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魔王と元貴族と死の王

「で、何故残った?クロムウェル」


「いや〜現在の悪魔帝ってアヌビスとの融合体でしょ?私って悪魔キラーですし、役に立つかな〜ってね。」


全てが去り、ゲートの透明な鏡のようなものが残っただけの冥界の虚空空間に、前魔王シンと、ひとりの幽霊族が立っていた。


前に立つは、浅黒く肌を出し銀色の長髪をなびかせた魔族の王、控えるのは貴族風の男性だ。


最後の決戦、その姿は絵になるほど美しい。


「悪魔以外には効かないアレか?お前の魔王軍第4位の座は戦闘能力だけで無いと皆に言い渡したが、アレは嘘だ。」


クロムウェルは、悪魔相手ならばアルフィィオスをも上回るだろう?


そんな、挑発的とも言える問いに対して、クロムウェルはそれまでに見たことも無いような笑顔で答えた。


その顔は、普段の澄まし顔がデフォルトである科学者という立場では絶対に出せないだろう笑み。


彼自身が持つ恐怖が前面に出された笑顔だった。


彼の求める魔法の深淵、そこに臨むまで違う数百年。そう彼はケテル=マルクト達と同じ時代を生きるものであった。


彼は悪魔を祓うという能力に特化した『悪魔祓い』だ。今その毒牙が、悪魔大帝と融合したアヌビスに襲いかかろうとしている。


「やれやれ...貴様の能力はできれば元の世界に戻った面々と発揮して欲しかったのだがな。クロムウェル」


「いえ魔王様、私が忠義を誓ったのは、貴方の息子ではありません」


「可愛く無いな」


「ええ」


貴方に仕えると決めたその日から、今の今までずっと私は何も変わっていませんとも。


幽霊族ですから。


語るのはそこまでだった。


アヌビスがゆっくりと歩みを進める、その足取りは処刑人のように重い。周囲には大小構わず悪魔たちが溢れ、怪しげな音を響かせていた。


抜刀し、構える。


「冥界の主である手前にそれは許されざる暴挙であると知ら無いのか?消してほしいようだな」


「・・・・・」


やはり、このアヌビスは違う。


既に性格の変動が見られるなと、シンは長きに渡る経験から異常に気づいていた。


というか、アヌビスは自分に反抗したものと、少なくとも真っ直ぐに向かい合ってきた。


冥界にて軍を編成する際、人間を皆殺しにするというアヌビスの思いは冥界にてあまねく伝えられ、勿論反対者も出た。その際にアヌビスは冥界の主人として、反対者を全員物言わぬ魂にすることもできたのだ。


だがアヌビスはそれを選択せず、人間を守るべしという者たち全員と戦い、これに勝利した。


選択を尊重し、反対も認める、それがかつてのアヌビスだった筈だ。つまり、アヌビスが冒頭から冥界之王としての権限をチラつかせている時点で、これはもう純粋なアヌビスでは無いのだ。


基本的に悪魔による憑依というのは契約という縛りの上で語られることが多い。


例えば、人間が悪魔の力をその身に宿し戦争に勝利するなど、下らない条件で使われるが、それにもかなりの生贄が必要な場合があり、縛りを設けねば悪魔がその人間を乗っ取ってしまう場合もある。


その場合人格の主導権は完全に悪魔となるのだが・・・・


今回の場合、アヌビスが意識は保っているが、その体の意思を悪魔大帝が巧みに誘導して意思決定を行わせている状況。


実質主導権は、ほぼ悪魔大帝のものだ。


間合いを瞬時に詰めたシンの一撃を、紙一重でアヌビスはかわす。


「まだ新しい体に慣れていなくてな、いい実験台だ」


「フン、悪魔に魂を売った気分はどうだ?冥界の王が聞いて呆れる。」


「勘違いするな魔王、手前が悪魔大帝を利用しているのだ。」


「何を勘違いしてるんだか・・・・」


アヌビスの足撃を、シンは危なげなくかわす。お互いにまだ準備運動の段階だ


それでもその戦いは既に、人知を超えていた。


前魔王シンは間違いなく上位神クラスへと足を踏み入れている。しかしこの男は何故か1柱から声がかからなかった。


1柱の加護を受けているものと受けていないもの。1柱の加護さえ貰えればミジンコも最強格になれるというある意味異常すぎるその際が、僅かではあるが如実に前魔王シンとアヌビスの戦力差を物語っている。


いつからか、どちらかか。


それすらもわからぬような中でアヌビスとシンは撃ち合っていた。数秒の中で100号を超える剣戟が響く。


そんな中、シンの丁度真後ろから幾度となく撃ち出されるクロムウェルの魔法。


その魔法は聖なる魔法では無い、幽霊族であるクロムウェルにとって聖系統の魔法は最も不得手とするものだ。


人間の頃使用していた魔法より、ゴーストとなりさまざまな魔法を取得できている今、そして長い年月をただ魔導の成長に費やしてきたこの瞬間。


クロムウェルの、『悪魔』に対する絶対の特攻効果を持つとも言える闇に彩られた魔法は、アヌビスの肩口を射抜く。


「ぬぅっ」


しかし、その開けられた穴は瞬時に回復した。


「手前の中にいる悪魔大帝が怒っているぞ?クロムウェル、悪魔祓いか・・・・クロムウェルは偽名だな?」


「クロル=ウェルハレム=ケイアポリスだ。」


「フッフフフハハハ!ケイアポリスか!ケイアポリスは何度我が琴線に触れれば気がすむのか!」


クロムウェルの真名を聞き、アヌビスは笑い出す。破顔していると言ってもいい。


それが最後の、もしかしたらアヌビスが出した最後の彼らしい感情だったのかもしれない。


「殺す」


次の瞬間、アヌビスの中にあるものは殺意のみだった。


旋風のように吹き荒れるアヌビスの体。


その中で、アヌビスの右腕が唸りを上げてシンに迫る。


シンに飛んだ右腕は、そのまま彼の肩を外れて明後日の方向へ飛んで行った。


「はぁ?」


「ククッ」


「フフフ」


驚きの声をあげたのがアヌビス、笑ったのはクロムウェルとシンである。


アイテールには及ばずども、それでも世界有数のタフネスを誇るアヌビスの肉体。


それがいとも簡単に取れた、それを意味するところは多い。


「呪詛魔法、悪魔に対する絶対の特攻を持つように私が改良した魔法ですが。これほど効いてしまうとはアヌビス、2柱よ。お前は予想以上に悪魔に近づいたようだな」


クロムウェルが、その薄い体を更に薄くしながらアヌビスの驚きを代弁するように答える。


クロムウェルは、昔はただの貴族でしか無かった。


だが彼の復讐心が人間という枠を超え、かと言え幽霊族という枠組みを超えた化け物を作り出した。


この話は、ただそれだけの話なのだ。



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読んでくれてありがとうございます! これから全10章、毎日投稿させていただきますので、是非よろしくお願いします @kurokonngame くろこんでツイッターもやってますので、繋がりに来てください。
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