冥界大脱出
「駄目ですよ!」
あの状態とのアヌビスにたった1人で残すなんて!
「逆に問うが、何故我も共に行けると思っているのだ?我は冥界人、死人だ、孤立した肉体を所持していない我はアヴァロムでは存在できん。」
冥界人は結論から言って死人だ、アヌビスの許可のもとで仮初めの肉体を与えられる。
アヌビスから不許可の文言を与えられては魂だけの存在に戻るだけだ。
そこに意思の有無は関係ない。
「そ、それは」
「そして、ゲートは非常に脆い。アヌビスはゲートを潰すような外道な真似はせんだろうが・・悪魔大帝が加わっている今の現状ではアヌビスに心情の変化があっても仕方なきこと。念のための守護も必要だ。」
僕の制止に、シンは理詰めの最適解を示す。
確かに、理屈は通っている。
魔法は、精巧で性能が高いものであればあるほど砂上の城のように脆い。
それこそ、魔法が使えるものが何か魔術を使用した場合、コナゴナに砕けてしまうように。
ただしそれを作成したのは、あの4柱ニコラス=セヴレイブである。多重の防衛魔法でアヌビスと言えども容易くぶち壊すのは不可能と言われている。
知っているのは神々達のみで、シンやレッドが知る由も無いのだが。
「ホホホ、では入りますぞ〜」
「イエローがいの一番に入ったぞ!ずりぃ!」
「早く入りなさいよ・・ゴホッ」
イエローがいの一番に入り込み
神々と一緒にジャック、ファムルス、ディナス、エルザがその中に飛び込む。
『チィ!グリーンとW魔王は何してやがる!』
『損傷率八十五パーセント、これ以上の損傷は機密保持の為自爆します』
『え?そんな機能入れた覚えないけど?』
『深夜テンションで自爆はロマンだというグリーン様の声で作成されました』
『いやそれヤベェじゃん!じゃあ先行くわ!』
グリーンはそこに転がり込むように飛び込んだ。
残りはゲンム、レッド、シンのみとなった。
「ハレ?クロムウェルは?」
「いいからとっとと行けバカ息子、精々あがけ。」
「え?いゃちょま父上ぇーー!?」
感動的な最後は?とばかりにシンは魔王ゲンムを蹴飛ばす。
「あれでいいんですか?」
「話すことは話した、これ以上は女々しいぞ。そして貴様もだ、とっとと行け。」
え?
マジですか?
呆けていた一瞬の隙をついて蹴飛ばされる
「待って下さい、自分も・・・・」
「それこそ阿呆だ、貴様の本当の戦いに味方は必要ない」
「え?」
何を言ってるんだこの人は
「思い出せ、キセキ、マツオカ。貴様は強敵と戦う際、常に一対一だった筈だ。」
確かに
アイテールの時
というかそもそもの話、僕は集団戦闘では大して力を発揮できていない。人魔戦争の時もそうだ
「僕の戦いは、敵との戦いじゃない。自分との戦いだから・・・・」
「フッ、元の世界のブドウの精神という奴か?シンヤが言っていたぞ。そうなのかも知れない、我には分からん。貴様の精神は貴様にしか知り得ぬことだからな。」
少しずつ、シンの姿が歪んでくる。ワープが作動しようとしていた。
「もし・・まぁ我がアヌビスを仕留めそこなった時、万が一貴様が戦わねばならなくなった時思い出すがいい。己の心情を」
揺らぐ景色の中で、僕の中にシンの言葉が響く。
ゲートを通り抜けるまで、その言葉がずっと僕の耳に響いていた。




