14モフ目
なんとか5月中にもう一話間に合った……
おはようございます。モフモフ度アップなトトのおかげで、つやつやな目覚めです。
トトさん。そのどことなく悟ったような表情はなんでしょうか。
「これはちょっとまずいかな」
少し思い立って装備の確認中。
思いのほか符の枚数が減っている。ハードマチェットの刃も欠けが目立つようになってきている。
「一度戻るかなぁ」
そうと決まれば海岸まで戻ろう。
トトとシンシナティを送り返してワタツミを召喚。
「ワタツミ。最初に海に出た洞窟覚えてるか?」
「きゅ~」
「そこまでよろしく」
「きゅ~!」
帰り道はワタツミにおまかせだ。
【潜水】を鍛えるためになるべく潜っていってもらおうか。
淡雪さん。頑張ってついてきてね?
昼過ぎにはパツダに帰ることができた。
「きゅきゅ~」
淡雪は見事にへばっている。
休憩なしで泳いできたからな。洞窟についてからはドリーを召喚して乗せてきた。
トトはまだ騒ぎになるだろうからな。現在の面子は淡雪、シンシナティ、ドリーだ。
「おいーっす、おっさん」
「おっさん言うな」
今いるのはおっさんこと大五郎の露店。ワタツミの背中にいるときにメッセージで相談してある。
「さて、実際のところ新しい鉱石が見つかっていないんだ」
「え、そなの?」
「ああ。ベルトリスの周りで掘っても見つからないらしい」
「ベルトリス?」
「なんだお前、まだ次の街に行ってないのか」
「あー、海に出てた」
「ああ。イルカをテイムしたってのはお前のことだったか」
「まあね」
「ふむ。第三の街まで行けば何かあるかもしれないが、攻略組はフィールドボスでてまどってるらしいな」
「なるほど。一当たりしてみるといいかな」
「悪いな、力になれずに」
「アイテムが出てこないならしょうがないさ。メンテだけよろしく」
「2,000Fだな」
「メンテ代と情報量でこんなのでどうだ?」
デッドストックになっていた以前のアイテムボックスを取り出す。
「これは?」
「アイテムボックス」
「!?」
「いい加減出回り始めてるだろ?」
「いや、まだまだだな。スキルの有効化に成功してない」
「ってことはやっぱり僕が一番乗りか。ま、とにかくこいつでやってくれる?」
「逆にこっちが払わなきゃいかんくらいだが」
「装備更新したお古だからな。気にせず持ってけ」
「じゃ、ありがたく」
大五郎はその場で砥石を使って研ぎ上げていく。
しょりしょりしょりしょり
職人が作業する音って聞いててテンション上がるよね。
種類の違う砥石を三つほど使い分けて仕上げられるハードマチェット。
うん。きれいな刃だ。
ぽーん
『回れ右』
モフナーからのメッセージだった。回れ右?素直にやってみようか。
「やっほー毛皮丸」
「おっす」
モフナーが他二人の女性プレイヤーと一緒にいた。
「装備の手入れ?」
「まあな」
「第二の街に行きたいんだけどちょっと詰まっててさ。一緒に行かない?」
「んー」
「予定あった?」
「まだ補給が終わってない」
「どこに買いに行くの?」
「買うのは道具屋だけど、そのあと生産しないとだめだから、一時間はかかるかな」
「なら終わったらメッセ飛ばしてくれる?」
「それはいいけど、後ろにいるのはパーティーメンバー?」
「あ、ごめん。紹介するね。【曲刀】使いのヒサゴちゃんと、相棒のウルフの大福」
「こんにちは」
トカゲ系のアバターかな?手足や首筋など、露出しているところに鱗が見える。
しかし、大福ねぇ。
「そして【スコップ】使いの田吾作ちゃんと、相棒のホースの長介」
「はじめまして」
女性で田吾作?またすごいな。
「しかし、【スコップ】なんてスキルがあったんだな」
「あたし、【農業】とりたくて」
「なるほど」
「ちなみに、二人とも私のいとこ。だから毛皮丸の事情もわかってる」
なるほど。あまり気を使わなくてもよさそうかな。
「じゃ、後ほど、ということで。おっさん、またな」
「新しい鉱石手にいれたら持って来いよ」
とりあえずの別れを告げてから、師匠の家へ符の補充に向かった。
符の補充が終わった後、メッセージを飛ばしたら門での集合になった。
「待った―?」
「ううん、今来たとこ」
お約束のセリフだけど、僕が待たせていた方な。
さて、戦力の確認をしよう。
ヒサゴさんと田吾作さんが同時召喚数1.モフナーが2.僕が3.
