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8章 猛々しく!

ここから本編となります


ついに最終章!

「サリエリのように静かに、バッハの如く横柄に!ベートーヴェンのように苛烈に!モーツァルトのように天才的に!ショパンのように美しく敵を蹂躙してみせよう!」


明らかにテンションの高い男が、最後の1人を殺した。その男は、明らかにハイになっている。


「あはははは!メネラウスの法則、ケイリーハミルトンの法則、パスカルの法則!いやいや、全て勿論美しい!


アヴァロム、地上の、エリアド荒原と海洋国家ウォルテシアの狭間にあるこの大地は血の海に沈んでいた。


普通なら魚が泳ぎ夏には子供達の遊び場となっていただろう川は真っ赤に染まり、そこには人が虚ろな目をして浮いている。


この瞬間、ウォルテシアの兵士は文字通り殲滅した。通常戦争で殲滅なども言っても言葉だけで、実際は3割程度だったりする場合も多い。


しかし、これは文字通りの全滅であった。少なくともこの場には生きているものはいないだろう。


「品の無い殺し方だねぇ、あれ、酔わされてる?」


「その通りだろうな。アイツ酒に弱いとは聞いていたが、流石に弱すぎないか?アヌビスからコップ一杯の酒貰っただけだぞ?アイツ絶対酒で苦労してるな」


「・・どうでもいい。アイツが殺してくれるならなんでもいいわ。私は寝る、興味がない」


もちろん、こんな話をしている3人とて、先ほどの生者はいないと言う言葉に当てはまる。何故なら3人とも死人なんだから。


1人は壮年の男だった、右手には長槍を持ち、それをクルクルと回して遊んでいる。


黒髪黒目という、この世界でも一般的な容姿をしているが、顔は昔はそれなりにイケメンだったのだろうと感じさせる風貌をしている。


この世界にはない青を特徴とした龍を形どった鎧をつけており、頭に薄い青色の宝石がはめ込まれた装飾を被っている。薄い髭を、左手で薄く触る姿は鎧の神々しさと相まって絵になっていた。


もう1人は、長身である壮年の男より頭3つほど抜けた大男である。


人間?と思わずはてながついてしまうほどのその大柄な体躯に、明らかに異常発達した腕と犬歯が鋭く光る。真っ赤なマントが、ウォルテシアの夕日に映えているが、逆にその光を飲み込むほどの闇を体から放っていた。


闇と言うよりは、闇の形をした人といえば良いのだろうか。ともかくそんな闇が、影のようにしつこく、守護霊のように曖昧に男にまとわりついている。


最後に、既に寝てしまったこの少女は、そんな彼らの持つようなただならぬオーラとはまたかけ離れた姿をした少女だった。


目立つ白赤のゴスロリ服を、特に違和感も無く着こなしているその少女は、恐怖を形どった仮面を被り、足に枷をつけて眠りこけている。


「おいおい〜本当に寝てしまったよ。どうします?アスガルドさぁん」


「アヌビスが来るまで休むしかあるまい、シリュウ。我々にとっても不本意な戦いだ。特に興味が無いと言っているコイツの気持ちも分からなくも無い。」


ちなみに、壮年で長槍の男がシリュウで、大男がアスガルドと呼ばれている。


「華華華、終わったかの」


「あ、アグレムさん。お疲れ様です」


「気にせんとも、一番歯ごたえのありそうな奴は貰ったからの」


「神官まで手にかかるとは、アヌビスも等々ヤキが回っち待ったみてぇだな。」


アグレムがひらりと降りてきたのに、アスガルドもシリュウも反応する。シリュウの機嫌がいいときは、自分の好みの相手と戦えた証拠だ。


「いい相手じゃった・・惜しむば、誰かの為ではなく、自分の為に行う武を鍛え上げればより良かったが。惜しい、弟子にしたかったところよな。いかんいかん、話がそれる。アヌビスが戦略的に明らかに遅れをとっているのは事実じゃな」


「そりゃそうでしょう、そもそも、あの男があそこで酔っ払って暴れてる時点でおかしいでしょう。素面なら最強の戦略家かつ謀神、単純な戦闘技術ならともかく、戦術面ならアイツが世界最強だ。下手すれば元の世界の我が主君に仕えた軍師をも凌ぐかもしれない。」


「まぁ、その辺が悪魔大帝も限界だったんだろう。俺たちはいずれもアヌビスの戦争を拒否して冥界に引きこもってた連中だ。干渉されないようにオリジナルの結界や呪術を使ってな、かく言う俺もアスガルドの悪魔の技術を使って不可侵を貫こうとしたが、この通りやられちまっている。」


実際、悪魔大帝が彼らに施した束縛はアヌビスという絶対強者がいるのが前提として扱われている。彼らと言う規格外の上位神クラスの面々を少ない制約とは言え御し切れているだけで悪魔大帝の強さは知れると言えるだろう。


彼らが出された束縛は、アヌビスの人類鏖殺の協力だ。具体的な方法などは一因されているが、基本的にアヌビスの指示には逆らえない。


故に、彼ら5名はしたくも無い人殺しを進んでやらされているという訳だ。


元々彼らはアヴァロムの英雄だ。


そのプライドが許さず、自殺などの手段を取ろうとしていたが、そこは大帝抜け目無い。


自殺防止、仲間内の争いなどを制約に盛り込んだ。いや、そう言った自殺などを入れないような制約を入れたからこそ、少ない制約しか入れられなかったと言うべきなのだろうが。


「オジサン的にはね、このメンツ揃った時点で負ける可能生って無いのよ。なんなら神々全員集まってもこの面子なら勝てる。」


「・・生前やってみたかったものだな。俺的には、アグレムと手を組んでいると言うこの状況そのものが信じられないのだがな。」


「華華華、右に同じく。戦友とは、なるほど、全く楽しめぬ戦いではあるが、意外なところで楽しみを見つけたわ」


「さて、今世の英雄は、この危機をどう乗り越える?」


「今回の英雄も中々面白いらしいからね、まぁ当事者だけどオジサン達は実際傍観者みたいなもんだ。精々踊らせてもらおう。」


ひょうきんにそう言ったシリュウは、槍を肩に持って歩き出す。


他の面々も、糸に繋がれた操り人形のごとく勝手に進み始める。その目は、先を見つめる。


人がいる方向へ


戦の匂いがする場所は


指示が出たのだ


アヌビスからの指示が。


かくて英雄達はエリアド荒原へと歩き出した。その足取りは、未来に繋がるか。

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読んでくれてありがとうございます! これから全10章、毎日投稿させていただきますので、是非よろしくお願いします @kurokonngame くろこんでツイッターもやってますので、繋がりに来てください。
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