神との対峙/願い続けた復讐との対峙
視点が
クロ→魔王と移ります
少しずつ伏線回収していきます
『これは...何が起きてるというんだ......』
情報を少し説明しよう
魔王との決戦後、疲れ果て、何もできずに座り込んでいた私の目の前に、あの化け物が出現した。あれは天災と呼ぶべきものなのだろうか。どう言えばいいのかわからない。ともかく中央、そして今本陣を呑み込み、そのまま停止している。
『どういうことだ...魔王軍が新兵器でも出したとでも言うのか?!』
驚いて声を出す私の考えは、露と消えた。魔王は喰い入るように巨大生物を見つめている。完全に予想外だとでも言わないばかりに。そして呟くようにこう言った
『全身に光る赤き瞳、しかもアルフィィオスがワイバーンに見えるほどの巨躯、過去文献にあった...あれが...今...何故?!』
『魔王、知っているのか、あれを』
『大分前の話だ...復讐を誓った...相手によく似ている...過去文献とは少し違うが、あれが「この世界の人間たちが」昔信仰していた神...名前を...』
魔王が言おうとした言葉を、1人の何かが遮った。
『「アイテール」この世界で一番最初に思考したもの、の1人サ』
手をパチ、パチ、と鳴らしながら1人の男が歩いてくる。青と赤の仮面、黒と白の衣装、長いステッキのようなものを右手につき、靴を鳴らしながらこちらに近づいている。
『...誰だお前は』
私はそう、その男に尋ねた、魔王は首をあちらの方へと向け、あの化け物をじっと見ている。
『いやいや、どう自己紹介したものかナ、こんなモノだと言えばいいかナ?』
そう言うと男は仮面を触る、仮面そうすると仮面は、ゆっくりと人の形に変化し、ある1人の男の顔に変化した
『貴様は...モードレッドのおっさんの隣にいた...』
『あぁそウ、あの醜い醜い魔術師サ、中々よく演じれていただろう?「意識系と召喚術の魔法を操る魔法使い」だけど2種類の魔法を使えるぐらいで天才扱いされるとは、知ってたつもりだけド、人間の魔法のレベルって低いネ、否僕達と戦ってたメンバーが強すぎたのかな?』
まぁいいヤ、とそこでピエロの男は会話を打ち切る。
『待て、あれがアイテールだと?』
クロは必死で自分の記憶を掘り返す、確かグリーンが見ていた、この世界の神話...の内、勇者に撃退された神...のうちの1人がアイテールという名前だった気がする。
『だがおかしい、あれが神に見えるか?書物の神は人の形をしていたぞ』
それを聞いて、ピエロの男は笑いながら言う
『それこそ人間の傲慢でしョ、偉大な存在は自分たちに似なければいけない、たとえそれが邪神でモ「神は、自分たちに似せて人間を創った」とでも言いたかったのでしょウ。まぁ私たちが最後に現れたのなんテ、もうずっと前になりますかラ。廃れている可能性だってありますがネ』
そう言うと、ピエロは魔王にも話しかける
『え〜魔王サン?ひょっとして負けタ?いやまぁいいか貴方って彼女にあったこーーーーーーーおっと、危なイ』
気付けば、魔王は起き上がり、ピエロの首を撥ねようとしていた。ピエロは跳躍し、紙一重でそれをかわす。
『おっとと、ですよネ、話し合い通じませんよネ、では私は退散します、見たいものは見れましたシ』
道理である。ピエロは今、魔王軍と連合軍が戦っている中央に割り込み、話の中で自分が今虐殺を行なっているあの化け物と仲間なのをばらしてしまったようなものだ。攻撃されるのは当たり前だろう。
そう言うとチラッとクロの方を見て、ピエロは姿を消した。上空を見て少し笑っていたのは気のせいだったのだろうか
魔王は立ち上がっていた。神器により肥大化していた体は元に戻り、神器は外れていた。鎧は下のみつけており、元の魔王の姿になっていた。上半身の鎧は外れ、黒と銀色の肌がそのまま出ている。美しいと見えるものもいるだろう。
アスカモー、そう呼ぶと、鬼がこちらへとやってきた。あの様子、結構激闘だったようだな、ボロボロだ、気づけばディナスもこちらへと来ていた。こっちは少し余裕があるな。
『アスカモー、この状況では戦線の維持は厳しい。魔王軍は一時魔族領に撤退する。全部隊の指揮はお前がとれ、あとこれを持っていくがいい。』
