アヴァロムの戦い④
ジャン回です、お騒がせ商人ギルドマスターの戦争。
「なんだアリャあ?」
「・・グリーンが言ってませんでしたっけ?アレ、ケイアポリス王国の兵器ですよ。」
「あんなもんよく作るよな、まだ戦争終わってから3年程度しか経っていないんだろ?」
「ケイアポリス王国の復興も早いですし、王1人が絶大な権力を持っていますからねぇ。このぐらいはしてえないと」
そう言って、商売の中心地であるウォルテシアの軍勢に入って冒険者、及び戦士ギルドの面々を中心とした義勇軍を率いているのはジャンだ。
商人ギルドのギルドマスターである彼が何故義勇軍なんてものを率いているかというと少し長い話になる。
彼は元々高利貸しなどの商売もしている、というより高利貸しがメインになることが多くらいだ。
その為、出資したところが破綻されると困るので、彼には出資したところを見守るという悪癖があった。別に破綻されないようにわざわざ自分自身が見守る必要も無いばかりか、その人の商売が上手くいくように誘導したりすることもある。
実際そんなジャンのお人好しなところを突かれてウォルテシア国王はジャンをいいように使っている節もあった。腹心のジュダルからは「お人好しが過ぎる」と散々言われているが、癖なんだから仕方がない。
ここまで言って、何故彼がウォルテシア国にいるかを察せているかと思うが、ウォルテシアは商人ギルドに多大なる借金を負っている。なのでここでウォルテシア国王が死なれると国が乱れ、借金の返済が困難となる。
それは他の国にも言えることだが、商人ギルドは人魔大戦でも参戦しているのには、そういった背景もあるのだ。
だが、当のジャン本人は
「まぁ、困ってる人がいたら放っておけねぇよな」
「本当、僕がいなかったら貴方破産してますからね?いや既に自前の、僕が管理してる貴方個人のお金ってどうなりました?」
「知らん!先月の分は全部教会に寄付した!」
「・・来月の小遣いを減らします」
「何故!?」
と、こんな感じである。
ジャンの、商人ギルドのマスターとしての資産はアヴァロム全世界通して最高である。それを管理しているのがジュダルであるが、もし彼がいなかったら、どうなっていたことやら。
ジャン、ジュダル、マリンの3名は戦線の真っ只中である。最前線でベリアスが旗槍を振っているのを眺めながら、昼食を食べていた。
「てかあの脳筋帝国の皇帝、最前線で戦ってやがるんだけど」
「実力至上主義ですからねぇ帝国は、魔族の侵攻の際も各地で奮戦してたらしいですよ。」
「ウォルテシアの補助魔法か、遠距離射撃の魔法もすげぇな」
「あの魔導技術はグリーンが現れても世界一なのは間違いないですからね。まぁ」
帝国とウォルテシアのコンビプレーは思いのほか上手くいっていた。
ウォルテシア国王トトメス
帝国のベリアス
片や君臨するのみを是とした王、トトメスは魔法すら使えない普通の人間である。対するは最前線で体を張る王、自らの意思で帝国の皇帝となることを選んだ王。
2人の生い立ちはほとんど真逆だ、しかしそんな2人のコンビネーションは、軍となって形に現れている。ピッタリだ
「フフフ、行ってこい!」
「くっ!!言いように使われてるようにしか見えない」
まぁ、ウマは合わないらしいが。
「帝国とウォルテシア率いる左陣はこんな感じか、右側もなんか勝ってるし、このままイケルとかない?」
「籠城して敵を迎え売ってるだけで、好転してる訳ではありませんよ、ジャンさん。」
「おっ、まぁそれもそうなんだが」
冥界軍の死者の集まりには、人間も含まれている。
そんなことは知っていた。
だが
「悪いジュダル、ちょっと行ってくるわ」
「え?ちょっとジャンさん?マリンさん頼みます!自分は義勇軍の指揮をしますので!」
冥界軍いるのは故人
そんなことは知っていた。
なんでそっちの陣営にいる?
師匠。
「押し切れませんね」
「全くだ。」
冥界軍地上部隊総大将ランス、彼はゲートの近くで腰を下ろし部下と談笑と言う名の作戦会議をしていた。
「あの左軍より放たれた灼熱の息吹、古の龍の息吹に遥かに勝るアレを人工的に作るとは。敵ながらあっぱれ」
「褒めている場合ではないがその通りだ、新しい分野の発展、飽くなき探究心、留まることを知らない欲という感情。森と共に生きようとするエルフ、戦いに明け暮れる我ら亜人種。それと一線を画す人間という弱小種族の最大の特徴はそこにある。」
「それでは一時撤退しますか?」
「抜かせ、これだけの戦力差と食料を必要としない軍隊を手に入れたのだ。ここで戦わずしてどうする。むしろあの灼熱の息吹が連続して撃てないとわかった今こそ進まねばならんだろうが。」
「左陣の大筒?のようなものから放たれたアレが、どうして連続して撃てないと?ランス様」
「わからんか、もしアレが連続して撃てるなら我々がゲートから出てくる時点で撃ち始めていただろう、射程の問題ならゲートが開いた時点でアレを移動させればいいだけの話。といつことはアレは連続して撃てないもしくは一撃のみの使い捨ての可能性が高い。攻めときは今だ。」
「敵の壮大なブラフという線はあり得ませぬか?」
「そんな余裕が敵にあるように見えるか?」
「・・ありません、出過ぎた真似をいたしました。」
そこまで言うと、長年ずっと自分に仕えてきた老いた馬頭の獣人は深く礼をした。それを確認すると、獅子の英雄はふと、目を瞑る。
そういう人間を彼は知っていた、身体能力の遥かに劣る我々に対して互角に渡り合う戦士、非力を理由に戦わないという選択をし、魔法を極めた魔道士。
数えればキリがない、人の眼に野望の炎がある限り、この愚かな蛮行はいつまでも続くことだろう。
「本隊が出る、あの明らかに一線を画した強さを誇る正面をぶち破る。」
「ハッ!」
ランスが立つと共に、部下たちも隊列を瞬時に組み終わる。
これこそが当時の、亜人種最強部隊
『獣神隊』
彼らはランスによって選ばれた選りすぐりの兵達、魔物としてのランクがAを超えた亜人種最高の技術を誇る精鋭部隊である。
現世で彼らの人数は300人という超少数精鋭で動いていたが、冥界でその人数は大幅に増した。獣神隊で戦死した者や、獣神隊に入ることができる力量を持つ者達、死んだ魔物で知性の高い者などを揃えて質は変わらず、その力は大幅に強化された。
その数、1万
Aランクという騎士団出動レベルの惨事が、隊列を組み、訓練を受け、今この場に立とうとしていた。
先頭に立つは獣王。
ランスロットの槍が高々と掲げられ、その槍が一直線に向かう。その穂先は真っ直ぐに城へと向けられていた。
全軍、出撃!




