ライト王子の研究結果
(・ω・`)ゴゴゴゴゴゴ
やったか?!
それ、やってない奴ですねぇ!
『無事、アイテールに直撃か、砂煙で良く見えねぇが、効いてんのかこりゃあ』
......ライトは何も言わない、椅子に座り、ただ目の前に起きている現象を見続けている。
家臣達も、それを見逃すまいと砂煙を凝視していた。
魔導師達も、大砲を打った後の脱力感に苛まれながらも、視線を外そうとしない
騎士達も、私語を出すものは1人もいない
歴史が変わったと、そう感じるのに十分たり得る景色を目にしたからだ。
進軍前に、ライト王子はこういった
『お前たち魔導師の名は、初めて魔導大砲を起動したものとして永遠に残る!今、我が軍と共に来るものは歴史の生き証人だ!』
そう言った、事実その通りだった
自分たちの作った、運んだなにかが、友を、親戚を蹂躙したあのバケモノに命中し、今砂煙をあげて包まれている
殺せているのか、あの化け物を。ただの人間である自分たちが?
一片の音もない静寂が、ライト王子の軍を包んでいる。
風の音とともに、砂煙が徐々に晴れ始める。
一番最初に見つけたのは、この中で最も視力の高いライト王子だった
『き...効いてるのか?!うぉぉぉぉぉぉ?!効いてるぞウルフィアス!』
『おいおい、ここまで効くとはな!もう王都に逃げ帰る準備バッチリだったぜ!』
お前少しは自分の作ったものを信用しろよ...
いや、私も実地試験も終わってないものを使うのは心苦しかったけどな...
そう、確かに攻撃はアイテールに効いていたのだ。驚異的な視力を持つライトからは、化け物から血が吹き出し、触手もボロボロな様子がありありと見えていたのだ。
貫通こそしなかったものの魔導大砲の光線は確かにアイールの肌を焦がし、防御としていた触手を全て溶かし、
肉の全体の3割程度抉っていた。
ミミズの肉3割が抉れているという想像をすると難くないだろう。
そしてまっすぐこちらへと進んでいたアイテールはそのまま活動を停止している。自然と兵士の間から歓声が上がり始める。
呆然としていた魔導師たちが、目を輝やかせ始める。
ライト王子はというと
うぉぉぉぉぉぉ?!効いたのか、良かった〜
よし、よし!イける、この兵器は...あの怪物にも通用する!!
いや、もしやもう終わりなのではないか...?!
ウルフィアスですらも叫び、発狂している。
彼もまた、友がたまたま王子であったからこそ、偉くなる必要があっただけの、一介の研究者である。
ライト王子のサポートとしてのみ魔導ゴールムに関わり、砲身である魔導大砲をほとんどライトに丸投げしたとは言え、自分を心血を注いで作ったものが通用するのは嬉しいらしい。
『ふむ、いい攻撃でした。モデルとしてはエルザの翼につけた収納型砲身とアイデアは一緒ですね。
...足りない技術はコストと巨大な砲身で補ったと、素晴おらしい。「それ」が出るのはまだまだ時間がかかるかと思ってました。......少々甘くすぎましたね』
...どこからともなく、そんな声が、聞こえなかった。
その声は透き通るかのような、青年のような、翁のような。年齢を感じさせない挨拶。
そんな声が聞こえてきたのだ。
どこからとかじゃない、まるで自分の脳に直接響くかのような、そんな感じが...
そしてもう一度アイテールに...先程脳の中に直接話しかけてきた主に向き直る
完治している...だと?!
この大砲の一撃をくらい、なおかつ無傷で生存している。彼の軍の者たちから言葉も出ない。
あの傷を...一瞬で治すことができるってのか?化け物め!!!!!
逃げるぞウルフィアス!!全軍撤退の号令をだせ!
『もう出した!逃げるぞライト!エマ!』
『...えぇ、作戦は失敗のようね』
何を言っているエマ?
『次は勝つ!次はもっと素晴らしいものを、次はもっと威力の高い武器を、あの化け物が一瞬で消し飛ぶような兵器を作る!あんなミミズみたいな姿した奴に知能まで負けててたまるか!次は勝つぞ、ウルフィアス!』
あぁ、そう言うウルフィアスをライト王子とエマ、他重臣達は並び、ウルフィアスの空間魔法で移動を始める。
...第2王子の他の兵士は、迂回しながらも王都に向かうように指示を出した。アイテールが王都に到着するのには間に合わないだろうが。命は助かるだろう。
ウルフィアスが転移した少し後に、本陣のテントに向かって光の光線が放たれ始めた。
その光線は触手から出ており、砲身が付いていた。
野営地、柵などは一蹴され、魔導ゴールムでさえ踏み潰されていく。
ただ一筋、生命が最も多く集まる場所へ
アイテールは向かって行く
それはまるで災害であった。
あぁ〜ライト王子の20数年が無駄になる音ォ〜
なお無駄にはならない模様




