地上界の休日
「え〜ということで帰って来ました!」
「ノリ軽過ぎない?」
「まぁまぁライト王、報告を聞いた限りでは成果はあったご様子ですし。」
「うぅむ・・しかし、冥界の変動は目まぐるしい。」
「そうだねぇ」
「いや、お前にも言ってるんだけどウルフィアス?お前なんで今更戻って来たの?戦争中何やってたんだ減給するぞ」
「ハーッハッハッハ」
「笑って誤魔化すな!」
こんな感じで和んでいるが、連合軍の状況は先ほどよりも逼迫している。イシュタリア=ランスロード率いる冥界軍との戦いは、ケイアポリス王国国王ライト王の指揮の下勝利こそすれ、被害は甚大なものとなったのだ。
グリーン以下戦闘で頼みにしている虎の子グリーン勢のほとんどがいなかったのも大きい。兵士の負傷数は全兵力の3割に及んでいる。
ともかく、そんな戦争から2.3日しか経過してないので、全軍動けないまま立ち往生していた。
「全軍じゃないし.ウォルテシアだけ普通に無傷で帰還しようとしてるし。」
「確かに、ウォルテシアは帝国を壁として援護系統の魔法を使うのに尽力していました。損害はほとんど無いんでしょうね」
不貞腐れたように言うライトに同意するように帝国皇帝ベリアスも頷く。この場には事実冥界での状況を伝える為にいるグリーンとライト、ベリアス、オワリ将軍シバ、ウルフィアスしか居なかった。
ウォルテシアは糧食などの問題もあり、全軍の半数をウォルテシア国王自ら率いて退いていた。一時的に軍を分けるという措置は軍的にはあまり意味がないと言ってもいい。ウォルテシアの軍勢はそのほとんどが魔導兵た、兵士たちの技術を奪われることを危惧しているのだろう。
「ふん、既にグリーンに負けている癖に調子に乗りおって」
と言うのはこの連合軍の総大将であるライトの弁だが、ほんの数年前まで各国最強の魔導軍を自称していた身としては昨日今日で降って湧いたようなこの話は受け入れがたいのだろう。
「つーことで報告終わり、オレはワンモアチャレンジ行くわ。」
「え?やっぱり行くの?」
「次行くなら、我等侍衆もご同行を願う。奴らも暴れ足りんと言っていたのでな」
「やめとけ、アヌビスにゃもう魔力が残ってねぇ。雑魚を産み出す余裕は無いはずだ。オワリの武士レベルなら何人いても同じだ。」
将軍シバの申請をグリーンは突っぱねるようにして答える。グリーンは前回七部衆の戦を見ていた。
・・・・勝負にならねぇな。
アヌビスをグリーンは見た、その強さを見た。自分の今まで培ってきた戦略的発明が防御すらされず、アヌビスの自動防御に防がれ、かつ傷1つつけられなかったのを見た。
奥の手はある、だがそれを発動したとて、アヌビスに刃が届くのか?
疑問だ、神器級のバウムクーフンの木で作成した剣とは言え、アヌビスにこれが通用するかは疑問が残る。
しかし素材はこれ以上のものはない。グリーンは再度改良に向かうべく、テントを去って行った。
「とはいえ、残されたものが祈るしか無いというのも些か歯がゆいものだな」
シバが、グリーンの顔を見て諦めたようにそう言う、シバは3年という付き合いの中でグリーンという性格を熟知していた。
可なら可、不可ならば不可。その線引きがはっきりしているのがグリーンの良いところでもあり、また弱点でもある。多少は気を許しているのだろうが、1国家の首領に対してのあの発言がいい証拠だ。
だがグリーンは誇張しない、かと言って目盛りを低くするようなこともしないだろう、事実をあるがままに言うだけだ。
ならば本当に我々は、いてもいなくてもどーでもいい存在なのだろう、それがオワリ国最強と謳われた七部衆であろうとも、だ。
なら何を?彼らに対して我々は何をすれば良い?
英雄に助けられる民衆とは、得てしてこういう気分なのかも知れない、そうシバは思う。
人を助けるが故に人は彼に援助を惜しまない。
シバも、またグリーンに魅せられた人間の1人だった。
◇◇◇◇
「寝るわ!!!アヌビスに喰らった攻撃で脇腹痛いし!」
「MeToo!」
「エルザ!?てかイヴァンはどこでその言葉覚えて来たの?てか、イヴァンめちゃくちゃ発音良くない?」
冥界からの脱出後、僕たちはボロボロになりながらこのエリアド荒原まで戻ってきて休憩を取っていた。冥界での戦闘は思いもがけないほどの消耗を与えていた。
その為の休憩は必須である、まぁ修練に明け暮れている者もいるのだが・・・・。
イエローなどは体を癒しに神官達がいる場所で回復魔法を受けている。
「可愛いオワリの巫女さんとお近づきになる大チャンスですな!」とか言っていたけどね。
「全く!冥界に行っていたというのに何を悠長な!私が行ってアヌビスを倒して来てやろうか?」
「そうなの!クロと一緒にあぬびすを倒しに行く!」
そう、クロとピンクも合流していた。
クロは今まで、世界中を旅して来たらしい、すっごいなぁ。
ピンクは何故か聖女として活躍、英雄の妹として王都で何不自由ない生活を送って来たらしい。
2人とも元気そうで何よりだ。
「いや、すっごいなぁで纏めるな、ここまで来るのでさえ、怪物達との戦い、それはまるでトリ〇のグルメ界の如き争いが起きていたんだぞ!」
「クロ!グルメ界って言ってたら隠してた意味ないと思うよ!」
2人とも元気そうだ。
エルザイヴァンはご覧の通り、のんべんだらりとしている。ジャックとファムラスとディナスグリーンの護衛だ。
神々は隠れて作戦会議をしているらしい、フレイヤがいないからどうなることやら。ウルフィアスさんも出ているけど。
僕としてアヌビズと戦う前に、少しでも実践経験を積んでおきたいんだけど・・・・
「はぁ?この状態でアンタと練習でも戦ったら体がおかしくなるわ!休憩しなさい!」
「主人よ、それ以上言えば燃やすゾ」
「いや怖っ!」
どんだけやりたくないのよ!
まぁエルザとイヴァンはここから修練しても仕方ないと言われればそうなのか。エルザは既にグリーンとアイテールにできる最高までの強化はされているし、イヴァン率いる龍族は修練による能力の強化幅は大きいとは言えない。
この3年間でイヴァンがやってきたことは強化ではなく、できることを多くするという龍族に取って必須であったことをイヴァンがただできるようにしただけのこと。イヴァンもこう見えて天才なのだ。
イヴァンは結論として、下手をすれば父をも超えているかも知れない。しかしそれがレッドとの契約のせいだと言うのは誰も知り得ない事実だろうが。
「そうか?じゃあ俺ならどうだ?」
「へ?」
閑話休題、ともかく修練相手に事欠いていた僕の背後に現れたのはジャンさんだった。
ただその風貌は前見たジャンさんとはまるで違っていた。それは柳のように静かだった、こう言うのもなんだが背後を取られるということ自体が僕は少ない。できるだけ全方位に気配を察知できるようにしているためだ。
そしてジャンさんの顔は無表情だ、それでいて氷のように冷たい。
ジャンさんは人間だ、戦争に参加した時から義勇軍として活躍はしていたがそれでも普通より少し強いという気しかしなかった。
しかし今はどうだ、彼と戦った先の結末が見えない。それはどの実力を読み取っていた。
「はい、よろしくお願いします」
僕は、自然とそう答えていた。




