閑話 路地裏のチーズケーキ攻防
ガキーンガキーンガキーン
それは始まりの街。
ガキーンガキーンガキーン
それは大通りを外れた路地の裏。
ガキーンガキーンガキーン
それは争う二人の少女。打ち合う二つの武器。
「いくら田吾作ちゃんといえどうちのチーズケーキを奪ったのは許し難し!」
「早い者勝ちだってわかっているでしょうにっ!」
従魔が参加しないプレイヤーオンリーのPvP。
それはスコップを片手に壁を駆け上がる農婦と
「それでも許すまじ!」
曲刀で民家の壁を切り刻む、狼と馬があきれた目で見つめる戦い。
プレイヤー同士が技をぶつけあうデュエルシステム。プレイヤーオンリー、従魔オンリー、スキル制限など、数々の設定を用いることができる。
「クラッシュウェーブ!」
「烈爪!」
地面に叩き付けたそれぞれの武器から、指向性の衝撃波がとびだし、中間地点でぶつかり合う。
「高機動型ファーマーとかどこを目指してるのよあんた!」
「ヒサゴちゃんこそ街中で砂漠迷彩とかあほじゃないの!?」
騒ぎを聞きつけ住民が集まってくる。
「このっ、真一文字!」
両脇の壁をえぐりながら横一線のかまいたちがとぶ。
「守って、サンドウォール!」
石畳が砕けその下の土も乾いて砂となり、真一文字から田吾作を守る。
「おいっ、誰か警備呼んで来い!」
「行ってくる!」
田吾作が距離をつめる。
「この無駄肉装甲をまだ増殖させるつもり!?」
ヒサゴの胸を握りつぶすように掴む。
「いったい!くそぉう、田吾作の胸部装甲はマイナスだからつかめない!」
「誰がえぐれてるっていうのよ!」
「あんたよ!」
その場で膝をつく田吾作。
「す、少しは、少しはあるのよおおおおお!」
慟哭するも現実は変わらない。
「そこまでだ!」
がしゃがしゃと白いプレートアーマーを鳴らして走ってきた騎士数名。
「警備隊およびGM権限において、破壊行為の現行犯で捕縛する!」
「な……」
「GM!」
連行され、牢屋に入れられる二人。
「さんざん街を壊してくれたな。二人には一週間の懲役と、街の補修費の全額弁済が科せられる。なお、懲役はゲーム内時間とし、ログアウト中は加算が停止される」
「そんなぁ」
「しばらくそこでおとなしくしているといい」
GMナイトが去っていくのを見届け、へたり込む二人。
≪称号:破壊工作員 を獲得しました。建造物破壊に補正がかかります。≫
「そんなのいらないーーー」
※運営からのお知らせ。デュエルシステムは次回メンテナンス時に実装されます。それまではお互いの合意のもとでPvPを行うにしても、建物等破壊されます。当然破壊行為で犯罪となるのでお気を付けください。
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