地質学者と天才軍師
え?どうしたら魔物に好かれるのかって?
そんなに難しい話じゃないんだ、そう、寄り添う。
彼らの心に寄り添うことさえできれば、自然と味方になってくれるはずさ。彼らは賢い、きっと、僕の気持ちにも答えてくれるはずさ!
そう、僕こそ神7柱!
ケテル=マルクト
深淵賢帝と呼ばれた男さ!
「お前...冥界で弱体化してるたぁ言え、神々が総出で駆逐した神獣達を解き放つとは、何考えてるんだ!?」
「いやぁ、アイテール君相手なら大丈夫かなと思ってね?そもそも種族的に僕はただのエルフ、君は数千年前から巨人族の枠組みからはみ出してる規格外なんだから、このぐらいのハンデがあっても良いと思うよ。」
「創世の四聖級をゾロゾロ揃えて言うセリフかぁ!ハイエルフがぁ!」
「いやいや、本当に僕は弱いんだって!」
ケテル=マルクトのそんなにべもないセリフに激昂したかのようにアイテールが答える。
そう、マルクが従えているのは実力だけなら創世の四聖にすら劣らない神獣と呼ばれた魔物である。知能の高いものから低いものまで、様々な都合で死んだり、神々に駆逐されたりして冥界に飛ばされたものの一部がマルクに従っていた。
その数、100をゆうに超える。
「面倒だな、クソッ...」
「君たちと戦うからって募集をかけたらすごい数集まったよ!戦闘力だけなら僕より上の奴らもね!」
そしてそれに合わせて、ケテル=マルクトことマルクの指揮つきである。戦場において指揮能力が高いものが指揮を執ることの重要さは火を見るより明らかだろう。
頭が優秀なら、体が愚かでも良いという良い礼だ。
単体ならばマルクはアイテールの足元にも及ばない、彼が本気になった姿はフレイヤやアヌビスにさえ勝るとも劣らない実力を秘めている。
だがそこに援軍を入れれば戦局は大いに変わる。
しかもここはマルクのホームである冥界、数百年過ごして来た場所で戦うという圧倒的地理的有利が、現在の優勢を物語っていた。
「右陣、作戦開始!」
「あ!?ったく面倒な真似を...」
身を捩りながら敵の牙を交わしつつ、反対側から襲いかかる魔獣を片手で屠り、アイテールは前を向く。
ちなみにここまでマルクが2重3重にも張り巡らされた罠がある。具体的に言えばアイテールがどのような動き、どのような行為、どのような技を繰り出したとしても対応できるまさしく完璧な布陣だ。
詰め将棋の如く、仏様の掌の上に漂う孫悟空ではないが、それを彷彿とさせる光景だ。
その証拠に、これだけの数の魔獣を屠っても、マルクは遠い向こうにおり、余裕そうにその身を宙に漂わせている。
あのムカつく顔をぶん殴ってやる!とばかりにゴミのように魔獣どもを葬っているが、中々近寄れないのが現実だ。
アイテールの手が肩口に掠っただけの魔獣の肩が全て吹き飛び、この世のものとは思えないほどの悲鳴が上がる。
腕力で肩を引きちぎったのだ、まるでカステラのような柔らかさで千切れた自分の肩を見て魔獣は逃げ出した。
「こうなりたい奴から・・・・かかって来るがいい!」
その一言とアイテールから溢れる覇気に魔獣達は理性もないのに後ずさる。
アイテールは巨神族、当然その姿に畏怖を覚えるものも多い。そんな姿を恐れてしまい、動けなくなる魔獣すらいた。
「ほらほら〜精霊種は弱体魔法をかけ続けて!アイテールは巨神族だよ!その名の通り耐性は凄まじい!しかし無敵じゃあない!通ればめっけもんだ!巨体の魔獣のみんなはアイテールの周りを囲んで!そこから幻獣種が突撃を喰らわせろ!」
そう言いながら未だにマルクの鞭が飛び続けている。Sランク以下の魔獣がアイテールの本気の威圧に対して逃げ腰にならないのは、マルクの鞭のおかげと言ってもいい。
神具であるマルクの鞭は猛獣使いの名前を欲しいままにした彼の由来通り、一種の洗脳状態にまで魔獣を持っていくことができる。
だが、それを駆使してもアイテールに的確なダメージを与えられていないのも、また事実。
(なんだあの動き、武術も型も何もない自らの運動神経と反射神経だけ、その辺の獣の方がよっぽど頭を使って戦うぞ!)
罠などかけても無駄、アイテールの動きの前に、マルクの積み上げられた計略は全て灰燼と消している。上下左右から向かって来る魔獣に対しても、ただがむしゃらに暴れているだけに過ぎない。にも関わらず掠っただけでもSランク以下の魔獣なら一瞬で溶けるように死んで行く。
そのぐらいのレベルである、オマケではないが、自分以下魔獣達の動きが少しずつ鈍くなっていく。恐らくフレイヤとアヌビスが戦っている代替だろう。
「そろそろ、か」
そこまで言うと、アイテールはゆっくりと中腰になり、右手に魔力を貯め始めた。
アイテールの特殊な緑色のオーラが少しずつ右腕全体から、右手に集まる。
集約された魔力、それを放つ
戦う気がない、というか武術という概念が元々必要ではなかったアイテールが唯一持つ必殺技。
それは腕力だけでなく、元来の天才性により魔力との合わせ技である。まともに喰らえばAランクは瞬時に、Sランクのモンスターとてただでは済まない威力だ。
「しまっ!全員総力を挙げてアレを止めろ!」
マルクがそれに気づくまでの間が僅か2秒
魔獣達は、対抗すらしないアイテールの全身を噛み、切り裂き、魔法をぶつける。
だが、アイテールは動かない
何かに集中するかのように動かない。
アイテールは、ここを勝負と判断した
アイテールに決まった組み立てはない、だが明確にマルクをぶん殴ろうとそう思っただけである。
戦いながら少しずつ己の魔力を高め、練り上げていく。それは非常に愚かな行為と言わざるを得ない。
通常、魔法使いなどが魔法を使う時はそれなりの集中が必要だ。魔力という概念は戦闘を行いながら使えるほど甘いものではない。
冒険者の一般的なパーティーに、魔法使いを守る戦士がいるのは、それが理由でもある。
だが彼はアイテール、巨神族。
巨人として魔力を持つだけでも天才と呼ばれる資質を持っているにも関わらず、なおかつ戦闘を続行しながらでも魔法が使用できる稀有な才能の持ち主。
『我、自らの正義を求める者。夢、未来、希望を求める神、全ての道は我に通じ、全ての道は我の元へ!』
聖書にもある、アイテールを表す言葉である。
要するにだ!好きなように生きろ!
好きなように死ね!
正義は変わる!
求め続けろ!
全ては私の後を辿れ!
『イデオム!!!!!!!!!!!』
先駆者・アイテール
その史上最高の一撃は、冥界を確かに破壊し尽くす。
その閃光はマルクを捉え、全ての神獣ごと、光で覆い尽くした。
それは緑の力の本流、わかりやすく言えばリザー〇んのはかいこうせんである。
ちなみに1ターン何もできないなどといったものはない。




