アヴァロムの戦い③
「突撃ぃぃぃぃ!!」
王国騎士団将軍、アリーの野太い声と共に騎士団が冥界軍に向けて突撃して行く。
敵軍は1人1人がかつて現世で名を馳せた勇士、歴史に名前を刻んだ英雄。無名ながらも影で歴史を支えた男達。
魔物、亜人とて同じことである。魔物であれば最低でもBランク、それも知能の高いBランクである。
普通ならSランクの猛獣がいる時点で国軍が出動しなければならない非常事態だ。そんなレベルの猛獣が数万体
それこそ裸足で逃げ出すレベルだ。
しかしそんな戦いが、防衛戦となれば話は変わってくる。
人類史の中で、人類が最も強い環境はどこだろうか?
平地での戦い?魔獣には叶うまい、人間の最大の戦法である集団戦法は、1つの圧倒的強さを持つ怪物の前には無力だ
なら、最強はどこだろうか
『防衛戦』である
元の世界になぞらえても、堀と柵に始まり、城、要塞と面々と続く人類の『防衛史』とも言えるそれは
守りの歴史である
「誰かを守りたい」
人間の単純な思いの具現化
ここに断言しよう
世界のどこを探しても、ケイアポリス王国ほどに防衛戦に長けた国はないと!!!!!
「王!突撃命令を!」
「駄目だと言っただろう!」
「出撃したいぃぃぃぃ!!」
例え、騎士団長がこんな奴でも・・
ライト王とルーカン騎士団長の言い争いは止まらない。
「防衛戦こそが我が華!ウォルテシアほどの魔法技術はない!オワリの武士ほどの強さはない!帝国ほどの実戦経験もない!それでも結構、とにかく、この戦線を維持させれば良いのだ」
「ぐぅぅぅぬぬぬしかし!アリー将軍やヘリン将軍が戦線を維持させる名手とは言え、このままでは」
「だからこそだ、私を信じろ、騎士団長よ。」
「・・承知しました」
ええいこの脳筋ゴリラめ!自重せよ!
ライトはそう言いたいギリギリのところで我慢していた
戦線は最悪だ!
完全に押されている!被害も莫大だ、だが足止めはできている。
被害が甚大?3年前から立ち直ったばっかりだったのに!クソ!
ここで騎士が減るのは治安問題に関わるぞ!
「報告です!アリー将軍、ヘリン将軍、予定のポイントまで敵を誘い込みました!」
「やっとか!準備はできているだろうな!って思ったらウルフィアスいないじゃねぇか!仕方ないなアイツ!どこ行ってるんだ」
ウルフィアスの放蕩癖はいつものことで、よくいなくなる、だがライトの危機や必要な時には必ずいる。ライトという男にとって、ウルフィアスとはそういう間の良い男なのだ。
普通なら、ここで宮廷筆頭魔導師がいなくなるなど言語道断と怒ったりするものだが、当のライトは
「そうか、ならここは私1人で乗り切らねばな」
とそう割り切る始末なので是非もない。
「魔導大砲・真の準備完了しました!」
「よし!いくぞ!」
ライトは、この戦争始まって初の良いニュースに、顔を綻ばせるのであった。
「魔導大砲の準備整いました!」
「もう少し引き付けろ!」
兵士の報告にライト王は玉座に座りながらもそう答える。
魔導大砲・真
ゴーレム大砲をご存知だろうか、そこから3年、更にそれは発展した。
グリーンの科学技術が入り込み、更にその技術は上昇したが、1つだけ問題があった。
前の砲台はゴーレムという砲身を自由に動かせる人形を模すことによりどの角度でも対応できるような設定になっていた。
しかし今回は大砲だ、文字通り砲身とそれに連なる設計しかしていない。
角度を微調整することは可能だが、それには多大な労力が必要となる。 今回はグリーンとの共同開発によって威力も増し、稼働効率も遥かに上がった。
だがその代わりにその自由性を犠牲にしている。
そこでヘリンとアリーに人肌脱いでもらい、わざと負け戦を仕込んだと言う訳だ。
まぁふつうにぶつかっていても負けるのはほぼ確定であるので、負け戦であるのに変わりはないのだが。
ルーカンとかはそれが自然にできないから困る
話がそれた、今は、ただ遥か戦場に見える男たちを少しでも援護せねばなるまいな
「魔導大砲...打て!!!!!!」
キュイン!という声と共に、1発の砲撃が冥界軍とケイアポリスの戦線の間につき刺さる。
それはまるで1つの火柱。光の鉄槌が、油断していた冥界軍の多くの命を、冥界へと返し、光へと消していく。
それに音はいらなかった。
その場で戦っていた者の全てがそれを音もなく見るのみであった。
それは大砲、白兵戦では最弱とされるケイアポリス王国の『人間としての知恵』この大陸の覇者は我が国であると。
ライト王が見せた意地であった。
後世に無粋ではあるが、その絵に名前をつけた画家がいる。
その絵の題名はーー『反撃』
ライト王は知らない、グリーンの鎧に魔導技術が仕込まれているが、あれはライト王の技術を丸々盗んだ物だということを。
あの核の如き破壊力を持つグリーン砲ですら、元を正せばケイアポリス王国の魔導技術が元であることを。
王
その役職のみを見ればライト王は確かに超一流ではない、人に頼り、人と生きる。
それは逆に言えば、彼にしかできない芸当だったのかも知れない。
「べっくしょおい!」
「どうしました王?」
「騒ぐなルーカン、いよいよ攻勢に入る。お前にも暴れてもらうぞ。準備はいいな!」
「承知しました!」
ぶるんぶるんとその肩を回す脳筋騎士団長を尻目にライトは彼方を見やる。そこにあるのは巨大なゲート、冥界軍は更に増え続ける。王国軍が担当している右陣を蹴散らしたからといって、冥界軍が全滅したわけではないのだ。
勝って、更に兜をこの総大将は締め直すのだった。




