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27モフ目

 おはようございます。もう昼だけど。

 淡雪の尻尾を枕にし、ドリーの羊毛を抱き枕にし、トトの尻尾をもふりまくる。

 絶賛ログハウスに引きこもり中です。

 経過観察から現実時間で一週間。やる気がおこらねぇー。

 世の中夏だけど、うちの高度が高度だから、厚さはたいして気にならない。

 補償でもらった儀式魔法核で水源用のアイテムを作った後は、ずっとこんな感じでただれた生活を送っている。

 その間の食事はモフナーの手料理を消費している。それもそろそろなくなりそうだけど。この料理にもウィルス感染していたんだよなぁ。

「相変わらずだれてますねぇ」

「ん、オラトリオさんか」

 急にあらわれて声をかけてくる人物。浮遊岩に許可なく入ってこれるなんて運営しかいない。一日一度、こうして僕の様子を覗きにくる。

「僕の様子見なんてモニター越しのチェックでいいんじゃないの?」

「そう邪険にしなくても。人との会話は大事ですよ?」

 否定はしないけど、そんな気分にはなれないなぁ。

「まあ、今日はお知らせを持ってきたんですけど」

「お知らせ?」

 何かあるというなら姿勢を正すとしますか。

「よっこらせと。で、どんなお知らせ?」

「おっさん臭いですね。まあ、いいですけど。一つはこれ」

 虚空から取り出されるのは一つの玉。水晶かな?不思議なことに【鑑定】が通らない。

「あ、これはゲームアイテムではないので【鑑定】はききません。わかりやすくこんな形にしてはいますが」

「というと?」

「とりあえず、持ってみてください」

 ふむ。玉を受け取って空にかざしてみる。すると、急に溶け出して僕の右手を包み込んだ。

「うわっ、なんだこれ!」

「大丈夫です大丈夫です。害はないので落ち着いて」

 右手を包み込んだ粘液状のそれは、僕の手に吸収されるように消えていく。

「何をやった?」

「今回のウィルスに対するワクチンプログラムになります。詳しい仕組みは置いておくとして、これでよっぽどのことがない限り影響がでなくなります」

「……フラグ?」

「……否定しきれません」

「………」

「………」

「で、これはいいとして、他にまだあるの?」

「えっと、はい。正式発表はまだ先になりますが、夏の期間限定イベントといたしまして、海水浴場が実装されます。期間は現実時間で一週間後の正式発表の後から八月末日まで。不定期でミニイベントも開かれます」

「海?」

「はい」

「ビーチ?」

「はい」

「セーフティエリア?」

「だけではないですけど、はい」

「水着だな!?」

「え、えぇ、まぁ、そうですねー」

「水着の入手方法は?」

「買うこともできますが、好みのものは【裁縫】で作られた方が速いかと。【付加】もできますし」

「ふはははは。よし!まずは材料調達だな!この際糸からいくか!」

 服の素材を糸から探すのは、神様にまでなった工房主さんからの伝統!

 別にカレーパンは用意しないけどな。

 しかし、糸。糸。ふっとドリーと視線がぶつかる。

「紡がれてみる?」

 びくっと体を震わせて汗をだらだら流し始めるドリー。ゲームならではの表現だな。

「なにか顔色が悪いようですが…」

「あいつはドMだから喜んでるだけ。っていうか、水着なんだから毛糸は不向きだろ」

「ああ、そうですね」

「でも、下に行ったら熱いから刈るだけでもしておくか」

「そのあたりはお好きにどうぞ。では、私はこれでー」

 よし。引きこもり脱出だ。気合入れていこうか。

 メンバーはトト、ドリー、マイスナ、プラムだ。久しぶりに街に出よう。


「さすがにみんないい装備にかわってるなぁ」

 久しぶりに来た始まりの街。プレイヤーの装備も変わっていれば、モンスターもちらほら、おそらく三段階目がいる。

 これはぐずぐずしていられないか。ベルトリス近くの森に行って糸系素材を探そう。

 【空間】スキルを駆使して移動する。

「サイトジャンプ」

 見えている場所にパーティーメンバーごと移動できる魔法。これを駆使して二日ほどの距離を二時間に縮める。

「ぜはぁ、ぜはぁ」

 MPが空になったけどな。MPポーション塩素超添加当社比500%増プール水幼女エキス入りを一息に飲み干す。

 さて。幼女成分はどこかな。

「マイスナはドリーの上。プラムは僕の頭の上。トト、全周警戒よろしくな」

 いざゆかん!魅惑の水着を手に入れるために!

 うん手に入れるべきは糸だってワカッテルヨ。


「水着にできそうな糸。んー、綿、麻、絹、羊毛」

 ちらっ

 びくっ

「羊毛」

 ちらっ

 びくっ

「絶対喜んでるよな、ドリー」

 こら、そこ。しれっと早足にならない。

「ポリエステルとか無理だからなぁ」

 防水と透け防止を考えないと。魔石を使った【付加】はできなさそうだしなぁ。使わなくてもできるものもあるけど、効果とか何段か落ちる。

「ぴぃ」

 プラムに髪の毛を引っ張られる。上か?

