に連れ添って言った。

「さぁ…2階に行きましょう…」


5人は2階へと向かった。


すると、祥子も立ち上がった。

「私は部屋に戻ります…明日は朝からデッサンをしたいので…」


祥子が2階に行くのを確認して、有紀が言った。

「で…九条氏、皆はまとまりそうか?」


九条は沈んだ表情で言った。

「難しそうだね…。団体行動は嫌なようだ…、皆今の生活のペースを崩したくないそうだ…」


五月が言った。

「皆…協調性が無さすぎ…」


歩が言った。

「まぁ…前に殺人事件があったって…、言えないよね…」


葵が言った。

「確かに…混乱を招き、疑心が広まりますから……。僕たちも、そこまで信頼はされてないでしょうし…」


歩が頭を抱えた。

「また後手に回りそう…」


葵が言った。

「後…二人だったのも気になります…」


有紀が言った。

「部屋も一つと余るな…」


九条が言った。

「もう一人来る可能性もあるけど…」


葵が言った。

「それともう一つ…もう既に『12人目』がここに来ている可能性です…」


『12人目』…葵が発した言葉に、場の空気を緊張感が包む。


歩の表情が険しくなる。

「12人目……、アマツカ……」


葵が言った。

「そうとは言い切れないですが…、可能性はあります…」


九条が言った。

「早急なや脱出しないと…何か糸口は?…」


葵が言った。

「そうですね……、一貫性がありませんからね…」


歩が言った。

「後手後手だな…少しでも糸口がないと…」


葵が言った。

「誰が全く無いと言いました?…」


その言葉に皆が反応し、葵に視線を集めた。








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