王の帰還〜あれ？！違くね？？〜

『......で、今こう言う状況な訳なのだが』

『こうなってるとは一体？』

んーー...正体不明の軍勢に援軍へ行くのを阻まれて

ちょっと押されてるっていう状況かな？

魔王軍、アイテールが復活した...その少し後

王国へと援軍へ向かうため、アイテール復活予定地へと向かって進軍していた折、急遽羽の生えた人間のような姿の何かに襲われて膠着状態に陥っていた。

軍の先頭で戦っているのはウォーカー

本陣でこうしているのはウーフィルとアスカモーだ。

例によってビネル、メデューサは本陣の守り

アルフィィオス、ギールは行方不明

そのほかの幹部は居残りである。

ー現在動かせる魔王軍の数は多くない

現在2万にも満たない軍で魔王軍は進んでいる。

そこにこの正体不明の軍勢だ。

周囲にいた知能の低い魔物を片っ端から殺しているこいつらを、一部の魔族軍が発見し現在交戦に至っている。

で、それが段々と集まって来て、目算で1万弱

現在交戦中だ

まずいな、個体差はあるが、基本的には一体一体の魔王軍は弱い。

ただの人間一万なら数で押しつぶせるが、この正体不明の敵、武装してるだけじゃ飽き足らずそこそこの実力もある。

極め付けは先頭でウォーカーと戦っているあのフードを被った奴だ。

手から触手を出し、ウォーカーの万力を封じ込めている

魔王軍No. 1の怪力を持つウォーカーが捕まるってことは、俺たちが捕まったら脱出不可能だな

仕方ない、俺たちも出るぞウーフィル！

『わかりました...指揮を取れるものがいなくなりますが』

メデューサにでもやらせとけ！

ウーフィルとアスカモーも前に出て、フードの男と対峙する。

せめて名前ぐらい名乗ってくれてもいいと思うんだがな！

問答無用で触手を放って来たフード男に、アスカモーがたまらず叫んだ

するとフード男は一瞬...動きを止め、それに応えた

『ブルーーーノだぁぁぁぁ！！！！』

それはまるで暴風のように声高に、ただ問いに答えた、それだけでも魔王軍、天使の両軍の動きを止めた。

『私は負けたくない！死にたくない！だから死んでくれ！私が生きるために死んでくれ！』

そう声量Maxで、フードの男は思い切りフードを脱いだ。

フードがめくれると同時に、ブルーノと名乗ったものの姿が魔王軍の前に現れた。

それは...蛸のような、イカのようなそれが２つ合わさったかのような顔をしていた。白と赤の肌が、陽の光に照らされてギラギラと輝いている。

足の多さは8本では止まらず、凡そ16本

その内の3本、蛸のような足がウォーカーを捕らえていた。

『イギルタメニゴロズ？アダリマエデバナイガ！！』

そう言って、ウォーカーは太い触手のうち、一本を掴んだ

『イギルダメニゴロス、ヨワイモノガツヨイモノニクワレル。アタリマエノゼガイダ！アタリマエダッタ、アノガタガクルマデハナ！』

思いっきり、16本あるブルーノの触手のうち一本を引きちぎる

自分の足の一本がちぎられ、ブルーノは悲鳴をあげた。

『そうだ！それを変えたのが魔王様だ』

そう言うと今度はウーフィルが、自慢の咆哮でブルーノの動きを止め、牙でブルーノの触手を食い破った。

あいつは弱いとみなされていた種族に可能性を見出した！

ドワーフに物作りの才能を見出し

戦闘がほとんどできなかった弱小種族の、メデューサのような一族から叡智を見出し

聖職者に対して無力だとみなされていたゴースト、幽霊の類に隠密行動を見出した

種族ごとに仕事を分け、それぞれの持ち味を活かす

人間がごく普通にやっていることだとヤツは言っていたが...それでも十分、アイツはすごい奴だよ。

『オマエノソノヤリカタヲミトメレバ、マタマゾクハモトニモドッテシマウ！ソレハミトメルコトガデキンノダ！マオウザマノヤッテキタコトヲムニスルコトハデキンノダ』

強者が全てを統べる時代は、もう終わった！！

これからは...新しい魔族の時代が始まる！

お前達を倒して、あの最悪の化け物を倒して。

『邪魔をするなぁ！私はもう失敗したくない！あんなものはもう忘れる！もう嫌だ、もう死にたくないのだ！』

ブルーノはそう言うと、ウーフィルが、アスカモーが、ウォーカーがちぎった触手が再生させた。

おいおい嘘だろ...

3体は抵抗したが、虚しく捕らえられ、身動きできなくなってしまう

『あぁぁぁ失敗しない！過去が俺を縛る！あの時のような失態はしない！だから殺さないでくれ』

泣き叫ぶかのような声を出しながら、ブルーノの声が戦場に児玉する

ふざけんな...こんなところで...

醜くあがきながらも3体は、空を見上げた。

太陽が隠れている。

否、隠していたのだ。1人の男が。

『終われんよなぁ？...やっぱり来て良かった。神器は借りるぞ、アスカモー！』

まさか...来たか、来てくれたのか！

あの声は確かに

そいつは、あの戦場に確かにいた

1対1で勝負を繰り広げていた

魔王と対峙していた小僧だった。

あのシンと戦っていた、神器使いだった。

.........

は...お前、誰？

『体はあの小僧と同じにしてもらったぞ！そちらの方が調子が良さそうだからな！』

え...だが

『復活したぞ！あの女神に呼ばれてな！限定的だが！我は！正真正銘現魔王！シン＝エルフェリアその人である！』