外伝 傭兵 マリン
私の名前はマリンと言います
ご存知商人ギルドマスタージャン=ギルドバスターの護衛を担当しております。彼は海賊そのもののような格好をしていますが、私もそれに習い、ちょっと山賊のような格好になってしまっています。魔物の毛皮で作ったモフモフな服は、ジュダルお手製です。
使用武器は宝具級・九環刀という、少し変わった刀を使っています。これは私が9歳の頃父に与えられたものです。
私は実は『アヴァロム』という世界の外側から来た女でした。物心ついた時から母はおらず、父に育てられました。狩の仕方、魔物の殺し方。
ーー人間の殺しかたも。
私は、何故父がこんなことを教えてくれたのかわかりませんでした。ただ漠然と父にやれと言われたことをやるだけ、そんな人形のような存在。
それが、私でした。
やがて、父は魔物に殺され、私は1人になりました。父が魔物と戦い、敗北して死んだ瞬間も見ていました。
1人になって、私は何をすれば良いのかわからなります。
当時12歳の私にあったものは、父から貰った狩の技術と剣のみ。
父が死んだ後も、私は父と同じ行動をし続けました。冒険者登録はその際に行ったもので、換金などに便利だったので登録しました。
その後私は同じことを8年間し続けて実績を積み、一般的な冒険者としては最高ランクのAまでたどり着きました。
しかしパーティーを組んでくれる人はいません。ただ獣を狩、冒険者ギルドに持っていき、そしてまた狩に戻る私を、冒険者の皆様は大変不気味に思ったのでしょう。
1つだけ夢があったとするならば、私は騎士になりたかったのです。父とウォルテシアの外に出て、ケイアポリス王国の国境まで行った時、女性ながらも将軍を勤めている美しい女性を見て私も、騎士になりたいと思っていたことがありました。
しかし私は他国の人間なので、騎士になることは難しく、かと言って当時からしていたウォルテシアでは、女では騎士になれませんでした。
貴族のお抱えでも、その者の身分は『冒険者』という低いもののままなのです。
空虚に剣を振り続けて、当時の冒険者ギルドマスターより、Sランクへの昇格を検討されているらしいという噂を聞き始めたような時に現れたのが
ジャン=ギルドバスター。航海の英雄、そして私の雇い主でした。
◇◇◇◇
「お前喋らないって本当か?」
「やめましょうよジャンさん、本当に死にますよ?」
ウォルテシアは、貿易大国だ、しかし内容としては他国から船が来て、その船が持ってくる珍しいものとウォルテシア国が金品を交換するという一方的なものだった。
ジャンはそんな中、船員を集めて港を出て、様々な『外の国』を巡り、情報を、珍しい品々を、宝を集めて来たということで一躍有名になっていた。
そんな人が、どうして私を訪ねて来ているのだろう?
「ウォルテシア西南部にある平均モンスターのランクがBを超えるダンジョンでランクの高いモンスターを狩り続けてる女冒険者がいるって言ってたの、ジュダルお前じゃん!」
「言いましたよ!ええ言いましたけど!まさか話しかけるとは思わないじゃないですか!」
海賊姿の男と文官の着るような服を着こなす青年が喧嘩を始める。
話しかけられた私、完全に視野外じゃない?
「・・・・・・」
「本当に何も喋らないな、というか食事中か、おばちゃん!俺も定食食うわ〜」
「自由かアンタ!あ、おばちゃん僕も。」
「お前も食うのかよ!そこ食っちゃダメだろ」
「いやですよ!アンタが歩くの遅いからこんな時間までチンタラ山道を歩く羽目になったんですよ!お腹すきましたよ!残っていたご飯も人にやっちゃいましたし!」
「道に倒れていた人を助けたから遅くなったんだ!俺は悪くない!」
「そのせいで納品の期日に間に合ってないんですよ!僕がどんだけ頭を下げなきゃいけないと思ってるんですか!?」
「仕方ない、お前の上司として俺も謝ってやろう!」
「当たり前だよなぁ!!!!!?!!!?」
「あ、すまんマリンのこと忘れてた!お前、面白いな、仲間になれ!」
「初対面で何言っちゃってるんですか?え〜とマリンさん?断ってくれて全然構いませんからね!この人、ちょっと頭がおかしい人なので。」
「誰が頭おかしいだ!減俸するぞ!」
「今までアンタから給料を貰った記憶が無いんですけど!?」
「・・・・(コクコク)」
「いいってよ!やったー!」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?貴方Aランクですよね!もうすぐSランクですよね!いいんですか!」
「・・・・(コクコク)」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇお前仲間になってくれんの?」
「なんでジャンが驚いてるんだよ!?」
「だってよおま、Aランク冒険者だぜ!?」
その後、私はジャンに従い、世界中を巡りました。
変な魔物に出会い
変な人に会い
そして、人魔大戦の起きたあの場所で、ジャンと似た雰囲気を持つ男にも出会いました。
世界は、私が思っていたよりずっと広かった。
外の世界で暮らしていた時よりも
父が死に、冒険者として生きていた時よりも
ずっと広い世界と出会い、今生きています。
ジャンについていけば、もっと広い世界すら...
いいえ、わかりません。でも、私は後悔していない。
あの時、ジャン=ギルドバスターという男の手を取ったことを。




