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植物の管理者/影の王③

「お〜りゃおりゃおりゃおりゃぁ!!」


「・・・・!!」


「ちぇりあぁぁ!!」


「ぐっ・・」


冥界の澄んだ空気の中に、剣戟の音が聞こえてくる。それは神話の戦いだった。


一方は少女とお姫様を連想させるドライアド、樹木を守る精霊であったとされる彼女達は、一般的には魔法での戦闘を得意としている。


なのにその代表であり、1柱からの加護を受けてその存在を昇華させている筈の樹木真族である彼女の戦い方は・・苛烈だった。


というか、完全なる物理的戦闘方に頼っている、魔法が介在している箇所はない、いや魔力を使って身体能力を上昇させているのは確かだったが、その上げ幅が尋常ではなかった。


彼女が所持しているのは一本の剣である、いや剣とこれを形容していいものなのか。刃渡りは成人男性2人分程度の大きさを持つ、一般基準からするとバスターブレードと呼ばれる大剣だ。


両刃のそれは、ヴィヴィのバウムクーフンから抽出された原木を荒削りしたものであり、はっきり言って木の棒を振り回しているのと大差ない。だがそのたかが木でできているとたかをくくっていたものの、中々破壊できないのが現状だ。


勿論、スアレスの即滅付与は作動を続けている。スアレスの鎌で傷をつけたものはその肉体を灰と化さねばならない。


これは確かに絶対であった、だがここでスアレスは、自分がおもいがけないミスをしてしまったことに気づいた。


(概念の範囲は、そのものの物体のみに作用する。つまり、石ならばその傷をつけた石のみを、ヴィヴィなら、触れた『ヴィヴィ』と認識した一個体。だがヴィヴィの体は別にあった・・・・)


先程スアレスが勘違いしていたバウムクーフンの巨木は、ヴィヴィであってそうでないもの。樹木人として覚醒する前の依り代であった木である。


つまり、一撃必殺にはなり得ない、相手の本体に正しく当てなければ必滅付与は必殺にはならないのだ。


ーーただ、概念の中身を限定することでその能力は飛躍的に上昇している。これが例えばヴィヴィという個体を消せばそれに連なる全てが消えるなどとしてしまっていたら、神域に至るものを殺すなど不可能の所業だっただろう。


概念の範囲を狭くしたことにより、スアレスの刃は人間の身であったにも関わらず、神に届くのだ。


下手をすればアヌビスやフレイヤにも通用するかもしれない程の。


一方、ヴィヴィの武器である木剣は、使い捨てのドリルか、削岩機だ。もしほんの1秒でもスアレスが動きを止めたら、スアレスは肉体ごと挽肉にされてしまうだろう。


超大型台風と、それをいなす柳。そんな2つのぶつかり合い。柳が折れるか、台風の体力が尽きるか。神同士の理不尽とも言える戦いがこの冥界の一室で行われている戦いの現状だ。


スアレスは、その鎌の丸い形状を利用してその膨大な魔力の一撃を流す。戦闘向きでなくても神の一撃だ、通常ならば技などの介在する余地は無いところをスアレスはその神業と言って差し支えない技量で流していく。


「くぅっ!もう少しなのに!」


「貴方に負ける訳には行かない。」


ほんの数ミリ、その間をすり抜けてスアレスは少しずつ間合いを縮めていく。縮めれば縮めるほどヴィヴィはその大剣を使いこなす、故に前へ、活路は前に有り。


「それほどの力を持ってして、何故アヌビスさんに協力しようとしない・・盟約を破り反したのは人間ども、その責務を負うのは当然だと思わないのか!」


「ええ、盟約を破る意味も理解してる、でもね人は今進歩しようとしてるの、その枝のように広がった可能性、その1つが死者蘇生だった。それだけよ。」


アヴァロムは発展を続ける。それは、ヴィヴィにすらわかったことだ。グリーンの持つ科学力は確かにアヴァロムの最先端を行っていた。そしてそれから導き出される未来も。


ドライアドとしては、人類の発展によって植物の数はこれから大きく衰退していくことを見抜いた。


確かに今はアイテールが残した戦火の爪痕がまだ残っているが、しかしそれも少しのみ。この後、グリーンの科学力を背景にケイアポリス以下、その恩恵に預かろうとする国家は軒並み発展するだろう。そしてその発展の中に、森林伐採などが存在する事を。


100年先ともなると、もしは植物はこの世界から消え去るのではないか?森の管理人として、そんな事態は止めねばならない筈だ。


だが、彼女の腕は未だにその暴虐を止めていない。


「何故だ?人間につけば、貴方方ドライアドに未来はない。」


「・・・・あぁ、そんなこと?」


「そんなこととは何か!人間の発展に比例して、貴方方の安息の地は侵略されるのだぞ!」


「・・・そんなもの、私とお姉様と、グリーンとかいう奴との話し合いで解決済み。確かにそうね、事実として植物達の安息の地は減るわ。でも弱肉強食の世界で、私がいくら強かろうとそれら全てを守ることはできないわ。」


だから人に委ねる


我々植物はこの世界でなんの力も持たない種族だからーーーー


「まぁ、あんまりにも開発が進みすぎるようだったら天罰を与えなきゃいけないけど。グリーンの開発計画?とかなんとかって奴、お姉様とも見たけど無駄がないわ。私はああいうのは嫌いじゃないわ」


無論全てが完璧になることはあり得ない。これから開発に比例して駆逐されゆく植物達にとって、グリーンの開発計画は大した役にも立たない。


だがヴィヴィはそのグリーンの誠意に欠けたのだ。


「そもそも、同じ人間なのに人間全部滅ぼそうとしてるアンタの方が私から見て明らかに不自然なのを理解しなさい!!!」


「ちょ、えーーーーーーー」


気づけば逃げ場を失っていた。環境を利用して戦うことに長けていた筈のスアレスの初めての隙。


それは植物達に足を絡まさせて動きを一瞬、強制的に止めたのだ。


「貴方と禅問答する気なんか始めからないんだから!くたばりなさい!」


『大地の咆哮』


それは、ただヴィヴィの持つ魔力を駆使して力任せに振り抜いただけの一撃だった。


しかし目の前に現れたのはアイテールのイデオムにも勝るとも劣らない一撃、冥界の大地が海が割れるように真っ二つとなり、底の見えない谷を作った。


既にスアレスの姿は見えない、恐らくゴミサイズにまでボコボコにされて、100メートルはある谷の底で再生のために蠢いているだろう。


「はぁ〜〜どっちにせよ再生には1年はかかるだろうし、私の勝ちね。でも私も魔力全部消費したから動けないけど」


まさか人間にあそこまでやられるとはね〜


1柱、本当何考えてるのかしら?


まぁいっか


右手でパーを作りながら、植物の管理者は冥界の暗い洞窟のようなこの場所に大の字で寝転んだ。


あとは、みんなに任せるよ?

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読んでくれてありがとうございます! これから全10章、毎日投稿させていただきますので、是非よろしくお願いします @kurokonngame くろこんでツイッターもやってますので、繋がりに来てください。
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