外伝・会計 ジュダル
僕はジュダルと言います、商人ギルドマスタージャン=ギルドバスター率いる商人ギルドで会計、副ギルド長などをしております。
基本的な仕事?金銭管理、細かいジャンさんが扱わない小さな取引、ジャンさんの食管理、ジャンさんの世話係、マリンさんの世話係・・
僕はオカンか。
まだ26ですよ僕?大丈夫かなこれ・・・・
ジャンさんと出会ったとは12の頃だったかな?貴族の4男坊として生まれた僕は、父と母を入れて6人家族で暮らしていました。
しかし4人いた兄妹の中で唯一僕だけが、母が違いました。僕の母は、離れで暮らす側室だったのです。
何故僕が生母と離れて暮さねばならなかったか、それは僕が何故か持っていたこの魔法でした。
『重力魔法』
侯爵家であった家から出た魔法の使える息子。侯爵本人からは大切に育てられましたが、暮らしの方の母、正妻からは手酷いいじめを受けました。
それも当然な話なんですがね、正妻の子供に魔法を使える人がいなかったのに、自分の愛する夫と別の女との間に生まれた息子には魔法の才覚がある。
しかも、成熟すれば戦争で多大な活躍を果たす重力魔法、敵兵の足止め、大将を遠くから殺すこともできると言われるこの超レア魔法です。
要するに嫉妬されてたんですよね、母さんは。
離れにいる母さんに復讐ができないので、身近にいた僕に矛先を向けたのでしょう。普通に考えて、後に魔法関連でのエリートコースが開けている僕にそんなことをするとか、頭がおかしいとしか思えないのですが・・
僕はそのことを、別に恨んではいません。
だって、こんないじめがあり、1人であの時あそこにいたから。
僕はあの出会いができたのですから。
◇◇◇◇
「あれ?お前またアザ増えてね」
ムシャムシャ
「・・ほっといてくれよ」
ムシャムシャ
「あんだよ、また『事故』かぁ?」
ムシャムシャ
「・・今日は空から分厚い本が降って来てね、それと食器だったかな?よくあれで隠れてやれてると思えるもんだよ。」
隣でムシャムシャと僕のおやつを食べているこの図太い野郎がジャンだ。
侯爵家の人間である自分と、スラム街の人間がどうして出会えているかというと、父以外は使用人も含めて僕に頓着がないので自由にしやすいのと、僕自身が護衛などいらないとそう望んでいたからだ。
万が一人攫いなどに襲われても余裕で撃退できるぐらいの実力はあったし、事実そうだった。本当に正室からの刺客が来るとは思わなかったよ、あのクソババア。
「下らない家だ、父も僕を魔法の使える道具としか見ていない。下らないな」
父ですら、歓迎してくれるのは僕が手駒として最も使える駒だったからだ。
僕が魔力もないただの子供だったら、側室の母さんと暮らせていただろうに。なんで僕が、魔法を使えるようになってしまったんだろう。
ムシャムシャ
「ほーん、大変だなぁ」
「軽いな!?そしてムシャムシャうるさいな!お前!」
全くコイツは!初めてあった時から全然変わってないな!
一応は侯爵家の出である僕の出自を知ってしまった後でも僕に近づいてくる人間は少ない。
僕の現状を知った人間なら尚更だ、故に僕に友人と言える人間はジャンだけだった。
ジャンは既にウォルテシア内部の人脈めちゃくちゃ広げてたけどな、なんなのこのコミュ力モンスター・・・。
「俺は母さんが死んだらこの国をでるがな」
「ジャンのか?確かに最近病気がちだが・・」
「医者にみせてもどうにもならんってさ」
「うちの医者にも・・」
「無理だな、治せるのは神さまぐらいだってさ、ウルフィアスっていう医者の神さまの神殿ところに毎日祈りには言ってるけど、世知辛いなぁ」
「悲しくないのか?」
「悲しんだら母さんの病気は良くなるのか?俺は俺の夢を追う、広い外の世界が見てぇんだ。」
「そうか」
ジャンの母親に会ったのは一度だけだ、美しい女性であったことだけは覚えている。
それにコイツはスラム街で埋もれていい人間じゃない。ただあの小舟でウォルテシアの港の外に出るって、自殺行為じゃね?え本当に3人乗りぐらいのノリだったよねアレ?
大丈夫?
「俺とお前2人乗りぐらいなら十分だろ」
「いや、僕は無理だ、道具みたいに扱われても、僕は恩がある。ついては行けない。」
「んなもん、ノシつけて返してやろうぜ。航海から生きて帰ってくりゃあ、そんなもん幾らでもできるぞ!」
「返ってくれる保証はないだろ?」
「お前一生、そんなもんに縛られて生きていくつもりかよ?確かに偉くなれるかも知れねぇけどよ。」
「・・・少し時間をくれ」
確かに、貴族社会の閉鎖的な環境に対する愚痴は散々言って来たし、今でもその気持ちは変わらない、だがあんなクズ達に借りを作ったまま、死ぬかも知れない旅に出るのは嫌な気がした。
それから一週間後、スラムの貧民街の一室にウォルテシアの兵士が押しかけて来たという話を聞いた。
そして、ジャンは僕をさらっていった
「いや、いきなり現れてなんだお前!」
「もうめんどくせぇからお前攫っていくわ!」
「そんなノリで僕を連れていくのかよ!?」
「うるせぇ!来い!お前がいないとどうやって船を動かせばいいかも分からん!」
「わかった!せめて荷物を取りに行かせてくれ!」
こうして、侯爵家の4男坊は失踪した。捜索隊はたった3日で打ち切られた。
とは言ってもすぐに航海に行った訳じゃなくて何年かは商人の真似事もしたけどね。その間にジャンは人脈をどんどん広げ、剣の師匠にも出会った。
ちなみに僕は結構大きな商会の会計として実績を積み、1年ちょいで辞めようとした時に会長に土下座して止められそうになったということがあった。
その後、未開の土地に行き、財宝を手に入れ、最初2人だけの小舟だった船は、数年後超大型ガレオン船になってウォルテシアに凱旋した。
「良く行けたな、僕たち」
「だろ?そら、とっととお前の家にノシつけて金返しに行こうぜ」
「そうだなその後は・・・・」
「なんだ、ついて来ないのか?」
「いや、君の部下になって働くよ、船長」
「オッケー・・うっぷ船酔いが・・」
「なんでお前船乗ろうと思ったの?ジャンって馬鹿なの?」
そんなこんなで侯爵家に多額の金を支払い、僕は自由になった。侯爵は止めようとしたけど、そんなもん知るか。
その時、僕の姿を見て侯爵家夫人が卒倒したのは、また別の話。