 太めの木の枝にさなぎがくっついていた。


シルクコクーン オス

パッシブ

変態       中。繭は糸同士が溶着し、繊維としては取れない。


おい。そのスペースはなんだ。

 まあ、ともかく、こいつははずれか。さくっと経験値に変えてしまうか。【木登り】の熟練度上げがてら、上まで行くか。

「せーのっ」

 がきん

 ……なんだと?鉈がはじかれた?

 確かに枝の上という少々不安定な場所だけど、まさかはじかれるなんて。

 それならば。

 繭に手を当て息を整え、しっかりとしたイメージを思い浮かべる。

 いや、そんなことしなくてもいいんだけど、気分だよき・ぶ・ん。

「浸透波!」

 浸透勁とかあんな感じの内部破壊技。

 繭が硬くてもこれなら効くだろう。なにせ熟練度200の技だ。

ぱきっ

 そう、ぱきって繭が割れて

ぶしゃーーー

 内容物が……あふれて僕にかかったじゃねーかよ、コンチクショウ。

 うえぇぇぇ。まごうことなきTAIEKIです。本当にありがとうございました。


さなぎの体液 品質:悪


さなぎの中身が変態する際に一時的に変わる液体。一部地域では食す。


 ドロップも体液でした。品質:悪なのは噴出したからだろうなぁ。

 ……気を取り直して次、探そう。


 あれから二時間余り。

 ≪おめでとうございます。従魔:ドリー がレベルアップしました。任意のステータスに2ポイント割り振ってください。≫


眠りひつじ:ドリー Lv:9 up


 HP:79 up

 MP:21 up



 STR:13

 VIT:13 up

 DEX: 7

 AGI:11 up

 INT:10

 MIN:15


 糸を出しそうな昆虫系モンスターを狙って狩っているけども。

 ≪おめでとうございます。従魔:マイスナ がレベルアップしました。任意のステータスに2ポイント割り振ってください。≫


フェルトパペット:マイスナ Lv:8 up


 HP:34 up

 MP:11 up



 STR:10 up

 VIT: 7

 DEX:11

 AGI: 8 up

 INT: 3

 MIN: 3


 糸はいっこうにドロップしない。

 ≪おめでとうございます。従魔:プラム がレベルアップしました。任意のステータスに2ポイント割り振ってください。≫


ピクシー:プラム Lv:4 up


 HP:17 up

 MP:20 up



 STR: 5 

 VIT: 5 

 DEX: 8 up 

 AGI: 6 up 

 INT: 6

 MIN: 6


 気が付けばかなり森の奥に来ていた。【拠点転移】があるから、迷うのはたいして心配していないんだけどね。

 辺りは木の密度が上がって、日が入りにくくなっている。たまに入る木洩れ日は、きらっと何かを光らせる。

「糸かな。木の間をわたっているってことはクモか。プラム。引っかからないように、ドリーの背中にいなさい」

「ぴぃ」

 うん。素直ないい子だ。

 しかし、視認しにくいせいか、どうもうまく【鑑定】がきかない。

「ぷう」

 トトもせわしなく耳を動かすけれど、何かを聞き取れてはいないようだ。クモは静かだからな。

「ぴぃぴぃぴぃ!」

 なにを騒いでるのかと思えば、糸を伝って降りてきたクモにプラムがさらわれていた。


バットイーター オス

アクティブ

コウモリを主食とするクモ。その他サイズの小さな動物も捕食する。


 うわー。プラムが頭から丸かじりされるのか。

「ドリー、クモに【睡眠誘導】いけるか?」

「めぇー」

 その場に突然柵があらわれ、ドリーが飛び越しては元の位置に、飛び越しては元の位置に戻る。

 あれか。羊が一匹、羊が二匹を地で行ってるのか。

 そのうちプラムの動きが大人しくなって、クモごところりと地面に転がる。

 何でも前がかかってるんだよ。

 とりあえず引きはがして、と。

「トト、かかと落としでぷちっと……」

 ドリーの陰に隠れるようにダッシュして、そんなにいやですかそうですか。

 ……【陰陽】で焼いてしまえ。

 …………そして糸は手に入らず、っと。

 糸玉くらいどっかないかなー。

 とりあえず夢の中のプラムは、ドリーの背中に戻しておこうか。


 ≪おめでとうございます。従魔:ドリー がレベルアップしました。任意のステータスに2ポイント割り振ってください。≫

 とりあえず20匹くらいはクモをやったけど、一行に糸をドロップしませんよ?


