vsアヌビス〜終戦〜
「その一撃・・貴様、複合魔術?いや違うな。これはなるほど、魔力を混ぜたか、見事だ。」
エルザの剣は、アヌビスの手の1つ。右肩から生えていたもう1つの右手の真ん中ぐらいに深々と刺さっていた。アヌビスの言う通りだ、彼女の一撃は魔力を混ぜたものだ。具体的に言えばジャック、ファムルス、ディナスの魔力を使用していた。
槍神と謳われたディナスでも、義賊と呼ばれたジャックでさえ、アヌビスの動きを目でみるのが精一杯だ。恐らく王国騎士などではこの戦いの様相がまるで理解できないだろう。もし参戦したとしても細切れミキサーにかけられるお肉よろしく裁断されてしまうに違いない。
だからこそ、エルザは彼らの魔力を借りた、彼らとてSランクの冒険者である。魔法使いと言われるほどの魔力はないものの、それでも宝具を操る程度の実力は保持している。
そんな達人達だからこそ、魔力の譲渡などと言うとんでも技で、エルザに魔力を渡すことができたのだが。
一方エルザはと言うと、自らの持つ魔力を他人の魔力と複合させて力を得ている。これは、この行為自体が異常である。
それは、彼女が元は自動人形であったことに起因するだろう。アイテールとウルフィアスの最高傑作とまで言わしめた彼女だからこその魔力の混合
通常多人数の魔力を全て同じにするなどとてもできない芸当だ。具体的に言えばレギュラーやハイオクを混ぜて車を動かすようなものである。
しかしエルザはそれを可能にした、その世界最高峰のエンジンとも言える自動人形特有のそれが、不可能を可能にした。千年紀続く王国の架け橋、戦うことすらままならない戦士達の思いは、アヌビスという巨大な神に確かに届いた。
「魔力障壁が破られるとは、ハハ、娘、いい剣だ」
しかし、それまで。
次の瞬間彼女の体は大きくくの字に曲がり、冥界の壁に激突する。アヌビスの右腕が鞭のようにエルザの腹部を無造作に、しかし全力で叩いた為だ。
「エルザ!」
「ガハッ」
レッドの声を待たず、エルザの肺から強制的に空気が排出され、その気持ち悪さに顔を顰める。肋骨が折れたのか、脇腹の形が不自然に変化していた。
「手前の腕一本くれてやるに相応しい一撃だったぞ娘。」
確かにその腕は両断されかけているように心無くプラプラとアヌビスの顔の横で動くのみで、次の瞬間ゴトリと落ちた。
「右腕が落ちてしまったか」
あれ?アヌビスさん
「なんで再生しないんですか?」
「・・・・・・」
忌々しい、そう言っているかのようにアヌビスが顔を歪める。この姿になってからアヌビスが表情を変化させたのは初めてだった。青白い炎が噴出する、ボタボタという血が流れる音が炎による強制的な血止めで鎮火された。
爆風と旋風が巻き起こる戦場の中で、どちらかと言えば静観に徹し、魔王や前魔王シンの様子を見ていた僕は、アヌビスが確実に弱っていることに気づいていた。
勿論みんな心の中で、フレイヤがアヌビスに損傷を与えていることを祈っており、そしてその望みはアヌビスが多少なり外傷を負っていることで果たされた。
しかし既に傷は癒えている、アヌビスの持つ自然治癒能力の賜物だ。
だけどそれならば、エルザに斬られた右腕も回復する筈だ。
なんでだ?
アヌビスの腕のうち2本を、神器『ウェザリア』で弾き続ける。刀に変化したこの優秀な神器は、自らの主人の望みに合わせて形態を変化させた。
『太陽の剣』
瞬間、アヌビスの3本の腕のうち、生えていた方の左腕が飛ぶ。
ウェザリアの力は天候を変える技、自らの形に沿って自らを天候そのものへと化す。その暑さは持ち主以外の全員が対象で、この場にある水気を吸い取って行くので、仲間との共闘ではあまり使えない。
今回は一瞬だけの使用だ。
「それでも熱いよ、レッドくん!」
「あっすいません!」
「ぐぉっ・・・・貴様!」
アヌビスの左腕がまたボトリと落ち、今度こそ2腕2足、普通の人間型へと姿も戻った。
やっぱりだ、このアヌビスさんなら倒せる。
でも何故だろう
何故こんなにアヌビスさんは弱ってるんだ?
フレイヤと闘ったから?
いや違う、そうだけど違う。
『ごちゃごちゃ考えるのはやめだ!レッド、無駄なこと考えてる暇ねぇんだぞ!』
グリーンが気付けば走り出している、僕の様子に気づいていたのか、グリーンの顔は前しか見ていないようだ。
『やりたいことがあって!それを邪魔する奴はゆるさねぇ!至ってシンプルだ!こんな不毛な戦い、とっとと終わらせて家に帰るぞ!」
グリーンの乗っている鎧はボロボロだった、しかしその乱撃は今までで一番早く、重い。
「おおおおああオオオオオオオオオ!!」
『らぁぁぁぁぁァァァァァァ!!』
鎧を着たグリーンと、アヌビスの壮絶な殴り合い
とは言ってもグリーン本人にダメージは無く、機体に溜まるのみだが
『緊急事態、緊急事態!機体の損傷率80%突破!離脱して下さい!』
『うるせぇ!根性でなんとかしろ根性で!』
そんなムチャな!と某ラトライダ領の職人の皆様が発狂しそうだが、気にせずグリーンは殴り続ける。
『ぶん殴らんときがすまねぇ!こんな下らない戦いに巻き込みやがって!本当に神って奴は身勝手だ!連帯責任なんて今時流行らないぞ』
理不尽から目を背けず、生きてきた奴らを無碍にしやがる!
「グリーン・・」
グリーンが怒ってるのは自分のことじゃないんだ、多分、1人のミスが、全員に波及して。
戦争に参加して命を散らして一般人に
戦争で戦い、命を落とした騎士達の
思いを代弁して怒ってるんだ。
『くたばりやがれ!!!』
全力の一撃がアヌビスの顔面に刺さる
「うごぁ...」という声と共にアヌビスは片膝をつく。
彼にとってフレイヤとの戦いですら起こり得なかったピンチが訪れようとしている。
敗北、アヌビスにとって認められない一言が頭に浮かんでいた。
「認められるカァ!!」
気づけばアヌビスは絶叫していた、信じぬ、正義は我にありと、そう信じてた。
そう願っていた。
第2柱は正義の神で無ければならぬ
第1柱は創造神、正義も認める、敗北も認める。
悪も認める、正義もまた然り。
神にフォルテのようなものがいたのもその一因だ、それには1柱の言う可能性が含まれていた。
だからこそ!!!!
手前は正しく無くては行かんのだ!!!!
そこに
「力が欲しいカ?」
そう囁いてくる悪魔が、いタ




