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12モフ目

お読みいただきありがとうございます

 拝啓御母堂様。おはようございます。手料理が懐かしくなってきたこの頃、どうおすごしでしょうか。

 うん。そろそろ日本食が懐かしいです。携帯食料には飽きた。

 モフナーにあったら頼んでみるか。

 さて、気を取り直して探検だ。


マムシ オス

アクティブ

言わずと知れた毒蛇。湿った落ち葉の下などを好む

 本日の初遭遇はこいつでした。トトも気が付かなかったみたいで、いきなり上から降ってきてびっくり。

 毒を受けてはたまらないので、某開拓家な副業アイドルがやっていたように、そこらにあった木の枝で抑えようとしたけれど失敗。淡雪の方に向かっていったので焦ったけど、意外や意外。相性がいい感じにかみ合ったようで、首を淡雪がかじって終わった。


マムシの皮 品質:難


ヘビの皮。工芸品によく使われる。


 財布でも作れと?


 島を一周すること三時間。出てくる敵はすべてマムシ。そしてレベルアップがない。

 我思う。ゆえに我に経験値を!

 さすがにオーガクラスはいらないけど。

 別の狩場探した方がいいかなぁ。

 とりあえず洞窟のあった崖の上に行ってみようか。洞窟側を表と見たとき、裏手はちょっと急な山のような感じになっているので、崖を登るよりは楽そうだ。


「ひい、ふぅ」

 誰だよ山登りが簡単そうだなんて言ったやつ!僕だよ!

 思った以上に勾配がきつい。登山スキルとかないのかよ。

 とりあえずスキル一覧には載ってない。そもそも無いのか、条件がいるのか。

 そんなこと言ってる間に頂上に到着した。

「ふへ~」

 大きめの岩に寄りかかり、そのままずりずりと背中をこすりながらしゃがみこむ。

 ≪スキル:登山 が有効化されました。≫

 そんなことだろうと思ったよ!

「ぷう」

「きゅい?」

 不思議そうな顔をしてこっちの顔を覗き込んでくる二匹。

 疲れたのは僕だけですかそうですか。

「ふっ」

 気合を入れて立ち上がり、改めてあたりを見回す。

 うん。絶景かな絶景かな。スクショとっておこう。

 あ、今の僕って病院の医療機器から入ってるよな。外部保存容量ってどうなてるんだろう。

『はい。運営です。どうされましたか』

 気が付いたらGMコールしていた。

「運営さんは僕の状況わかってると思うんだけど」

『医療プログラムの件ですね。何か問題が発生しましたか?』

「いえ。スクショとかの外部保存容量ってどうなってるかなと。あんまり取りすぎて病院の容量圧迫しても悪いし」

『少々お待ちください。確認します』

 待つこと五分。さすがに運営には資料ないかな。医療プログラムの分、僕の情報は別扱いだろうし。

 そんなことを考えていると、目の前に青白い火花のようなエフェクトが発生する。まさかGMコール中に敵!?

 と思ったら出てきたのはキャラクターアバター。ただし着ている法被にでかでかと『運営』と書いてある。

「どーもー、運営のオラトリオでーす」

「あ、どーも」

 なんか軽いな。

「で、容量の件ですが、幼馴染さんが大容量のメディアを持ち込まれたそうで、十万単位くらいは問題ないようです」

「そうですか」

 モフナーめ。うれしいじゃないか。

 あれ?それだけならわざわざアバターで出てくる必要ないんじゃ?

