再開&決着
「オオオオオオオオオ!!!」
触手、武器、罠、魔法
ゲシュタルトの持つ多彩な戦術が前魔王ー名前をシンとするが...に向けられ撃ち出されている。
それを受け止め、いなし、かわしているのはたった一本の剣。その剣のみで、時には拳で、または知恵で敵に打ち勝ち魔王となったシンの実力はまさしく上位神、アイテールやウルフィアスに勝るものであった。
「・・フン、下位神とはこの程度のものなのか。いずれにせよ今の我の実力は神上位に相当している。冥界とは自分の最盛期に実力を戻してくれるようだな、実に有難い」
そう、神への復讐を願った彼は最盛期であれば十二分に神を上回るか同等の実力を身につけていた。
しかし、何故あれほど神を憎んでいた彼がそれを実行に移さなかったのか?
ーー人を憎んで生きていくなんて、やっぱり俺らしくないだろ?
どこからか、そんな声が聞こえた気がした。
その復讐はゲシュタルトの本意のものであった。
たとえその攻撃が一切通用しないとしても。
元魔王は孤独だった、配下には餌しかおらず、彼の周りに敵はいない。
親もおらず、兄弟もいない。空虚な日々。
目的もない
喜びもない
深い悲しみもない。
故に神になれと言われても困るの一言に尽きるのみだった。戯れに自分を倒そうと企み来る勇者と呼ばれる、弱小種族一行を戯れに助けたのは、単なる暇つぶしの為だったのだろう。
だからこそ、敵はおらず、友もいない。
そんな生活に現れたのが奴だった。
そんな奴は私が唯一敗北した男だったのだ。それからの数十年間、あまりに甘美な敗北、なんの偶然などという余計な混ざり物のない、完全な敗北を喫した後。私は奴にリベンジすることのみを糧に生きてきた。
しかし、あの神殿で再度お前を見た時には、お前は驚くほど弱くなっていた。
フレイヤによる魔力の減衰
神器ツヴァイハンダーによる精神の磨耗
最悪と言ってもいいコンディションの中で、お前はどこの者とも知らぬ男に敗北した。
そして私は知ったのだ、既に今世で決着をつけることはできないのだと
だからなんだ、ならば私は冥界で決着をつけるのみと。そう信じていた、あの熱い戦いをまたできるものだと
「「結果がこれか?」」
開始から僅か5分程度である、既にゲシュタルトは何度も撫で斬りにされ、血のりが辺り一面に広がっている。ゲシュタルトにある無数の目のいくつかは生気を失い、空虚と化していた。
更に強くなった
更に喰らった
その結果がこれだと?
「その通りだ、まぁ我はあの甘怠れシンヤと違ってあくまで合理的にこの能力この力を使っているに過ぎんが。だからこその強さもあるだろう。」
「・・・・・」
ゲシュタルトは何も言わない、いや何も言えないのかも知れない。
「しかし、我は死者。これ以上の成長は見込めぬ、しかし貴様は生者なのだろう?ならば何度でも我に会いに来るがいい。戦りに来るがいい。我はここで待つ、まぁそれもここで我々が負ければ叶わぬことだがな」
そこまで言うと、血糊を剣を振って落とした後に歩き始める。少しゲンムの方を向き、軽く目配せしたような気がした。
(つ、ついて来いってことかな?)
クロムウェルと共に少し後ろに立って歩き出す。その歩みは止まらず、上へと進むんで行くのであった。
「ほう!面白い!未来が動いたぞ!」
「ニコラス様、もう少し働いて下さい」
「おっとそうじゃな、『無限魔法氷』」
「それで、未来が動いていると?」
「おおそうじゃった。フレイヤ達側の勝ち目が見えて来たぞ」
「それはそれは、フレイヤ様が勝つ可能性があると?」
「その可能性は5%以下じゃ」
「なんだ・・・・」
「問題はその後なのじゃ、見ておけよ〜」
どこかにある冥界の戦場で、1人の老人の笑い声が聞こえる。
その笑い声は、反撃の一矢となるべきものか。




