2人の英雄
最近他の視点書きすぎじゃない?という声を頂いているのですが、誰が喋りたがってるのとか皆様わかりづらいですか?良ければ感想で一言お願いします。
本編第2弾、やっとレッドサイドです
「さぁ、いいぜ?どっからでも来いよ」
エリアド荒原、荒原という言葉通り、この大地には何も無い。あるのは外部から来た僕とジャンさんのような人間だけで、それ以外にいるのは荒れちに相応しい動物や弱い魔物だけだった。
そんな場所で、僕は自分の武器であるウェザリアを片手に、友人のジャンさんと向かい合っている。
僕とジャンさんが会ったのは3年前、いや僕からしたら3ヶ月前なんだけど、ジャンさん基準では3年前、戦争という過酷な環境の中で、仲間と共にそれでも前向きに生きるジャンさんには確かに強さを感じた。
だけど今、そのジャンさんから感じるのはそれとは真逆の感情だった。
朗らかさは消え、冷酷な面が剥き出しになっている。
明鏡止水、という言葉を体現しているような静寂の中で、ジャンさんだけ時が止まっているかのような感情に襲われる。
こうなったのはほんのさっきの話だ。
先程まで、僕と手合わせをしようとだけ言って歩き出したジャンさんをただ追いかけていた。
そして、「ここらでいいか」と言った途端にこうなったのだ。
恐るべき変貌である。
「どうだったレッド君?冥界は」
「・・厳しいところでした、人が死んだあと、全て例外なくあそこに行くのだとすれば、それは退屈すぎる」
「そうか、しかし俺達は戦いにおいて死を恐れない。それは冥界が素晴らしい場所だと信じているからだし、そう教えられてきた。」
「あぁ、普段の冥界は僕は知りませんからね。グリーンがメチャクチャにした後の冥界なので」
「は?グリーンの奴、俺たちの安息の地をグチャグチャにしやがったのか?あの野郎、まぁいい。俺が知りたいのは、俺が冥界で通用するのかってことだ」
「この雰囲気なら十分すぎますよ、その剣も。」
ジャンさんが持っていたのは、まぎれもない神器だった。しかしその光は淡い。
神器は適合しているが、弱いといった典型である。
ちなみに神器には適合するかどうかが最低限で、それ以外にも適合率が高いか否かも確かに存在する。僕は全ての神器に適合するらしいけど、例えばベリアスとその神器はベリアス自身の思いが産み出した神器だけにその適合率も高く、その神器の真価を発揮しやすい。
ジャンさんの場合とは逆だ、全く噛み合ってない。
「これは、戦乙女と言ってな。あるジジイから借りてるんだ。あのジジイを超えた時、俺は確かにこの神器に認められる。」
そうか
ジャンさんは、認められたかったのか。
「だから貴方はこんなに強く・・」
「あぁ、久しぶりに死ぬほど特訓したよ。まぁ1日たった一回の素振りだ。極めし一刀、そこから更に未来へ。光を超え、時をも超える。我が一撃だ」
「実験台としては役に立てないかもしれませんよ?」
「へぇ、どっちの意味かな?」
「ご想像にお任せします」
この自信、恐らくジャンさんの剣は抜刀術だ。いや実際には違うがかなり近いと言ってもいい、ジャンさんは一回、一刀に全てを賭けている。それは裏を返せばそれを躱したりされれば勝てないということだ。隙だらけになるということを指す。
「抜刀術ですか?ジャンさんの剣は」
「試してみろよ」
「試した瞬間あの世行きになりそうですがね」
一歩、前に踏み込む
頬が殺気でキレそうなほどにピリピリしている気がする、ここから先は、間違いなく死地だ。とそう勘違いさせてしまうほどに。
正直、神器じゃなくて木刀でやりたかった。そんな半端な思いを振り切る。
そんな半端な気持ちでここに踏み込んだら死ぬ
死にたくはないので、小細工を弄しよう。ハエが止まるかのような遅さで、試しにゆっくりとしたスピードでジャンさんに石を投げてみた。
ある一定の、その範囲で石は忽然と消えた。
「やべ、間合いがバレた」
「いや、今のもう少し長くできますよね?間合い」
「は?それもバレるのかよ、恐れいったわ!」
「微妙でしたがね、剣速もまだ早くできるでしょ?」
「マジかよ」
「無理に遅くしようとすると返って不自然ですよ。」
僕が放った、ジャンさんの間合いを図るための一石、それをジャンさんはかなりの速さで、しかしながら僕にバレないように少しだけ狭く間合いを見せた。
間合いの狭さは技量の差だ、もしそれに気づかずに僕がジャンさんと戦えば、僕は袈裟斬りにされていたのかもしれない。
今両者が見せたあまりに高度な駆け引きに気付くものはこの世界に何人いるのか。
まぁどうでもいいけど
◇◇◇◇
「かぁっ!戦った戦った!」
「つ、疲れましたよ」
僕とジャンさんの試合は終わった、一回勝ったら「もう一回!」とか言い出して中々終わらなかった。
「勘弁してください、ジャンさん」
「いいじゃあないのぉ!俺も最近相手が居なくてな、苦労したぜ!」
ジャンさんは地面に大の字で寝転がりながら、いつも通りの大笑いを見せる。
「俺は、合格か?」
「え?」
「連れて行ってくれないか、冥界へ。どうしても決着をつけたい相手がいるんだ。」
「勿論ですよ、ジャンさん並みの強さの人だ。どっちにしても次の冥界へはパンドラの面々も何人か行くとか言ってたし、心強いです」
「ケッ勝者の余裕感がすげぇな」
「そんなこと無いですけどね」
ゆっくり笑ったジャンさんから伸びた手と、僕の手が重なった。ゴツゴツした、硬い手だ。この世界で、恐らく底抜けにお人好しで、とてつもない財力を持っている男。
2人の英雄の邂逅は、この世界に、確かな希望を与えていた。




