裏の神と、鍛治師②
「フレイヤァァァァァァ!」
戦場の轟音がこちらの方まで聞こえてくる。
聞こえてくるのは、怒声、アヌビスの気迫が、フレイヤの剣撃の音が、こちらにまで響いてくる。
というかフレイヤの剣はこっちにまで飛んできている
ヒュン
いや、危なっ!フレイヤもーちょい気を使ったよ!
また飛んできた!
僕ーーことレッドは、そんな剣を避けたり、飛んでくる剣が味方に当たらないように弾いたりしながら、冥界軍の兵士達と相対していた。
「くそっ!何故攻撃が通らん!魔法か?」
「魔法じゃない!Aランク冒険者だった儂が見通せんのじゃ!これは単なる歩法じゃな」
「じゃあなんとかしろよ!」
「魔法すら避けるんじゃぞこやつら!なんともならんわ!」
冥界軍にもだんだん慣れて来たな。
てか、戦力がオーバーキル気味だから、ちょっとサボっててもいいかな?とまで思ってるんだけど・・
上位神なら魔王さんがいるし
下位クラスも
僕、グリーン、ゲンムとかいるから、冥界軍相手に無双できちゃうのは仕方ないよね。
しかしながら、道幅が狭いので囲まれたりしなくて済んでいたが、相手は世界各地の戦士達。
後ろを気にしながら戦っている余裕もそんなになさそうだ。
「ねぇイヴァン。レッド、汗1つ書いてないんだけど・・」
「私は認めんぞ、3年間必死に修練をして来たのに、ちょっと異世界の『どうじょう』とかいうところに来て、ここでも勘を取り戻しただけであの動き」
「泣くわね・・一応私たちも超越者よりは強い筈だけど」
「古の勇士達と肩を並べたと喜んでいた私を殴りたいのだが」
イヴァンとエルザの声は、冥界の暗闇の中に虚しく消えて、誰の耳にも届かない。
背後を気にしつつ、僕は敵を一心不乱に斬り続けている。
手に伝わる、確かな実感と共に・・・・
◇◇◇◇
フレイヤside
「フレイヤァァァァァァ!!」
うるさいな
そう思いつつ、私の拳骨がアヌビスの頭上に落ちる。
冥界に来て、アヌビスは本来の姿を取り戻した。
勿論、私もフルパワーな訳で、体長300メートルぐらいの怪獣大決戦になってる。
冥界はアヌビスの手でドーム状に大きく広がり、まるで平野のようにだだっぴろい空間に様変わりした。
殺風景で暗い雰囲気はアヌビスから出てるなんかと、私の神器が明るいため打ち消されている。
「重い・・流石は人類の守り手!手前の最大の壁に相応しい!来い!手前は貴様を越えて自らの意地を通さん!」
うるさいな、もー
私とアヌビスが出会ったのは1柱が出会わせてくれたのだ。
故に友達の友達という感じしかない、いや、滅茶苦茶仲良いけどね
「貴様が本当に死ぬのかどうか試してみたかったところだ!試してやろうふはははははは」
いやうるせぇな
『呪喰毒犯』
私は自分の最高傑作の1つである神器、剣でアヌビスに斬りかかる。
紫色の見るからに毒々しい剣が、アヌビスの頭上に降りかかる。
「ふぅん!」
アヌビスは、その声とと共に剣を受けるが
「なっ・・これは呪いの剣!」
アヌビスの手から、自分の神具が離れる。
アヌビスの長年連れ添って来た神具が溶け始めた。神器という一定の基準に則った武器に比べると、神具は神の象徴的なもので選ばれることが多いので、弱い場合も多い。
例えばアイテールの玉とかねあれ。
あれ武器じゃないじゃん、アイテールのアレ、遠くを見たりするだけじゃんあれ。
まぁ今アヌビスの武器溶かしまくったけど、正直アヌビスは別に武器を使うから強い訳じゃない。
素手でも十分強いよな、とそうフレイヤは自前の宝具級のものを投げ続けながらそう呟く。
フレイヤお手製の神器は10
レッドに壊された5つの神器を除いて、自分が持っている神器は5つ。彼女はその全てを完璧に使いこなすことができる。
対してアヌビスは、理性を飛ばした暴力的な形態へと姿を変える。腕が4本に増え、禍々しい顔がフレイヤを刺すように睨む。
圧倒的な魔力を背景とした冥界の管理者としての絶対の風格。
1柱から裏の世界の超重要施設を任された看守であるアヌビスの観点は相当なものだ。
人間の最古でありながら最強の武である『剣』振るうのは人類最古の女王、フレイヤ。ケイアポリス王国に女性差別がないどころか、女性の社会進出が大々的に認められているのは、元の源流がフレイヤの作り出した国に乗っ取ったからと言われているはどの女性の神。
その洗練された武術は、自らの手で武器を作るほどの拘りよう。故に彼女は鍛治師の神でもある。
方や人間の裏の世界を任された最強の暴力の化身、アヌビス。人類の裏世界である冥界を預かる番人、死者の王、1柱を除けばこの世で最も不死に近い男であり、世界最強。今はその洗練された武力を捨てて、魔力の増大と残虐性に身を任せたアヌビスの最終形態。
最強の武と、最強の暴力。これがついにぶつかろうとしていた。