「実のところ要件ついでに毛皮丸さんの様子を見て来いってーのが上司の命令で」

「は?」

「まあ、治療中をゲームの中で過ごすなんてのは世界的に見ても初めての試みでして。正直人体実験の側面がないとはいえないんですよ」

 そりゃそうだ。

「で、カウンセリングなんて大したものでもないんですけど、いい機会だからお話を伺いに―ってなとこで」

 ふむ。食事を訴えるにはいい機会かな。

「それはアイテムが手に入らないストレスなんかでも?」

「いやー、伝説の武器とかレアアイテムよこせっていうような要求にはちょっと応えられないです」

「いやいや、そんなのは現状いらない。欲しいのは食材っていうか料理なんだけど。そろそろ日本食が恋しくなってきた」

「あー、なるほど。確かにリアルで食べるってわけにはいかないですもんね。作れる可能性自体はあるんですけど、現状ですぐにってなると」

 悩み始めるオラトリオさん。そりゃ下手するとスキル熟練度を無視したりしていろいろやらなきゃいけなくなるもんな。

「すいません。ちょっと即答できないんで、上司に確認、もしくは会議にかけた後回答って形でいいですか?」

「わかりました。まだそこまでせっぱつまってないんで大丈夫です」

「では、今日のところはこれで失礼します」

 どこかおどけたように一礼するとオラトリオさんはエフェクト光を残して消えていった。

 久しぶりに現実世界の話をしたせいでちょっと気が抜けたけど、当初の目的を果たすとしますか。

 島影は北に一つ、東に二つ。距離はどれもそこまで変わらなさそうだ。

 ふむ。東から行ってみるか。

「ぷう」

 さて下山、というところでトトが警戒の鳴き声を出す。

 聞こえてきたのはブーンという、夏に耳元に来られるとうっとおしいやつ。

 やがて崖の下から出てきたそれは、

「でかっ!」


ジャイアントモスキート メス

アクティブ

巨大な蚊。子供くらいなら一刺しで全身の血液を吸い尽くす。


 虫がブーンと飛ぶから蚊、だったっけ。

 飛んでる以上、淡雪とトトには分が悪いな。ま、虫なら火に弱いだろう。

「ナウマクサンマンタバサラダンカン」

 毎度おなじみ不動明王の呪文。

 モスキートを正面にとらえるもぬるっとよけられる。

 おかしいな。蚊って飛行能力そんなに高くなかったはずだけど。

 蚊ににてるモンスターとして対処した方がいいな。意識を切り替えよう。

 今まで試したことはないけれど。

「ナウマクサンマンタバサラダンカン」

 符を五枚同時に引き抜き、不動明王の呪文を乗せて放つ。が、一枚に火がつかない。

 どうやら四枚が限界らしい。これが【陰陽】の限界なのか熟練度の限界なのかはわからないけれど。

 そんなことより、この散弾は効果的なようだ。MPはそれなりに喰うけど、目に見えてHPが減っていく。

「ナウマクサンマンタバサラダンカン」

 今、最後の一撃でモスキートのHPが消滅した。


ジャイアントモスキートの目 品質:並


蚊の目玉。中国料理では高級食材。蝙蝠の糞から集められる。


 こんなの剥げたけど高級食材より日本料理が食べたいぜ。

 ≪おめでとうございます。プレイヤーがレベルアップしました。任意のステータスに2ポイント割り振ってください。≫

 レベルアップか。強敵というよりはひたすらめんどくさかった。


プレイヤー:毛皮丸 Lv:10 up


 HP:115 up

 MP:72 up



 STR:17 

 VIT:13 up

 DEX:16

 AGI:14 

 INT:13 

 MIN:12 up


 ≪モンスターの同時召喚数が3になりました≫

 よし!これで楽になる。

 ≪おめでとうございます。従魔:淡雪 がレベルアップしました。任意のステータスに2ポイント割り振ってください。≫

 淡雪もか。マムシばかりだったけど、やっぱり経験値は稼いでたんだな。


ラヌーゴドラゴン:淡雪 Lv:7 up


 HP:81 up

 MP:32 up



 STR:10 

 VIT:10

 DEX: 8 up

 AGI: 9

 INT: 8 up

 MIN: 6


 なんだかHPが一気に伸びたな。

 まあドラゴンだから伸びてもおかしくはないんだけど。

 ≪おめでとうございます。従魔:トト がレベルアップしました。任意のステータスに2ポイント割り振ってください。≫

 トトも来たか。


ファーラビット:トト Lv:7 up


 HP:52 up

 MP:21 up



 STR:10 

 VIT:10 up

 DEX: 7 up

 AGI:11

 INT: 4

 MIN: 4


 とりあえず目標は達成したことになるのかな。

 さて、シンシナティを呼んで山を下るとしようか。


ステップニンジン メス

パッシブ

ダンスのステップを踏む人参。主に集団でコロニーを作る。辛子明太子味。


 下山途中にこんなのいました。

 辛子明太子味ってそもそも人参か?