クラスチェンジ済みのトトがいるのもあわせて僕が最大戦力だな。
まあ、トトのお披露目をする気はないんだけど。
「で、どこで詰まってるって?」
「第二の街に最初に行くとき、必ずフィールドボスに遭遇するの。それが私たちじゃあ突破できなくて」
「なるほど」
まあ、ヴェロキュラプトルクラスが出ることはないだろうな。デビルホースレベルならなんとでもなるだろう。
「田吾作さん。長介で二人乗りできる?」
「えっと、出来ると思います」
「じゃあ、モフナーには僕と一緒に乗ってもらって、移動時間の短縮と行こうか」
淡雪の足の遅さは……ドリーに乗せよう。そうしよう。モフナーのとこの二匹も乗せようか。
どっかの音楽隊みたいな感じになってるな。
それは森を抜けてあたりのことだった。
「くる!」
それは森の茂みをぶち破って出てきた。
「いやー!やっぱり怖い―!!」
それは巨大な蜘蛛。
そう。モフナー達はクモが怖いがために体がすくみ、ボス討伐ができないでいた。
ヒュージタランチュラ メス
アクティブ フィールドボス
言わずと知れた毒蜘蛛。チョコ風味。
何が!?ねえ、何がチョコ風味なの!?
しかし、こいつはヒュージというだけあってデカい。体高がシンシナティとそんなに変わらないじゃないか。
モフナー達じゃなくても怖いな。
「ナウマクサンマンタバサラダンカン」
先手必勝。
「ぐえっ」
炎がタランチュラに当たる直前にモフナーに首を絞められる。
ちょっとちょっと!そこまずいとこ入ってる!窒息で死に戻りするから!
なんとかモフナーの手をひきはがし、ヒサ田吾ペアの様子を確認する。
あ、ダメだ。完全にかたまってる。かたまりすぎて長介が動きにくくなってる。大福は……タランチュラを攻めにかかってるな。
「モフナー降りろ」
「いやっ」
「降りないとこのままタランチュラに突撃かけるぞ」
「いやーーー!!」
今までかたまっていたのは何だったのかと思うスピードでシンシナティから飛び降りるモフナー。
うん。お宅の子たちに癒されてなさい。
しかし、これだけ人手があって半数が戦闘に参加不可とか。
願わくば初期マップなりのボスでありますように。
「チャージ!」
いつの間にか【槍】で使えるようになっていた槍を抱えて突撃する技。一人でも使えるけど、馬上の方が攻撃力があるようだ。
蜘蛛の腹を狙ったけれど、少し外れて右の第四歩脚を一本吹き飛ばす。
「キシャァァァァ」
どこから発声しているんだ。
ターゲットがこっちに集中したところで大福が左の第一歩脚を噛み千切る。
淡雪とドリー?
