閑話 誰か、きっと
「そもそもさ、良くこんな城急に作れたよね」
僕は、このエリアド荒原という寂れた場所にある、城と言っても差し支えない砦を見て、そう呟く。
この城は、土と石で作られた城だ、にも関わらず堅固だ。エリアド荒原、エリアド城・・っだっけ?
グリーンの作成した建築系発明は、クレーン車などある程度は存在するが、それでも元の世界でさえ、家を作るのにかかる時間は7ヶ月ほどかかるらしい。
それに比べれば、冥界軍が攻めてくるのって・・あれ?とんでもなく無い?
「そりゃーこの世界には魔法があるからな、魔導建築学って言うらしいぜ」
「グリーン、そっか、魔法があれば城を作ったりするのも楽ちんかぁ・・」
気づけば、グリーンが来ていた。グリーンはこっちにおにぎりを放りながら続ける。
「あぁ、まぁ勿論オレの作ったクレーン車も活躍してるっちゃあしてるが。本当にすげぇもんだな魔法は、この世界は政治のシステムや戦術論、房中術。こと生存に関連することの練度が凄まじい。この城作りもその1つだ。」
「・・今さりげなく房中術って言ってたけど、突っ込んだ方がいいのかな」
「オレとコレットの話でも聞きたいのか?」
「一切聞きたく無いよ!?」
からかい楽しんだのだろうか、グリーンは再度目を細めながら、真面目な話に戻った。
「魔導建築学、基本的には戦場で弾除けのできる陣地作成などを引き受ける時や、戦場以外でも日常的な民衆が暮らせる場所を作ったりする、主に土系統の魔法使いが学ぶ学問だな」
この世界にも五大元素というものは無論存在する。
そして、この世界で魔法を使える人間がいるのは一握りだという話をしたと思うが、その中でも五大元素、つまり地、水、火、風、空の魔法を使用する人間が多い。
地・・土魔法、鉄魔法、錬成魔法、
水・・水魔法、毒魔法、霧魔法
風・・風魔法、陰影魔法
空・・空間魔法、重力魔法
火・・火魔法、爆発魔法、自爆魔法
特殊・・回復魔法、転移魔法(空間魔法と似ているが、世界線を超えることができるという点で似て否なるもの)
こんな感じで、中でも土はかなりの使い手であれば陣地作成など、戦場において短時間で砦などを作れるということで重宝されていた。
「こんな感じで、魔導建築学は国全体でも30名ぐらいしかいねぇ。だからこそ精鋭でかつレベルも高い、そんな奴らが連合して世界各国から惜しみなく集まったんだ、そりゃ短期間で城ぐらいできるってもんなのさ。」
「なるほどね、エリートってすごい」
「特定の分野だけ、例えば内政に関することだって。特定の分野がとてつもなく突出してるなんてケースがこの世界はとてつもなく多い。そして、それを成している人物がいる、そんな奴らには1つの共有点があった」
「何?」
「まず、出生が不明なこと。大体こういう奴らはどこから現れたかわかってねぇ、最低でも15歳以上ぐらいから急に歴史の表舞台に現れる。2つ目に、そんな奴らが行うことが、この世界ではあり得ないほど非常識なことだ。」
無論、転生者が無条件で英雄になれたなどということはグリーンは考えて無いだろう。歴史の表舞台に出なかった人もいるだろうし、ワザと出てこなかった可能性だってあるのだ。
むしろ、表舞台に出ることなく消えた人間も多い。しかし、この国の偉人伝を見ると、転生者と見られる人間は非常に多いのだ。
そう考えると、この世界に一体何人転生者が連れてこられたのか。
そして、グリーンが来た今までに、少なくとも公式的には元の世界に戻る方法は確立されれていなかった。
「百は下らないんだろうな、無理やり連れてこられたり。まぁ俺たちみたいに死にかけた連中かも知れねぇがな」
グリーンは空を見ながら、漠然とそう呟いた。
この世界には、どのような手段か、僕と同じ世界の転生者が結構いる。
パンドラの箱の面々の中にもいたし、前魔王シンもその1人だった。彼らはどんな思いでこの異世界を生きたのか。
僕は単純に、その答えを聞きたいと、思っていた。
◇◇◇◇
「ううん?誰かに噂されている気がするな」
本官はこの明るい世界で、1人そう呟いた。
全く、本官以外は戦闘民族のような野蛮人で心が痛む。目の前でまた、本官に向かって攻撃を仕掛けていた魔術師がまた1人胸を貫かれて倒れる。
やったのは本官だ。
やれやれ
阿鼻叫喚の地獄絵図だ
人が死ぬ
戦場では人が死ぬのだ
まぁそれ自体は仕方ない、戦場に至るまでのプロセスはおおよそ納得できない理由ではあるが。
まぁ、戦闘民族のような野蛮人に成り果てているのは、本官も同じであるしな。
そもそも1人ずつ殺していくというなんとも非効率的なやり口、もし本官が本気で人類を皆殺しにしようとするならばもっと上手くやっていたろうに。だが本官は既にこの世界に興味はない。
誰か殺してくれないものか、
そんなことを考えているうちに、向こうでアグレム老が上空にいた手練れを一撃で葬った。
あーあ、勿体ない
あの男がこの集団の中で最も強かっただろうに。
人的資源は有効に使わねば、遠目で王を逃していたあたり、未だに王政が蔓延っているのかこの世界では。
どし難い、王政は優れた王が統治するが故に正しく機能されるものだ。あのような若造がただ君臨しているのみでは意味がない。
優秀な副官がついていれば話は別だが?
「終わったようだな」
気づけば我がご主人の前に着いたようだ。
勿論皮肉だが、我が主人様はアヌビス。
洗脳系と存在干渉系の魔法で雁字搦めにされて本官を動きづらくしている張本人だ。はっきり言って糞だな。
あぁ、どうしてこうも本官は上司に恵まれないのか。
まぁやる以上は盲目的に仕える他無いのだが、それでももしこの世界に本官を殺せる存在がいるのなら
どうか、本官を殺してくれーー