眠りひつじ:ドリー Lv:10 up


 HP:84 up

 MP:23 up



 STR:13

 VIT:13 

 DEX: 7

 AGI:13 up

 INT:10

 MIN:15


 おかげでドリーがクラスチェンジの季節だし。

 ≪おめでとうございます。従魔:マイスナ がレベルアップしました。任意のステータスに2ポイント割り振ってください。≫


フェルトパペット:マイスナ Lv:9 up


 HP:38 up

 MP:12 up



 STR:10

 VIT: 7

 DEX:11

 AGI: 8

 INT: 4 up

 MIN: 4 up


 マイスナのクラスチェンジもすぐだし。

 ≪おめでとうございます。従魔:プラム がレベルアップしました。任意のステータスに2ポイント割り振ってください。≫


ピクシー:プラム Lv:5 up


 HP:18 up

 MP:25 up



 STR: 5 

 VIT: 5 

 DEX: 8 

 AGI: 6 

 INT: 8 up

 MIN: 6


≪従魔:プラム は 簡易手当 を習得しました≫

 プラムは新しいスキルを覚えるし。

 いいことなんだけどね。

「しゅー」

 そしてプラムはずっと寝たまま。

「しゅー」

 さらには最後の戦闘が終わる直前くらいから、一匹のクモがドリーの毛にからまっている。

「しゅー」


ヒメグモ メス

パッシブ

小さいながらも立派な巣を作る。毒は持たない。


 ふむ。糸がドロップしないなら、糸を吐くモンスターをテイムすればいいじゃない。

「そんなわけでテイム!」

 ≪ヒメグモ のテイムに成功しました。名前を登録してさい。≫


ヒメグモ:アドネー Lv:1


 HP: 5

 MP: 3



 STR: 3

 VIT: 3

 DEX: 5

 AGI: 3

 INT: 3

 MIN: 3


スキル;糸 罠


「ステータス低っ」

 ≪召喚可能枠がありません。送還されます。≫

 せっかくドリーがいいレベルになったんだ。丁度いいから交代だ。

「てなわけで、トト。アドネー背負っていこうか」

「ぷぷう!」

 そんなに首を振らなくてもいいじゃないか。

「しょうがない。当面僕の頭の上でおとなしくしていてな」

「しゅー」

 さすがに顔文字表記はないな。

「たっぷり糸を出してもらうために、頑張ってレベル上げをするかね」

 ……そういえばテイム枠ってあといくつあったっけ。


スキル:テイム:509 [8/9]

    召喚:250

    格闘:202

    鉈: 360

    槍; 164

    陰陽:456

    筆記:1018

    写本:130

    写経:161

    読書:152

    鑑定:461

    識別:425

    解体:501

    ブラッシング:302

    愛撫:211

    高笑い:40

    爆笑:10

    引き笑い:10

    皮革加工:156

    付加:288

    ダッシュ:123

    隠密:22

    掴み:15

    木登り:13

    森林踏破:155

    降下:31

 木工:291

    水泳:74

    潜水:61

    耐寒:42

    祝福:262

    結界:251

    馬術:443

    儀式:261


 あと1しかない、だと。

 これは帰ったらブラッシングしまくらねばなるまい。



ワイルドボア オス

アクティブ

突進を得意とするイノシシ。肉はそれなりにおいしい。牡丹鍋、じゅるり。


 レベル上げを目標として一番に出会ったのがこいつだ。

 運営は食欲が行動の最上位なんだろうか。

 っていうか、こいつ、モフナーのカツ丼の材料じゃなかったか?

 モフナー。

 …モフナー。

 ……ああ、モフナー。

 ぐすん。

 ずばごん!

 ん?

 どうやらダウナー入ってる間にトトがしとめてくれたか。

「ぷう」

 うん。元気出すよ。

 ≪おめでとうございます。プレイヤーがレベルアップしました。任意のステータスに2ポイント割り振ってください。≫


プレイヤー:毛皮丸 Lv:16 up


 HP:201 up

 MP:182 up



 STR:20  

 VIT:14 

 DEX:18

 AGI:17 up

 INT:15

 MIN:13 


 ≪おめでとうございます。従魔:アドネー がレベルアップしました。任意のステータスに2ポイント割り振ってください。≫

早速きたな。


ヒメグモ:アドネー Lv:2 up


 HP: 7 up

 MP: 4 up



 STR: 3

 VIT: 5 up

 DEX: 5

 AGI: 3

 INT: 3

 MIN: 3


 これでよし。順番に行こう。

 そういえば、【糸】の出せる量とかあるんだろうか。

『糸:一度の食事ごとにVIT値mの糸を出せる』

 おおっと。ナイス。ナイス判断僕。

 つまり、今のアドネーは何か食べるごとに5mの糸を出せるんだな。

 よし。ガンガンVITを上げていこう。

 と、言いたいところだけど、今日はここでタイムアップだな。あたりが完全に暗くなってしまった。無理して戦い続けることもないでしょう。

 明日はここからの続きだな。


お読みいただきありがとうございます

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