そう言うと、魔王は神器...ツヴァイハンダーをぽいっとアスカモーに手渡す、それを受け取ったアスカモーは目を白黒とさせている。
『??これはお前の持ち物だろ?』
『もう必要ない、行け、被害が広がる』
『......っっ!あとでちゃんと説明しろよ』
そう言うとアスカモーは消えた。
静けさのある2人に戻った、場所は高台、これからどうすれば良いのか、
魔王軍が引いていく、ムサシたちが戸惑っているのが見える。魔導ギルド、一部の王国軍からの騎士たちは既に逃げ出しているものもいた。
私はどう動けば良い、途方に暮れようとしていたクロだったが、依然として魔王は平然としていた。
『さて...ようやく3人のみか、出てこいクソ神』
途端に空間が、揺らめいた。魔王と2人、戦っていた中には、他にも観戦者がいたのだ。ピエロの男が上を見ていたのは、それに気づいたからだ。
金髪、白いドレス、赤いハイヒールを履いたその女性は、魔王が神と言ったのも頷けた
『女神.........ということか』
クロは彼女を見てそう呟いた
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空間が揺らめく
中から美女が姿を現わす、やはりか、あのピエロが上を向いていたのはそれに気づいたからか。
当てずっぽうだったが、決まるもんだな
『お前か...?俺をこの世界へと呼んだのは』
今、我は武器を持っていない、首筋に手刀をさす、彼女は、悪びれる様子も、なんとももないように、気安くこう言った
『そうです』
......今目の前に敵がいる。
この地獄のような世界になんのためだか我を送り込み、それをのうのうと見ていた女が
憎い、憎い、筆舌に尽くしがたいほどに。
だが何故、この女は俺の前に首を晒す?殺されると知りながら。あのピエロも神の仲間だろう、この女と同類だ。神と名乗つくものは全て殺すと決めたが。
だが...だが
あの時、死ぬ間際に
声をかけて暮れたのは
お前だったのか...とも思えた
あの冷たい死から、地獄ではあったが救って暮れたのは
貴方だったのかーーーー
手刀をゆっくりと離し、我はあそこで倒れ、少しずつ動き始めたあの化け物へ向き直る
『今までのこと、感謝します。報酬は後で。』
クッソ、我がこれからやることも、全て見抜かれているか。
『これは返す、我にはもう必要ない』
そう言うと女神に神器ーファキシリンとトリスタンを投げて渡した。
これで何も憂いはない。
惜しむらくは、もう少し話をしたかったな、我と同じく異世界に来た、我を倒した小僧、グリーンと...
『グリーン、お前の言った通り、我は魔王だった。帰るのは残念ながらお前だけだ。』
ま、待て!どうなっているちゃんと説明してくれ!』
戸惑うか、それはそうだ。だが時間がない。被害は広がっていく。誰かが止めねば
『詳しくはそこの女神に聞け!じゃあな、グリーン。同じ日本人に会えて良かったぞ』
そう言うと魔王は高台から飛び降り、一気に化け物との距離を縮めていく。
『我が願いに応えろ...ケイル』
そう言うと我の足場に一頭の黒い馬が出現した。
その馬はスケルトンのように骨は避けているのだが、体中に鎧が綺麗に着込んである馬だった。
『魔王様?私のような老馬でよろしいので?』
『......構わん、ガントレットはあるか?』
『ここに、我が契約者よ、忠義を示さん』
そう言うとケイル...と名乗った馬は加速していく。
ミミズのような体の全身に目が付いているその化け物の体を、馬の速さと合わせて、目一杯ぶん殴った。
その拳は、神器を捨て、全てをなくした男が持つ、最大級の一撃だった。ゴブリンとして、魔王として長い時を生きてきた記憶の全てだった。
その拳は硬い肌をえぐり、目から血を噴出させる。
それに反応する形で、目がない部分から大量の触手が出現した。うねうねと動き回りながら魔王を掴もうと触手を伸ばしてくる。
それを全て避け、かわしていく。
触手を全てかわし、馬に乗り直して魔王は言った
『見せてやろう...本気の我の戦い方を...』
怒涛の展開!
付いてこれるか?!




