戦力分断
「す、すごいね...全く」
「はい、そもそもが昔高名な方々ですので。当然と言えば当然ではありますけれどもね。ですが、これはまた想像以上ですね」
謎の仮面X
もうゲンムで良くない?駄目なの?まぁゲンムはクロムウェルと後ろで話している声が聞こえる。
まぁ当然といえばそうなのだが、1人1人がオレ特性爆弾に匹敵する一撃を持っていた。
いや〜怖えな、ただ単に手を前に出してるとか、本人達にとっては喧嘩みてぇなもんだろう?
ここにいる神々で戦闘を司る神は、フレイヤしかいない。しかしそれでもこの強さなのだ。
いやもうオレ達いらなくねぇ?
そう思ってしまうほどに。
(しかし、それを差し引いても部隊少なすぎないか?まだまだ冥界の魔力は余裕もあるし、一度倒されればすぐには復活できないとはいえ、死者の数が少なすぎる?質でも負けてるのに量で負ければ話にならないだろう。アヌビスって奴は何を考えているんだ?」
そう、人数が少ないのだ。勿論数は果てなく、アヌビスのいるであろう冥界の深淵部まではまだまだ遠い。しかしながらこの冥界への道幅の狭さを鑑みると、人数が多いとは言えないのではないか?
冥界の道幅は現在大型車3台ほどの大きさの通路だ、これはおかしい。現在オレ達が進んでいるのは民間人の魂が暮らす場所だったと聞く、こんなに狭い筈はねぇ。
そして何より、相手にはあのケテル=マルクトがいる。軍師ならば、敵が直接攻め込んで来た場合どうするだろうか?まず敵の戦力の分散を図るだろう。そこで各個撃破を図る。
少なくともオレなら、こんな戦力を固めたままにすることはあり得ない。
つまり、ここは意図的にアヌビスによって狭い道になったという事だ。
ということは...
『誘われてるぞ!気をつけろ!』
一手、遅かった。
次の瞬間、冥界の地面や壁が動き始め、冥界に穴が空いた。そこに、オレ率いるラトライダ子爵勢、レッド達旅をした奴らとイエロー、が落ちていく。
一瞬だったが、別の穴に、その他の神々以外の全員が落ちて行くのが見える。
参った、この底まで誘導することが目的か!
まずったな。
そして、穴に落ちる直前オレは見た。冥界の奥底から、犬の顔をした覇王が如き生物が出てきたのを。
くそったれ!仕事をさせろ!
そう思いながらもグリーン達は冥界の下層に落ちて行く。
その慣性の法則に逆らえるものはいなかった・・・
レッド以外は。
『おいおい!何してやがんだ?』
「勿論、フレイヤさん達を助けないと!」
ハァ?
なんだって?お前はは真性のバカか?
この面々で空を飛べる奴は一握りしかいない、冥界軍の中で神々の奮戦を助けるために孤立するだと?
『頭おかしいのか!それならオレが向かうから、少し待っていやがれ!』
「グリーンが上に上がる方法を見つけても、間に合わない可能性だってある...フレイヤさん達にかかっているんだ!この戦いは。なら僕たちが行かないと!」
そう言いながらレッド1人だけが自前の翼で飛んでいく。「では、私も!」そう言いながらイヴァンと、それに捕まったエルザも飛んで行ってしまった。
全く、相変わらず元主人の向こう見ずなところは変わらねぇな!
『しゃーねぇ!すぐ追いつくから、冥界の隅で体育座りでもして待ってろ!』
それがレッドに聞こえたかどうかはわからない、それでも目の前で翼を広げて飛ぶ男は、小さくグリーンにサムズアップしていた。
「一手、速かったね僕の方が」
「なんの話だ?」
「こっちの話さ、アヌビス」
そう冥界の奥底でアヌビスに話しかけられたケテルマルクト、通称マルクはそう答える。
グリーンの頭脳は調べた。
先の前哨戦では敢えて敵の前情報を調べることはしなかった。というかできなかったのだが、フレイヤの徹底的な気配遮断とイエロー部隊による働きのせいである。
しかし今は情報が集まっている、この冥界に入ってからの動きをつぶさに観察することで、その人物の特徴などは大まかにわかった。
この冥界の部隊が冥界に入ってから僅か1時間、マルクはその僅かな間で全てのメンバーの特徴を見抜いたのだった。フレイヤもまさか、戦闘すら見せてないのに見抜かれると思ってはいなかったのだろう。
「これで目の前にはフレイヤ、アイテール、ウルフィアス、ヴィヴィのみ。フレイヤと君が1対1、アイテールは僕、ヴィヴィはスアレスに抑えて貰うとして。ウルフィアスは...」
「それは勿論、わたシでしょう?」
そう言うのはフォルテ、ウルフィアスに敗北した神である。悪魔族は普通不死である、しかしながら魂を操るのもまた悪魔。
魂は父に渡ったが、契約不履行のため魂は戻る。故にフォルテは自由の身、晴れて冥界に合流したのだ。
「ウルフィアスさンは私がリベンジしまス。異論ありませんネ?」
「負けたそうじゃないか?」
「勝つではなく時間稼ぎならバ色々と手段はありますヨ。」
確かに、フォルテという男は単純戦闘ではなく「嫌がらせ」においては相手に対して最も効果的な戦術を取ることができる男だった。
「いいだろう、任せた。」
「承知しましタ。」
「では、残りの幹部は引き続き冥界の者の説得に当たれ!」
アヌビスの号令と共に一斉に冥界の面々が動き出す。
幹部達の仕事、それは冥界の味方として死したこの世界の勇者達を味方につける説得、交渉である。
はっきり言ってアヌビスに賛同した冥界の戦士は3割にも満たない、これは決してアヌビスの人望が無いわけではない。いやむしろ人間を滅ぼそうなどと企む一流の生物、戦士が冥界の戦士の3割もいることが不自然である。
故にアヌビスは神々にも負けずとも劣らない面々の交渉に入っていた。
(おかしい、日和見とは言え戦いなら必ず参加すると言ってもいい歴戦の勇士達の殆どが不参加を表明した。絶対に何かある!)
アヌビスは、この流れに不可視の何かがあることを察していた。
しかし、今自分にできることは、フレイヤを打倒することのみである。
「行くぞ!」
一直線に、フレイヤの元へアヌビスは動き出すのだった。




