六十四話 禁忌の緋雫
前回までのバグライフ!(というか今までのあらすじ)
読み飛ばしてもたぶんおk
あらすじなんかいらねえ!俺は最初から読むぜ!って奇特な方がいましたらありがとうございます
よくわからないけど蟲に転生した男が少女と出会いなんやかんやで守護者をやることになったがそこに襲撃者が現れ村が壊滅しかけたところ神様から加護を受け覚醒、襲撃者を殲滅するが加護を受けたことにより蟲から神へと昇華したため村を去る。
いろいろと神様として慣れてきたころなんやかんやで守護者をやっていた村がある国に攻撃を受けていることを知り、うまいこと見つけた理由で国を滅ぼそうとしたらその国の元首は実は神の中でも危険人物としてマークされている人物―――楽園の蛇であったため私怨も含めて殺そうとしたら逃げられてしまう。国は滅ぼした。
それらの事後処理をしていたところ、突然神々が最初に創造した世界―――原初世界の魔物(普通に神々に匹敵する)の巨人が出現。若干なめてかかったところ巨人のスキルによって瀕死状態。
そのあと心の中にいる分離したもう一人の自分的なものと邂逅し、中途半端に残っていた人間性を捨てたら誤って理性まで捨てて体暴走。
眷属を食いかけたところで霊仙によって助けられ覚醒。
全身全霊の一撃を放つが巨人は死なず、だがなんとかオーディンたち神々の支援がなんとか間に合い一件落着。
そして魔神から破滅神にランクアップしたことで負担が多くなったため守護者をやっていた村の村長の娘に授けた寵愛を消すこととなった←今ここ
というわけで長くなりましたが始まります。
本当にお待たせしました。
そこは漆黒の世界。
真っ黒なペンキをぶちまけた様に何も見通せぬ闇の中に佇む三つの影。
一人は子供のように無邪気な笑顔で手元の機械を弄繰り回し、一人は無表情で、しかしその瞳に激情を宿しながら控え、もう一人は表情を伺うことすら拒絶するように無機質な白黒のマスクを身につけ佇む。
「人間は素晴らしい」
頭髪が全て白へと変わり果て、誰の目から見ても老いというものを感じさせる人間とは思えないほど若々しく、そして興奮を隠しきれない様子で老人が呟く。
「特殊な体質があるわけでもない。能力があるわけでもない。龍人に到底及ばない身体能力、獣人に劣る五感、エルフのような優れた魔力感知も膨大な魔力を持ち合わせているわけでもない。強いて言えば繁殖力が高い程度、そしてそれも多少程度でありゴブリンなどには敵わない」
それでも人間は素晴らしいと、老人は手元のカプセルに真っ白な粉と銀色の液体を流し込みながら呟き続ける。白い粉と混ざった銀の液体はぐつぐつと煮えたぎり、翠青黄色と目まぐるしく色を変えていく。
「我々人間の本来の力は歴史と経験。短命であるが故に、決して停滞することなき欲望。それこそが人間の強み、私はそう思うのだよ」
白の粉と銀の液体を詰め終わったカプセルを一つずつ機械にセットし、上から蓋を被せレバーを引きロックする。
すると機械は小さく唸り声を上げ、ガラスで仕切られた右横の部屋に真っ白な煙を吐き出し始めた。
その一連の動作を愛しげに眺めた老人は満足そうに頷き、暗闇の中であるにも関わらず真っ直ぐと目的の場所に向かい、壁に埋め込まれたスイッチをカチッと押した。
闇に覆われていた空間を無機質な光が次々に暴き出していく。
使用用途どころか使用目的すらわかりえない機械の数々、壁一面に収納された生物の肉片。
そして中央に掲げられるは―――腐った林檎に巻きつく蛇の旗。
「本当に、人間とは素晴らしい。己の僅かに劣る場所を他者により埋め合わせることで、本来の力の何倍何十倍の結果を引き出す。これほど不可思議で、不可解なことがあるだろうか!」
老人―――【楽園の蛇】は唇を吊り上げ、真っ白な煙が立ち込めるガラスへ張り付くように縋る。
瞳に激情を宿した少女―――隷属されたダークエルフはその笑顔に恐怖し、悟った。
常日頃から、悪とされる者の中でも最高位に存在すると思われた皇国の枢機卿は、老人を前にすればおままごとに過ぎなかった。
本物の悪とは、世界を食い殺す悪の頂点とはまさにこの蛇であると。
「我々の力では足りえぬ。幾度あの魔神と剣を交えようと、決してその刃が魔神の胸を貫くことはないだろう。ならば簡単なことだ」
口では卑下するも、愉快痛快、心底楽しそうに蛇は嘲笑う。
その視線の先にあるのは、肌色の巨山であった。
否、それは親指であった。
嘗て世界を恐怖の底に叩き落し、魔神によって滅ぼされた巨人の親指。
本来存在することすらありえないそれは、怪物に変化することなく原型を保ったまま存在していた。
「ああ、それにしてもあの巨人は強かった。流石、神々をもって強大と称されるだけはある。まさか剣が一本折れてしまうとは・・・」
確かに蛇の背後に控える仮面、その更に後ろには粉々に砕け散った剣があった。
だが、それは驚嘆すべきことだ。
あの巨人を前にして、たった一本の剣を生贄にするだけで体の一部を奪うなど、もはや人の所業ではない。
それはまさしく―――神の所業である。
「おっと・・・どうにも、時の残酷さというものを感じてしまうものだ。独り言が増えてしまった」
芝居じみた独り言が闇へと消える中、機械はただひたすら白の煙を吐き出し続ける。
白の煙に触れた巨山は真っ赤な肉を晒し溶け、徐々に徐々に部屋の中に満ちていく。
そして最後の肉片が血の海へと帰ったその瞬間―――魔方陣が展開された。
おぞましき鮮血の大海は竜巻に巻き上げられるように収束していく。
数十分か数分か経過した後、部屋の中央に出現した鮮血の大海を飲み干したものを見て、蛇は更に笑みを深めた。
拳ほどの大きさの宝石。
色は綺麗な真紅、しかし中央にどす黒い闇が渦巻いている。
見る目が無くても察することができるほどの邪悪の結晶。
膨大な魔力と、幾万の命をもって創られる伝説の魔石。
「名づけるならば【禁忌の緋雫】か・・・これほどの純度とは・・・!」
キラキラと眼を輝かせ、宙に浮かぶ緋色の涙を見つめる。
鍵はそろった。
触媒も、材料も。後は、実行するための舞台を整えるだけ。
「我々に不可能ならば、それを実行できるものに助けを求める。実に簡単な話じゃないか―――」
―――それでは、我々の救世主にご登場頂こうではないか。
闇の中で、再び蛇が嗤った。
ちなみにあらすじはしばらくしたら消します。
作風変わったかもしれないのはごめんなさい。流石に忘れました。
訂正
・機械郡の数々→機械の数々