「ぶるるるるる」

 そしてシンシナティが見つけた途端興奮しています。

 真横まで近づいてもアクティブになる様子はなし。そしてステップ踏んでる。

 ざっと三十匹はいるだろうか。

 ……今、二十九匹になった。

 豪快に咀嚼するシンシナティ。

 トトが食べるそぶりを見せないのは辛子明太子味だからか?

 あ、二十八匹。

 シンシナティの口周りが赤い。辛子明太子味なせいか普通の人参よりも赤みがかなり強い。

 うん。わかっていても軽くホラーだな。

 結局、戦闘、もとい、シンシナティの食事が終わるまで十分かからなかった。

「げぷっ」

 シンシナティを見る。

 目をそらされる。

 うん。満足はしたようです。

 ≪おめでとうございます。従魔:シンシナティ がレベルアップしました。任意のステータスに2ポイント割り振ってください。≫

 そういやシンシナティのレベルが上がるのはこれが初めてか。

 ごめんよシンシナティ。これからは意識してレベル上げしよう。


ホース:シンシナティ Lv3 up


 HP:71 up

 MP:15 up



 STR:21

 VIT:18

 DEX: 3

 AGI:30 up

 INT: 5

 MIN: 5


 ニンジンの後はそろそろお馴染みになってきたマムシしかでず、無事に上陸した岩場に到着。

 トトとシンシナティを送り返してワタツミを召喚。

 さあ、東の島に向けて出発だ。


 さて。淡雪が【水中行動】なるものを覚えたから、少し沖に出たあたりで泳がせてみたんだが。

「きゅ~」

 ばしゃばしゃばしゃ

「きゅ~」

 ばしゃばしゃばしゃ

 おぼれているようにしか見えない。

 プレイヤーの【水泳】とはまた違うのか?これ。

 とりあえず首根っこ掴んで引き上げてやる。

「きゅきゅ~」

「わっ、何しやがる」

 助けてやったのに暴れて海に逆戻り。

 もしかして泳ぎ(?)を楽しんでるのか?

 いや、いいけどね。

 とりあえずあきるまで遊ばせておこうと様子を見ていたけど、だんだん眠くなってきたのでワタツミに監視を頼んで少々うたた寝。

 目を覚ましたのは太陽が海に沈み始めるころだった。

 ここまでワタツミが起こさなかったということは、特に問題は起こらなかったんだろう。

 さて、淡雪がどうしたかとあたりを見回して、僕は目を疑った。

「きゅきゅい♪」

 なんということでしょう。そこには見事なドルフィンキックをきめて泳ぐ淡雪の姿があるではありませんか。

 寝ている間に何があった。そもそも骨格構造的にバタフライってどうやっているんだ。

 うん。僕はつかれているんだ。

「ワタツミ、出発しようか」

「きゅ~」

 淡雪をワタツミの上に引き上げようとするも、これを拒否。そのまま泳いでいくようだ。

 ワタツミの全速が出せないが、まあ、日が落ち切るまでには目標の島につけるだろう。


 結局、島につけたのは火が沈み切った直後だった。

 幸いにも砂浜だったので、ワタツミを放置してまだ手元が見えるうちにテントの設営を済ます。もちろん【結界】付きだ。

「さて、夜の布陣はどうするか」

 海の警戒はしたいからワタツミは確定。陸側の警戒にトトがいる。

 ふむ。淡雪を送り返してシンシナティを呼ぶか。

 この時間から探検はできないし、魅惑のモフモフブラッシングタイムだな。

 ワタツミにはどう頑張ってもブラッシングできないから、その間は自由時間にするか。

「そうときまれば、ワタツミ、しばらく遊んできていいぞー」

「きゅ~」


 はっ

 気が付けば空は一面の星空。

 ワタツミは帰ってきてるみたいだな。

 夜の間ゆっくりできるようにとシンシナティの馬装を解いた後、ブラッシングにかなり夢中になっていた。

 うん。反省はしない。なぜなら至福の時間だったからだ。僕にもシンシナティにも。

 さあ、今日のモフモフ分は補給したから後は寝るだけだ。


 おやすみ、みんな。


2015/5/15 ジャイアントモスキートのアイテムを剥ぐ表現が抜けていたのを修正

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