終局の唄
「終わったな」
『あぁ、つーかれた!!』
夕日が落ち、星の瞬く空を見て僕ーー松岡輝赤はそう呟いた。グリーンは大の字になって寝込む。
後ろからは軍勢の足音が聞こえてくる、遅れながら援軍に来たのかな?いやもう終わったけどね。向こうからも創世の四聖が来ている、いやもう終わったってば。
アヌビスは倒した、僕の剣は間違いなくアヌビスをその姿のまま吹き飛ばした。多分影も形も残っていなかっただろう。だが、その後ピンクが回復魔法を使って怪我をした面々を治療したかと思ったら、気づけばアヌビスさんがうつ伏せで地面に突っ伏して寝ているのを見てビックリしたな。
ピンクが回復させたのは間違い無いけど、なんでだったのか聞く必要は無いみたいだ。ピンクは本当に頭がいいな。
まぁすぐに消えたんだけどね、1柱に呼ばれたってことなのかな?そう思っていたら、ウルフィアスさんとアイテールが来て、アヌビスがこちらに来ることは無い。それだけ言って去っていった。
ということは、あれで正解だったのだろうか。
アヌビスさんという存在、それに束縛されていたありとあらゆる概念、呪い、呪縛、契約などを全て切り落とした。その際に悪魔大帝がアヌビスと交わした契約を見せてもらったが、はっきり言っておぞましいものだった。
二度と見たく無いな、ブラック企業のセールスマンより遥かに性質悪いぞ、あれ。
『終わったか、あ〜この鎧ももうダメか。使い捨てみてぇな扱いは少し傷つくんだけどなぁ」
グリーンの方を見ると、グリーン自慢の鎧がボロボロと自壊していった。アヌビスの攻撃を最前線で受け続けていればそうなるって。
ピンクは、クロとホワイトと、アヌビスさんを治してやっと魔力が尽きたらしくへたりと地面に座り込んでいる。戦闘中、ずっと背後から回復魔法を使用してくれたのは感謝しかない。
「終わり良ければ全て良し、グリーン。また領地に戻って領主生活です。儂もお手伝い致します。」
『あぁぁぁ内政チートなんて糞喰らえだ!!!」
イエローとグリーンはこう言って叫んでいる、この2人はすごいいいコンビになったと思う。グリーンは領主として、イエローはその影として。これからもグリーンは自分の我が儘にコレットを付き合わせ続け、イエローはグリーンの側で好き勝手やるのだろう。
他国や政治の思惑なんて知ったこっちゃ無い、好き放題に生きていくのだろう。この僕にとってはおもちゃ箱みたいなこの世界で。
「じゃあ、私たちも一度グリーンの領地を見てみるか!」
「そうね〜アタシもグリーンが作った街が見たいわ♡」
「さんせーい!!」
クロと、ピンクとホワイトも、グリーンのところに行くみたいだ。クロは自由に、ピンクは自ら束縛を選んで生きてもらった。ピンクは随分と大人になったように感じる。泣きっぱなしだった様子が嘘みたいだ。
ホワイトとクロは、うん変わってないな。
「で?レッドは?どうするんだ?」
誰かが後ろでそう言った。
うん
そうだな
僕はーー
「帰らなきゃね、僕には僕の場所がある」
『やっぱか、まぁまた入り用になったら声かけるわ!転移装置もまだまだ改良の余地があるしな!』
「いつでもお帰りをお待ちしておりますな、用意はしておきましょう。」
「おう!私はちょっと戦いたかったんだけどな、仕方ないな!」
「あらぁ〜もうちょっとゆっくりでもいいのよ♡」
「もう少し、いれば?」
「ありがとう」
気づけば礼を言っていた、だけど、この世界は僕にとって居心地が良すぎて。
この世界にとって、僕は客人なんだと言うことに気づくには十分すぎるほど心地が良すぎた。きっとこの世界なら僕はなんでもできる英雄なのだろう、だがこの力は僕が努力して手に入れたものでは全くない。
現実は厳しい。
僕の両親がいないように、僕の性質により長年僕が苦しめられてきたように。
だからこそ
「僕は、元の世界に帰るよ。叔父さんも気になるし、ね」
『真面目すぎんだろう!!』
グリーンからの鋭い突っ込みが入って僕たちは笑い始めた。
その笑い声は荒野の中に響き
グリーンは、伝説となった。
グリーンの伝説は、この世界にいるあらゆる人間がその名を知ることになる。レッド以下、他のメンバーが行った伝説は時がうつろうにつれグリーン伝説の一端に吸収されてしまった。
世界はまたいつも通りの循環を始める、ウォルテシアの実質的な弱体化により、魔族と人族の融和政策はさらに加速を始め、魔族と人族は実質的に融合した。
魔族領と帝国は融合を果たして魔帝國とその名を変え、議会政治を採用し、民主政治の先駆けとなる。
オワリ国はそのまま観光に特化した国として反映する。
そして、僕は、生きている。
書けなかったことが山盛り...
創世の四聖の本気
悪魔勢全員の名前と設定
魔族勢の奮闘
その他設定や伏線の回収etc...
ですが、ここを1つの区切りとします!
次回、最終回!!!




