再開 side魔王ゲンム
2度と会うことはない
そう思っていた、そうであると知っていた。
最後の別れまでされたのだ、そして去ったと神から聞いた。ならば思い残すことはないと
託された魔族領の発展の為に、3年間心血を注いできた。
だが冥界の下層に落ち、目の前にいたのは
紛れもなく父だった。
薄暗い黒肌に、銀色の髪が良く映えている。下は昔着けていた鎧のようなものを身につけており、上半身は裸のままだ。武器は剣、かつて父が持ち、折ってしまった無銘の剣『覇魔』。
それは、かつて幼少に見た父の姿そのままだった。
「何故...何故ここにいるのですか?」
恐る恐る、目の前にいる父?に話しかけてみる。終始無言を貫いて来たその男は、ゆっくりと話しかける
「ふむ、あのエルフに力を貸す交換条件として愚息との対面を叶えて貰ったが...弱いな。下位神程度の実力しかないとは。」
「待て、父じゃないのか?」
「いや?我は正真正銘お前の父だとも、人格が異なるだけでな。父が転生者であったことは聞いているな?」
「半信半疑だったがな、ということはお前が」
「その通り、私は神器『ツゥヴァイハンダー』の能力である魂強化の力により冥界で1つの自己として復活した、お前の父の苗床よ。」
「つまり、貴方は前魔王様ではなく、前魔王様の体に最初にいたゴブリンということですかね?」
「正解、とは少し違うな。神器ツゥヴァイハンダーの悪の人格も混じっている、故に無垢なゴブリンとも少し違う。まぁ魔物である以上誰しも暴力的衝動は持っているだろう?カワサキはその辺の理性がしっかりしていた。我は違うがな」
ゲンムと前魔王との会話の中にクロムウェルも入り、会話は更に加熱していく。
フードの男は、その様子を見つめるのみで何もしない。
「それで?父上でもない貴方が何が用?」
「肉体は正真正銘貴様の父だがな、言っただろう、お前に会いたかったと。」
「生憎お前を父とは認めない、既に別れは...済ませた」
ーーー後は、任せた!
そう言って、嫌いなアイツの姿で颯爽と出かける父が最後だった。
「お前は父の影法師だ、本当の父は、既に僕に全てを託して去った。」
「ふむ、カワサキめ。弱いが、いい息子を育てた。」
揺らぐことのない覚悟をしたその目を真っ直ぐにぶつける。父に似ただれかは、その眼を見て、少し、いやかなり面白い道化を見るような目でニヤけた。
「お前に渡した宝具があったろう、見せろ」
「・・・・」
ゲンムが、帯剣していた自らの灰大熊王を抜き放つ。その輝きにほうという関心したような声が響く。
「ほぉ・・その宝具を神器にしたか、通常使用者によって武器が変化するのがフレイヤの作った武具の数々だ。弱いという言葉はとり消そう愚息よ、貴様は我の後継者たる価値がある」
「お前に認められなくても」
充分に、もう認められてる!!!!
「「話は終わったかな?親子の感動の再会は終わりかね」」
初めてフード男の声を聞いた。
気持ちの悪い声だった、何度も重複したような声が、様々な高低効かせた声が。まるで何百人が全く同じタイミングで同じ言葉を発したような、そんな得体の知れない声だった。
フード男はゆっくりと全身を覆うフードを取る。
化け物だった、何千種類という種族の特徴が全身に現れては消えていく。鶏のような鶏冠が少し見えては消えていく。目はカエルのような目からドラゴンの美しい瞳に代わり、今度は馬のような顔に変形する。
形は保たれていない、だからこそそこに明確な姿はない。
常に変わっていく。異形の姿へと。
「常に姿の代わりし化け物...両陛下!お気をつけ下さい、アレは神域に達するもの!人々から神の1人に数えられし怪物!」
化け物はどんな姿にも姿そのものを変える、フォルテの変装術?そんなものが陳腐なものに見える名前の通りの変形。魔法『悪喰魔法』により生物を食いその身に力を宿すこの能力は、喰った生物の身体能力はおろか、その生物の特徴がそのまま形に出てしまう呪いの能力。
彼は前々代魔王、かつて強大な力で小さいながらも魔族をまとめた魔族。神話では勇者を導く鳥であったとされる。
『千変万化』サラザール・ゲシュタルト
8柱の神である。
彼の目的はアヌビスを止めることではない、ただ、神になる前の自分を殺して魔王となった者への復讐。
いや復讐という言葉も違うだろう、彼はもう一度戦いたいと願ったのだ。
その理由に名前はつけられない。ただひたすらに再戦を望んだのだ。
「「さぁ、邪魔も入らん、存分に遣り合おうぞ!!!!!」」
「ふん、過去の妄執で我に喧嘩を売るか。愚か」
魔王同士の戦いに、冥界自体が揺れる。
現魔王であるゲンムに、その戦いはどのように映るのだろうか。