体当たりしてるけどまるで効いてないよ。
情報ばれるの覚悟でトトをよんでおいた方が良かったか。
いや、このままでなんとかなるな。
「キシャァァァァ」
タランチュラが叫び声を上げながら液体を噴射してくる。だからどこから声出してるんだよ。
溜と噴射のモーションが大きいから、その隙をついて側面に回り込む。
噴射された液体は地面にかかり、煙を上げながら浸食していく。
溶解毒かよ。装備的にもお食事中の皆様のためにも喰らいたくないな。
「シンシナティ。ジャンプであいつの体を飛び越せるか?」
「ぶるるる」
任せろってか。頼もしいな。
「よし、いけ!」
タランチュラの後方を大回りしつつ反対側へ。その勢いのまま飛び上がる。
「くらえ!」
タランチュラの真上で槍を構え、シンシナティから飛び降りる。
落下エネルギーをそのままに、槍が深く腹に突き刺さる。
「キシャァァァァ」
暴れて振り落とそうとするけど、槍を支えに耐える。
うん。タランチュラも結構モフモフしてるよね。
タランチュラでモフモフ。
……ありだな。機会があればテイムしよう。
っと、今は愛でる対象じゃない。倒さなきゃな。
まだ暴れるタランチュラ。今度はその勢いに逆らわず、むしろ利用して距離をとる。
「ナウマクサンマンタバサラダンカン」
距離をとりながらも攻撃するのは忘れない。
「ガアァァ」
大福が吠えてタランチュラにとびかかる。
お、うまいこと複眼を一個つぶしたな。
隙をついて腹の下に潜り込む。鉈を引き抜いて一閃。
腹を裂いたところでタランチュラのHPはなくなった。
大毒蜘蛛の糸 品質:優
ヒュージタランチュラの糸。耐電、耐蝕性に優れる。
大毒蜘蛛の爪 品質:優
ヒュージタランチュラの爪。中空で軽くて丈夫。
うん。まあ納得の素材かな。
≪おめでとうございます。従魔:淡雪 がレベルアップしました。任意のステータスに2ポイント割り振ってください。≫
ラヌーゴドラゴン:淡雪 Lv:9 up
HP:102 up
MP: 37 up
STR:12 up
VIT:10
DEX: 8
AGI:11
INT: 8
MIN: 6
≪おめでとうございます。従魔:シンシナティ がレベルアップしました。任意のステータスに2ポイント割り振ってください。≫
ホース:シンシナティ Lv:6 up
HP:90 up
MP:19 up
STR:21
VIT:18
DEX: 7 up
AGI:30
INT: 5
MIN: 5
≪おめでとうございます。従魔:ドリー がレベルアップしました。任意のステータスに2ポイント割り振ってください。≫
眠りひつじ:ドリー Lv:3 up
HP:32 up
MP:10 up
STR:11
VIT: 9
DEX: 5
AGI: 9 up
INT: 8
MIN:15
≪おめでとうございます。第二の街への街道が解放されました。≫
順調順調。
さて。いい加減、正気を取り戻してもらおうかね。
「おーい、終わったぞ―」
「蜘蛛怖い蜘蛛怖い蜘蛛怖い」
ダメだこりゃ。
「終わったぞー」
「蜘蛛怖い蜘蛛怖い蜘蛛怖い」
ふむ。肩を揺らしてもダメか。
「乳揉むぞー」
「さあいつでもカモン!」
うわぁ。一瞬で立ち直ったよ。ポーズ付きで。
言っておいてなんだけどひくわー。
残念モフナーめ。
「あ、あれ?何でひいてるの?」
「戦闘終わったのにいつまでも帰ってこないから、試しに乳揉むぞーって言ったら飛び起きてドン引き」
「隠してた本心ダダ漏れ!?」
「セクハラ防止コードは息をしているんでしょうか?」
おっと、残りの残念かける2も帰ってきたか。
「本人がセクハラとして受け取ってないから動いてないんじゃない?」
「なるほど」
「何それひどい!私の乙女心に対して謝罪と賠償を要求する!」
「はいはい。蜘蛛素材の割り当て多めでいいか?」
「「「全力で引き取り拒否するので全部持って行ってください」」」
おおう。そんなに嫌か。
糸で服作ったらいい感じになりそうなんだけどなぁ。
まあ、いいや。
なんだか疲れてから、第二の街ベルトリス、だっけか。街についたら宿取ってのんびりしよう。
探索から何からは明日だ。
お読みいただきありがとうございます




